特別編「RPGパロ・本番~もうNGなんて出さない~後編」
実は……前編ってNGじゃなかったんです!
でも、王子…じゃなかった、勇者は死にました(笑)
勇者が目覚めると、そこは出発したはずの城の中でした。
ゲームなので何度でもやり直しが利きます。現実だとこうはいきません。
「“おお、勇者よ!負けてしまうとは情けない!”……これ、いくらなんでも酷過ぎるだろう」
いつも思うんですけど、頑張って戦ってる人達に対して神官は鬼畜じゃないですか?
…一体、誰のために戦ってやってると思ってるんだ!
「情けないのは本当ですから。…ジークに瞬殺されたんです」
「それは仕方ないと思いますよ。………勇者、生きてますか?」
大丈夫です、ゲームだから死にません。
「はっ!?い、一体何が!?」
「………あなたは“中ボス”にやられたんです」
「ちゅ、中ボス!?ジークが中ボスなのか!?」
「残念ながら…」
魔王役を中ボスにキャスティングするという暴挙。
何という無理ゲー。
「……………どうやって勝ったら良いんだ…?」
「………………………」
この神官には、まお………中ボス・闇の騎士団長に勝つ方法が思い浮かばないようです。
「…ま、何とかなるだろ」
「このパーティに不可能はありません」
セリフから漂う嘘臭さがパネェ。
勇者への気遣いに満ち溢れています。
「み、皆!!そうだな、力を合わせて頑張ろう!!!」
勇者の良さは、この復活の早さかもしれません。…フッ、ちょろいヤツだ。
「勇者も復活したことですし、中ボスのところに行きましょう。
一度行ったことのある場所なら、転移魔法が使える設定です」
魔法使いはサクサク進む気です。
転移魔法まで使うとは………本気ですね!
「よしっ、出発しよう!!」
「さっき瞬殺されたばかりですけどね」
僧侶、それは言っちゃあいけないよ。
復活した勇者と仲間達は、もう一度中ボス・闇の騎士団長のところへ向かいました。
………いや、だからレベルを上げてから行けって。
◇◇◇
レベルを上げることもなく、勇者はボス戦へと挑みます。
もう、無謀の一言しか浮かびません。
[闇の騎士団長・ジークフリートがあらわれた!]
「ハルカ!…お前まで消えて驚いた」
どうやら、団長は僧侶を心配していたようです。
「ジークの所為で余計な時間を使いました」
「………悪かった…」
僧侶の理不尽とも言えるセリフに素直に謝る団長。
彼は、妻には勝てない。
「勇者、さっさとリベンジしたらどうですか?」
「あ、ああ!…えいっ!!」
僧侶からの声援を受け、勇者が戦いを挑みます。
[何をとち狂ったのか、勇者は団長に攻撃した!しかし、団長はダメージを受けない!]
コレ、もうバグじゃね?
「……………」
しかし、なぜか団長は勇者に反撃しません。
「何で攻撃しないんですか?」
「コレが死んだら、ハルカもまた消えるんだろう?」
どこまでも妻のことしか考えていないんですね。
…ナゾの健気属性。
「そうなりますね」
妻の言葉に、団長は何か考え込んでいるようです。
「………俺が勇者になる」
碌な考えじゃなかった。
「ええっ!?…リ、リストラ!?」
今は、勇者もリストラされる時代なんですね。
ううっ、世知辛い。
「戦力的にはそうしたいところですが、“闇の騎士団長”から“勇者”には転職できませんよ」
勇者の仲間も歓迎ムードです。どうする、勇者!
「なら、魔王を裏切………裏切り、ハルカを守る騎士となろう」
何か、今ナゾの葛藤があったような………。
裏切るの嫌なんですか?
というか、守るのは僧侶だけなんですね。お前もキャラのぶれない男だよ。
「…………。ああ、それは可能のようですね。それでいきましょう」
[闇の騎士団長は改心しました。団長がパーティに加わります。]
[パーティは最大4人までです。誰か1人、抜けてください]
あっ、やっぱり誰か抜けないといけないんですね。
誰が抜けるんでしょう?……いらない子ですか?
「“夫婦はセット”ということで」
[僧侶はレアアイテム・団長を手に入れました。このアイテムは譲渡不可です。]
魔法使いの機転でパーティ崩壊の危機は免れました。
「あんまり使いどころがないですね」
「レ、レアアイテム……」
新しい仲間(?)を皆、歓迎しています。
「これで良いでしょう。………さあ、次は魔王城ですよ」
どこまでもサクサクと進もうとする魔法使い。
何が彼をそうさせるのか?………待て、次回!!
