騎士団長現る。
「お会い出来て光栄です、異世界の神子様」
「っ…あっの、…は、い。……ぁりがとうございます」
じゃあ騎士団長を呼んでくるね。という言葉に即座に自分で行きます。と返した結果。
今、俺の前に一人の男性が跪いていらっしっしゃいます。
部屋に入ってすぐに椅子に座らされて気付いたらこうなってました。そんなことあるかって?あるんだよ。
右側にエイトがいて、左側にデュラ。少し前にアルフがいる。
と理解した瞬間これだったんだから。異世界の不思議だね!!返事を返せただけ俺すごいと思うよ!
「あの…その…取りあえず立っていただけると…その…大変嬉しく思うわけでして……」
「ギルバート。異世界の神子様の言うとおりに。……これで察したと思うがこの方は堅苦しいのが苦手でな。………僕の時と同じ態度で頼む」
取りあえず跪いてる体勢をどうにかしたいとよく分からないが丁寧であろう言葉で伝える。そんな俺に最初から分かってたのかアルフが繋いでくれたのでただただ頷いた。うん、君はよく分かってるね、アルフ君!
「……ではお言葉に甘えて。よく来たな、異世界の神子様」
立ち上がった男の人は豪快に笑った。
男の人は騎士というよりは冒険者みたいな恰好な気がする。頬に傷があって、背が高くて、ガタイが良くて、大剣を背中に背負っている。
マントも下の方がボロボロで適当に縛ってんのか玉みたいになっていた。
なんというか男!って感じ。
ゲームでこう、渋いおっさんいるじゃん。たくさんの戦いを経験してて、主人公を導いてくれるみたいな。
俺すげぇそういうタイプ好きでずっとパーティーに入れて最後まで使ってたなぁ。
……かっこいいなぁ。
「あ、クライブの父さんなんですよね?」
現実に戻って気付く。髪の色一緒だけどクライブはもっと細い。
それこそニヤリと笑って俺を見る姿はまったく重ならない。
「そうだぜ。クライブは俺の息子だ。こっちの可愛い神子さんにはつかなかったみてぇだな。もったいねぇ。今からでも俺の息子の嫁にならねぇか?」
「…はぁぃぃぃい!?」
は!?え!?何!?
ワタワタと左右の二人を見るがデュラも俺と同じく混乱してる。あ、エイト?俺を見て頷いてくれたよ。
俺は何も納得してねぇよ。
逆に冷静になって半眼でおっさんを見る。
うん、もうおっさんで充分だよね!かっこいいと思った数分前の俺消えろ。
「ギルバート…」
アルフの冷たい声にガハハと笑うおっさん。
シュール。
誰が収拾してくれんのコレ、と思ったら動いたのはおっさんだった。
「冗談で言ったつもりはねぇよ。なんなら俺はどうよ?」
お前を守り抜くぜ。
「……っ!!」
耳元で囁かれる。
「クー!!」
エイトに抱えられてそのまま飛んで距離をとった後背中に庇われるが立っていられずズルズルと落ちる……前にデュラに抱き上げられてた。
「……な、ななっ」
が、俺は抱き上げられたことに何か気付かない。気付く余裕なんてない!
何だあの色気はぁぁぁぁ!?
うわぁぁぁ!!
み、耳、俺、の耳、もと、あんぎゃぁぁぁ!!
囁かれた方の耳がむず痒くて擦る。絶対顔まで真っ赤だようわぁぁぁ!!
「…ギルバート?」
「まだまだだなぁ、お前ら。そんなんじゃ異世界の神子様を守れねぇぞ」
その瞬間アルフは剣を抜いておっさんに振り下ろす。おっさんはガントレットで防いで、俺はその音でようやく今の状況が見えてというか帰ってきて、慌てた。
よく見たらエイトは腕と脚がドラゴン化してる。んでもって牙生えてますよぉぉぉ!!床抉れてるよぉぉぉ!俺の座ってた椅子が粉砕されてるよぉぉぉ!!
