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第5部 最終話【クリスマスは婆ちゃんの胸の中で】   

 クラウディアの死から5日後、富士山近くの青木ヶ原樹海に建設された広大な会場で、クラウディアのお別れ会がおこなわれた。


 


 

 キョウイチいわく『やる意味がよくわからない』という理由で通夜や葬式といった儀式は廃止され、シンプルなお別れ会のみがおこなわれるようになっていた。


 


 

 しかし、キョウイチ天皇を育てた人物であり、新生日本革命の影の立役者でもあるクラウディア。そのお別れ会をシンプルに済ますわけにはいかないということで、富士樹海の会場で国をあげた盛大なお別れ会がおこなわれることになった。


 


 

 時刻は午後の5時。空は淡い黄昏に染まり出し、日本中から駆けつけた20万人ほどの人々が夕影にやさしく照らされた富士山に恍惚としながら、ゲストとして招かれた国民的歌手・綺羅飄介の美声に身をゆだねていた。


 


 

 キョウイチはユミリとふたりで、綺羅飄介のスペシャル野外ライヴを後方から見守っていた。そのとき、ユミリが口を開く。


 


 

 「ねえ、キョウイチくん」


 


 

 「なんだい、皇后様」


 


 

 「クラウディアさんのお墓はどのあたりに建てるの?」


 


 

 「お墓、ねぇ……」キョウイチはややくぐもったでつぶやいた。「……お墓は……建てない」


 


 

 「え!?」びっくりしてキョウイチを振り返るユミリ。「どういうこと?」


 


 

 「クラウディアばあちゃんのお墓を建てないどころか、日本中のお墓を全部取り壊そうと思っている」


 


 

 「そ、それはどうしてなの?」


 


 

 「ユミリちゃん、日本列島というものを空から見下ろしてみて」キョウイチはいった。「すると気づかない?もしも日本列島のすべての土地がお墓に占居されたら、人間の住む場所がなくなっちゃうってことに」


 


 

 「あ……」ユミリは驚愕して言葉を失った。


 


 

 「人間がひとり死ぬごとにお墓なんてものをつくり続けていたら、いずれ遠い将来、国の土地はすべてお墓だらけになっちゃって人間が住めなくなっちゃうのよ。だからお墓って、子孫繁栄にとって矛盾の存在なんだよね。だからボキはこれから日本中のすべてのお墓を取り壊そうと思ってるの」


 


 

 言葉もなくただただ唖然とし続けるユミリ。しかし、次から次へと天地をひっくり返す救世法を考えつくキョウイチに、ユミリは果てしない尊敬と愛情を改めて感じるのであった。


 


 

 ステージ上では綺羅飄介が最後の曲をうたい続けている。曲はキョウイチが作詞を担当したロックバラード【クリスマスは婆ちゃんの胸の中で】というものだった。


 


 

 クリスマスは~ オーイエー 婆ちゃんの胸の中で~ アイニ―ジュ―


 

 クリスマスは~ ウーイエ― 婆ちゃんの胸の中さ~ アイミスュー


 


 

 と、そのときだった。綺羅飄介のCGのような美顔のアップが映っている巨大スクリーンを見ながら、キョウイチがふとこのようにつぶやいた。


 


 

 「……綺羅飄介って……本当は……女の人なんじゃないかな?」


 


 

 「……え?」


 


 


 「いや……今、ふと、なんとなくそんなような気がしただけ……」


 


 

 意味深な言葉を発したキョウイチの横顔を見つめるユミリ。しかし、すぐに視線を卒倒するほど美しい夕影に照らされた富士山に戻し、クラウディアの冥福を祈るのであった。


 


 

 と、そのときである……!