勇者一行はレアアイテムを手に入れ、魔王城へと向かいました。
◇◇◇
とうとうラスボス、魔王戦です。
だから、レベルを………いや、もういいです。
[魔王・アレクサンダーがあらわれた!]
「もうっ、皆遅いよ!僕、待ちくたびれちゃった!!」
「ちちう……あなたが魔王だったのか!?」
何となく、あなただと思ってました。
でも、ラスボスの息子が主人公ってテンプレですよね。勇者が主人公かはナゾですが。
「そーだよー☆」
「くっ、いくらあなたでも平和を乱すことは許さないぞ!!」
「はーはははっ!!ならば、僕を倒してみるが良い!!!」
魔王はノリノリです。
悪役笑いが様になっていますね。たぶん、待ってる間に練習したんでしょう。
「行くぞ!…えいっ!!!」
………コイツの攻撃はいつまで経っても“えいっ!!”だな。成長してないの?
[悲壮な決意を胸に、勇者は魔王に攻撃した!しかし、魔王はダメージを受けない!]
悲壮な決意…?
魔王はメッチャ楽しそうですけど。勇者との温度差パネェ。
「…………え?ちょっと、レオぴょんレベルいくつ?滅茶苦茶弱くない??」
…………………。
現実って悲しいですね。
「な、私の攻撃が!?」
「申し訳ありません、陛下。時間が足りませんでした」
魔法使いが勇者に代わって謝罪します。
ほら、勇者も一緒に謝りなさい。弱くてスミマセンって………辛っ!?
「ええ~。僕、戦うの楽しみにしてたのに~。必殺技まで考えたのに~」
魔王が勇者を嘲笑っていると、捕らわれの姫達が現れました。
どうやら、捕らわれていなかったようです。
「必殺技!?………最終形態はありますか?」
妹姫が喰いついてきました。
反応するの、そこなんですね…。
「もちろんさ!第5形態まで考えたんだよ☆」
どれだけヒマだったんだ。時間有り余ってるじゃないですか。
「すごいですっ!!見せてください!」
「いいともー!!」
「やったー!」
ナゾのノリで盛り上がる2人。
仲良しさんですね。
「ちょ、ちょっと待って……」
「あら、楽しそうですね」
勇者の言葉を遮り、姉姫が登場しました。
「あ、マリアンナお姉様!
陛下が最終形態まで見せてくれるそうですから、一緒に見せてもらいましょう?」
ねぇ、妹姫。今はそれどころじゃないと思いますよ?
話も佳境に入ってるんで、少し静かにしてくれるかな。
「ふふっ、ぜひご一緒させてください」
ちょ、あなたも何言ってるんですか!?
そこのぼんやりさんを何とかしてくださいよ!
「待ってくれ!!」
「どうしたの?レオぴょんも最終形態見る?」
「えっ、い、いえ、見ません!!………私との戦いはどうなったんですか?」
勇者の尤もな疑問。
「ええ~。だってレオぴょん弱いんだもん。勝負にならないよ」
残酷な事実を突き付けてくる魔王。
意外と鬼畜ですよね。笑顔で言うセリフじゃないですよ。
「………………」
「ドンマイ」
僧侶の慰めの言葉は、たぶん勇者の心に突き刺さったと思います。
「なぜ、コレが勇者なんだ?」
「ああっ!?ジーくん、何でそこに!?」
おおっと、団長の裏切りが発覚してしまいました。
「………俺は、ハルカの騎士になった」
「えっ、何それ?」
ほんとに何それ?
「ジークフリートは僧侶のレアアイテム・団長になりました」
「そんな~。せっかくジーくんと合体しようと思ってたのに」
…っ!?
「その話は、初耳だ」
じゃあ、どの話なら聞いてたんですか?
「えっ、言ってなかった?」
「初めて聞いた」
団長が動揺しているようです。
さすが魔王、心理戦も強いんですね。
「ゴメンね~。言い忘れてたみたい」
「合体ってどうやるんですか?」
僧侶が珍しくマトモに会話に参加しています。
夫のことだから気になるんですかね。…えっ、違う?