デュラはデュラで錫杖が緑に光って何か振動してます待ってぇぇぇぇぇ!それ絶対ここで発動したらダメなやつですよねぇぇぇ!?
俺の心の叫びをよそにデュラが大丈夫ですか?って丁寧に聞いてくんの。顔笑ってねぇのに。
頷くしかなくね?
ゆっくりと下ろされて…あ、ここで初めてあの姫抱っこをされてることに気付いてまた羞恥心半端なかったんだけども根性で立った。ぷるぷるしてた。
んでデュラとエイトが頷いて俺を見るのよ、うん、俺は何も理解してない説明して。
そんな置いてけぼりの俺の前にエイトが立ち、デュラが錫杖を掲げる。
「って待って!待って!待ってぇぇぇ!おっさんはからかっただけだよ、な、な!そうだよな!!」
ちなみにエイト達の誰も俺を見ない。
唯一見てくれたおっさんはニッコリ。
「まぁ油断すんなってのはあるが、言ったことは本気だぜ。俺の勘が言ってんだよ。お前はイイってな」
「…っ!?」
ガキンッ、ドカンッと音がする。アルフが突っ込んでデュラが魔法飛ばしてた。
ちょ、えぇぇぇ!?
何か土の壁が空中に出来てて二人の攻撃を防いでる。しかもその壁最低限だからこそおっさんの姿が見えるわけだけどもすげぇぇ!!
「別にいいだろ。俺独り身なんだからよぉ」
「え!?クライブは!?」
「お、年齢は気にならないか。嬉しいね」
「あ、それも気に…いやいやいや!それどころじゃねぇだろ!」
「36歳。ギルって呼んでくれると嬉しいね。あ、クライブは養子な」
「クライブはついでか!」
「この状況でその対応。ますますいいな。アルフ、あの件は了承してやるよ」
「すいません、誰か詳しく説明してくれる方はいませんかぁぁぁ!?」
もう、何なんだお前ら!
肝心の神子様の心が置いてけぼりですよこの野郎ぉぉぉ!!
もうアッタマきた!
どうしてそうしたのか未だに分からない。
ただ、俺がもっとも得意なものを叩き込んでやろうと思った。後悔は、しない。
「ーーーーー♪」
「「!?!?」」
拡がる光の陣。
俺が今出来る最大のもの。
舞い。
うん、つまり意識失うよね!
ーーーーー
「クソジジイ一発殴らせろ!」
「クー様!よかった、目が覚めたんですね!」
一番最初に飛び込んできたのはデュラの潤んだ瞳。
あ、すいません。泣かないでください。
頬を撫でて………起き上がる。
飛び上がる気力はなかった。
「ギルだっつの。……第一声で元気なのは分かったけどよ、おっさんは繊細なんだから気を使えよ」
「クーにそこまでさせたのはギルバートだろう」
呆れた声の方を見ればアルフと問題のおっさん。
エイトはベッドのそばに立ってた。
「……異世界の神子様にゃ悪いが士気を下げさせる訳にはいかねぇだろうが」
聞きましたら上の人から会わせるのは勿論異世界の神子に会えることは光栄だからだけど、それだけ理想像との落差に耐えられるってことなんだそうだ。
あぁ…そうね、これが異世界の神子様かよってやる気なくされたら困るわな。
「……んで?」
「あ?」
「俺はお眼鏡にかなったのかよ?」
おそらくレオンが用意したであろうドラゴンのぬいぐるみをいじりながら返す。
あ、もしかしてこれ抱いて寝てたの俺。ちょっと後で話し合おうかレオン君。
そんな俺に驚いたおっさんだが俺はその表情を見てなかった。
少し困ったように笑って、頭をガシガシかいて頷く。
「想像以上だよ」
「よし、じゃあ二発殴らせろ」
えぇ!?何ていうおっさんは可愛くない。
俺はアルフを見る。アルフは頷いておっさんを抑えた。
えぇじゃないか。どうせ痣にもならねぇんだからよぉぉぉ!
「癖になりそうだ」
おっさんが何か言った気がした。