 


 

 ドドーン ドドーン ズドドドドドドドドドドドドドドドドーン


 

 ガガガガガガガガガ― ギギギギギギギギー……


 


 

 鼓膜が破れるかと思うほどのすさまじい轟音が、1番後方の席で見守っていたキョウイチとユミリのさらに後方から轟き渡ってきた。


 


 

 綺羅飄介以外の20万人の群衆が『何事だ!?』と後ろを振り返った。そこには強引に不時着したと思われる一台の小型ジェット機があった。


 


 

 キョウイチは立ち上がって謎の小型ジェット機に近づく。そんな彼をボディガードであるコウサカやガンジたちが追う。


 


 

 ややたってから、謎の小型ジェット機の中から3人のスーツ姿の男たちが姿をあらわした。顔はアジア系。


 


 

 『なんだあんたたちは?』とキョウイチがいおうとしたそのときだった。3人の謎の男たちがバッと土下座をしたのである。


 


 

 「クラウディア様の神聖なお別れ会の最中にもかかわらず、この突然の非常識極まりないご無礼、これはわたくしがのちに死をもって償わせていただきます」3人組の真ん中のリーダー格の男が流暢な日本語でいった。


 


 

 そんな男にキョウイチが質問する。


 


 

 「……あなたたちは?」


 


 

 するとリーダー格の男がゆっくり顔をあげながらいった。


 


 

 「わたくし、韓国最大の人権団体【ミッシング・ピース】代表パク・ジョーアンと申します」


 


 

 「韓国の人権団体!?」キョウイチに追いついていたユミリがいった。


 


 

 「キョウイチ天皇の起こされたこのたびの新生日本革命、その噂はもはやアジアを飛び越し、全世界隅々にまで知り渡っております」リーダー格の男は果てしなく実直な口調でいった。「そこでわたくしたちはキョウイチ様に、我々の国である韓国を救っていただきたいと思い、急遽やってまいりました」


 


 

 キョウイチは無言のままだった。


 


 

 「現在、韓国は生き地獄としかいいようがない惨憺たる状態であります。1分1秒を争う事態なため、アポイントメントもなにも取ることなく、このような限りなく非常識かつ無礼極まりない手段でキョウイチ様のもとにお願いにまいったしだいであります」


 


 


 キョウイチはやはり無言のままだった。


 


 

 「キョウイチ天皇、この無礼はわたくしが今夜にでも死をもって償いますので、どうか、どうか我々の国である韓国を救ってください、お願いいたします!」


 


 

 「キョウイチくん……」ユミリがキョウイチの腕をつかんだ。


 


 

 と、そのとき、キョウイチがようやく口を開いた。


 


 


 「……うーむ、あまりに突然のことなので……」


 


 

 「ダメなのでしょうか?」


 


 

 「いやいや、ボキにとって新生日本革命なんて、ボクシングの試合でいえばまだ1ラウンドが終わったくらいのことにすぎないからねぇ」キョウイチは小さく微笑んでいった。「いいよ、ボキを韓国に連れて行ってくれ。次は韓国革命だ!」


 


 

 そしてキョウイチはユミリを連れて小型ジェット機の中に乗り込んでいった。


 


 

 再び空中に浮いて、日本を離れようとする韓国からやってきた小型ジェット機。それに向かって駆けつけていたタクヤたちが声の限り叫んだ。


 


 

 「キョウ様ぁぁぁぁぁ!」


 


 

 『僕たちもあとから必ず駆けつけますからねぇぇぇぇぇ!』と、コツがいおうとしたそのときである。


 


 

 「僕たちもあとから必ず駆けつけますからねぇぇぇぇぇ!」


 


 

 このセリフを口にしたのは、なんとユーレイだったのである。


 


 

 タクヤとコツは『え?』と呆気にとられて、ユーレイの顔をしげしげと見つめ続けた。


 


 

 どんどん日本から離れて小さくなっていくキョウイチたちを乗せた小型ジェット機。キョウイチに日本人を代表して餞別の歌をうたい続ける綺羅飄介。


 


 

 果たしてキョウイチは、この時代の世界天皇として大成することができるのか?キョウイチの挑戦は、まだまだはじまったばかりである━━。

                  革命小説【新世界創造 未来編】終わり

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