「あ、それ、私も気になります!」
妹姫、君は静かにしてようね。
「え~とね、グチャグチャに混ぜ合わせるとできるよ!」
…合体って、意外と生々しいんですね。
マジで混ぜ合わせちゃうんですか?グロテスク………。
「………遠慮しておく。またの機会に誘ってくれ」
「そっか~、残念だな~。じゃあギルたん、やってみない?」
矛先が魔法使いに向いてしまいました。
次の標的は魔法使いのようです。
「私も遠慮しておきます。…陛下、元に戻れなくなる行為はやめてください」
なぜか魔王の心配をする魔法使い。
………元の戻れなかったら、仕事に支障が出るかもしれないですもんね。
「元には戻れるよ。戻れないと奥さんに怒られちゃうからね!」
怒られなかったら、戻れなくても良いんですか?
「………それは、ものすごく怒るでしょうね…」
「うん。戻れなかったら“実家に帰らせて頂きます”って言ってた」
「………そうなると、また実家が賑やかになりますね…」
ちょっと、内輪の話は控えてください。
「あっ、でもその前にギルたんの邸に行くと思うけど」
「…………っ!?……な、なぜ?」
魔王の衝撃発言に魔法使い、大ダメージです。
MP、残ってますか?
「“可愛い甥の顔が見たい”から」
「……………。陛下、合体は今後一切禁止です」
「ええ~」
魔法使いの言葉に、魔王は不満タラタラです。
「じゃあ、私が!」
なぜか妹姫が、合体しようと立候補しています。
えっ、合体したいの?
「ダメです」
「ええっ!?」
「ダメです」
魔法使いと妹姫の攻防戦………勝つのはどっちだ!?
いや、どうでも良いよ。
「あー………陛下?」
こんなとき、頼りになるのはあなただけです!
「なーにー?」
戦士の言葉に間延びした返事を返す魔王。
何、もう飽きたの?
「これからどうするんです?………勇者が戦意喪失してるみたいなんですが」
「……よわすぎる………しょうぶに……ならない………」
勇者は、部屋の隅っこでずっといじけてたようです。
カビとか生えてないですよね?
床がのの字を書かれ過ぎて、何だか陥没している!?
地味にすごいですね。
「おおっ!何か、大変そうだね~」
床のリフォームが必要です。
「………はぁ。………陛下、大神官様が会いたがってたんですが、どうしますか?」
戦士、役職名!役職名忘れてますよ!!
せめて“マーリン様”とかでお願いします。
「う~ん。じゃあ、もう魔王やめるよ!あんまりいつもと変わらなかったし。
しかし、一体何がいけなかったんだろ~?」
「陛下が陛下だったことだと思いますよ。
………魔王がいなくなるなら、この話も終わりだな。勇者、城に戻ろう」
最後まで勇者を気に掛ける戦士の男気に乾杯!
「……よわすぎる………しょうぶに……ならない………」
まだ落ち込んでいる勇者。
もうっ、立ち直りの早さだけが取り柄でしょ!
「………はぁ。……勇者、アンタが弱い訳じゃねえよ。陛下が強過ぎるんだ」
「レイナルド殿っ」
おおっ、旅の間にこんなにも強い絆が!?
「僕はそこまで強くはないけどね~」
何なの、戦士のフォローを台無しにするのが流行ってるの?
「………城に帰ろう…」
「ああ、それが良い。……魔法使いは置いて帰るか」
魔法使いは、妹姫と楽しそうにおしゃべりの最中です。
……イチャイチャしやがって。
「いや、姫達と一緒に皆で帰ろう」
「あの姫達、帰る気あんのか………?」
ボロボロに傷付いた勇者ですが、死闘の末に魔王を倒し、姫達を救うことができました。
まさか、捕らわれの姫が2人だったとは、驚きですね!
◇◇◇
勇者一行は姫達を連れ、無事城に戻って来ました。
旅から帰った勇者を、王様は温かく迎えます。
「さあ、勇者よ。どちらの姫が良いですか?」
相変わらず、何の前置きもしてくれない王様ですね。
「えっ、何の話ですか?」
「エンディングは“勇者と姫の結婚”になっているので、どちらかの姫と結婚してください。
…………私は魔王城の方に用がありますから、後は神官のヨシュアに頼みますね」
王様はイソイソとどこかに行ってしまいました。
きっと、お友達が待っているのでしょう。
「………はい」
こんなところでも仕事を押し付けられている可哀想な神官。
何だか、返事にも元気がありません。………王様は返事も聞かずに行っちゃいましたけどね。
「結婚!?………いきなり結婚は、少し難しくないか?まだ知り合ったばかりだし…」
「そういう決まりなので………どっちにしますか?」
「そんなモノのように………。なら、スズメと交換日記から…」
何だよ、結局選ぶのかよ。
しかも“交換日記”って………進展するまでにどのくらいかかるんですか?
100話で足ります?
「何を言っているんですか」
どこから聞いていたのか、魔法使いが話に割って入って来ました。
「どうしたんだ、ギル?」
「バカだ、アホだ、地味な虫勇者だと思っていましたが、ここまで頭が悪いとは」
「そ、そんなに言わなくても………」
どうやら、魔法使いは怒っているようです。
「空気を読んでください、このKY」
どうやら、魔法使いはものすごく怒っているようです。
KYだから空気が読めないんです。
怒らないであげて。
「けーわい?………なんだろう、ものすごく心に刺さる…」
「………その辺にしといてやれ、魔法使い。
勇者。魔法使いと妹姫は恋仲なんじゃないか?」
戦士は旅が終わっても、勇者のフォローをしてくれるようです。
「な、そ、そうだったのか!?………それは、知らなかったとはいえ、失礼なことを…」
知らなかったんですか!?
王宮中に噂が広まっているのに!?何、ぼっちなの?
「知らなかったことには驚きだが………仕方ねえよ、気にすんな」
「いや……ギル、本当にすまなかった」
「……………別に、構いませんよ」
魔法使いはまだ怒っているようですね。
心が狭いのかもしれません。
「あの………すみません、勇者様」
なぜか、妹姫が謝ってきました。
勇者が不憫だったからでしょうか。
「私の方こそ、2人に失礼なことを言ってしまって………申し訳なかった。
恋人同士なのだろう?私のことは良いから、幸せになってくれ」
うっ、本当に不憫なヤツ。
ただ選んだだけなのに振られるとか…。
「ありがとうございます」
「で、勇者は姉姫と結婚するのか?」
えっ、姉姫と結婚するんですか?
チャレンジャーですね。まさに勇者。
「あら、私もお断りさせて頂きたいのですが」
瞬殺されてしまいました。
「………………なぜ、私ばかり振られるんだ…」
告白もしていないのにね………。
もう勇者は再起不能だ!
「理由を聞いても良いか?………俺が言うのも何だが、勇者は良い男だと思うぞ?」
戦士、それは本心ですか?お世辞?
「虫王子なのがいけないんじゃないですか?」
突然出てきて何言ってるんですか、僧侶。
勇者はもう再起不能なんだから、これ以上イジメないであげて。
「そうですねぇ。虫というより………全体的に好みではありませんので」
すべてが嫌発言。
容赦のない女性陣に、もうビックリ!
「………………ギルとスズメの結婚式には呼んでくれると嬉しい…」
勇者………ドンマイ。
「おいおい、希望は捨てるなよ。俺だって、まだ結婚してねえぞ」
「“結婚しない”と“結婚できない”って、大きな違いだと思いますよ」
すかさずフォローした戦士の気遣いを、またしても僧侶が台無しにします。
「本当ですね」
「お前も“結婚できない”んだろうが、この年増」
団長が、姉姫に突然ケンカを売ってきました。
なぜこの2人はこんなにも仲が悪いのでしょう。
「…ふふっ、私は“結婚しない”だけですわ」
「ハッ、強がりか」
「あら、12歳も年下の女性を結婚前から囲っていた人は、言葉が通じなくて困りますね」
「耳が遠くなっているのはお前だろう、年増」
…いや、むしろ仲が良いのか?
「もうっ、やめてくれ!!!」
勇者が、そんな2人のギスギスした会話を止めてくれました。
きっと聞くに堪えない話だったのでしょう。
「………もう、解散するか」
戦士もお疲れ気味のようです。………まあ。当然ですが。
「しかし、勇者が結婚しないと終わらないのでは?」
「あっ!じゃあ、陛下に勇者様のお嫁さんを探してもらいましょう!」
こうして、エンディングを迎えないまま、勇者の新たな旅が始まった。
次回作“チャック・クエストⅢ~天空の…じゃなかった、何かの花嫁~”に続きます。
RPGパロを面白いと言ってくれたアナタに捧げます。
………どこまでも、読者に媚びる!
あ、皆さんもどんどんリクエストしてくださいね。




