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特別編「RPGパロ・本番~もうNGなんて出さない~前編」

 好評だったので、調子に乗ってしまいました!

 だが後悔はしていない。

 ある日、とある国に住む青年・レオンハルトはその国の王様に呼び出されました。


「王様、何かご用でしょうか?」

「よく来てくれました。

 実は、今この国は魔王の脅威に晒されているのです。……私の娘も攫われてしまいました」


 王様は前置きもなく話を始めてしまいました。

 …でも、RPGの王様連中ってこんな感じですよね。


「ええっ!?…マ、マーリ………王様、娘がいたのですか!?」


 なぜか、王様に娘がいたことに驚く青年。

 ………そんなに意外ですか?このくらいの年齢なら、子どもどころか孫がいてもおかしくないですよ。


「いえ、いませんよ。そういう仕様です。

 ……勇者レオンハルトよ、あなたの力が必要です。どうか、魔王を倒してくれませんか?」

「わ、私が勇者ですか!?………私はただの村人だと思っていたのですが、ま、まさか何か秘められた力があったのですか!?」


 いつの間にか青年が“勇者”認定を受けていたようです。


 …えっ、ひょっとして中二病なの?

 勇者に秘められた力があるとか聞いたこともないよ。むしろ、存在感が秘められてる。地味だ!


「残念ですが、そんな設定はありません。地道にレベルを上げてください」


 ですよね~。


「あ、はい。そうですよね……」

「何事も努力が大事ですよ。

 きっと、あなたなら魔王をも倒せるほどの力を手に入れられるでしょう」

「はいっ!!必ず、この国に平和を取り戻してみせます!!!」


 もうやる気満々ですね。

 乗せられやす過ぎじゃないですか?…少しは自分の頭で考えた方が良いよ。


「……ありがとうございます。あなたのその決意を、私は嬉しく思いますよ。

 さて、あなたの旅の仲間を紹介しましょう」


 まさかの“仲間がすでにいる”パターン!?

 お膳立てしてくれたんですね。文字数的な理由で。


「旅の仲間?えっ、私が自分で集めるのではないんですか?」

「申し訳ありません。………この国には、もう時間がないのです」


 まあ、読了時間とも言いますが。


「くっ、そんなに危機的な状況になっていたとは!!」

「ええ。………危険な旅になるでしょう。それでも、行って頂けますか?」


 確かに勇者にとっては危険な旅になりますね。勇者にとっては。


 それを知っていて、送り出す王様。何たる外道!

 でも、RPGの王様ってこういうもの。


「もちろんです!!」

「では、あなたの旅の仲間を紹介しましょう」

「はいっ、お願いします!!」


 勇者は元気いっぱいのようです。


「まずは、我が国が誇る最強の戦士・レイナルド」


 いつの間にか、部屋に戦士がいました。その後ろには他にも人がいます。


 おっと、画面がスライドしました。

 そんなところに人がいたんですね。まあ、変な男と王様を2人きりにはしないでしょう。


「アンタが勇者か?俺はレイナルドだ、よろしく頼む」


 とっても素敵な戦士ですね。…兄貴って呼びたい人ナンバーワン!


「レ、レイナルド殿が戦士なのか?…神官から転職したのか?い、いや、良く似合っていると思うが」

「そうか?……RPGは転職しやすいからな、この旅が終わればすぐいつもの格好に戻る」


 ……っ!?ア、アールピージー…だと!?


 いやいや、メタはやめてくださいよ。

 ただでさえカオスなのに………。


「そうだったのか。いや、しかしレイナルド殿が仲間なら心強いな!」

「ありがとな」

「親睦も深まったようですし、次は魔法使いを紹介しましょう」


 “親睦が深まった”というか、コレ、元々知り合いでしたよね?


 あっ!?この2人、本編では会ったことない!

 ………いや、知り合いではあったはず。


「ギルバートです。殲滅系の大規模魔法を得意としています」


 初期から“殲滅系”が得意なんですか?

 あんまり大規模魔法ばかり使われると、MPの消費が………。


「ギル!きっと、お前が魔法使い役だと思っていたぞ!!」

「そうですか。……さあ、姫が待っています。早く魔王のところに行きますよ」


 何、この魔法使い。何だかやる気満々です。

 今回のパーティメンバーは皆やる気があって良いですね。


「そうだな!!しかし、ギルと一緒に旅ができるとは嬉しいな!」

「そうですか」


 何だか、魔法使いの受け答えがテキトーです。…えっ、勇者嫌いなの?


「仲が良いようで何よりです。…最後に、僧侶を紹介しましょう」


 仲、良いかな…?


「勇者、頑張ってくださいね」


 なぜか他人事な僧侶が登場しました。


 この人は常に人任せですね。

 夫が甘やかすからでしょうか?前はこんなに酷くなかったような……。


「彼女はハルカです。優しく、優秀な僧侶ですよ」


 “優しい”???

 えっ、何ソレ初耳。


「………バンソーコくらいはあげますよ?」


 バンソーコ………優秀……………。


「め、女神殿!?……バンソーコって何だ?」

「どんな傷でも治せる、マジックアイテムです」


 何なの、僧侶なのに回復魔法使えないの?


 あと、バンソーコはそんなに万能じゃないから!

 信じちゃダメだよ、勇者。


「そんなものがあるのか!?すごいな、さすが僧侶だ!!」


 別に僧侶はすごくないだろ。

 いや、堂々と嘘を吐くところはすごいけど……。


「それでは、仲間の紹介も終わりましたし、そろそろ旅に向かってください。

 最初は装備を整えてくださいね。……詳しいことは、その都度説明が出るはずです」

「せ、説明?」

「城内であれば立っている騎士に、どこかの村なら村人に話し掛けてください。

 彼らから有力な情報が得られることもありますよ」


 ああ、そういう仕様なんですね。分かります。


「分かりました!!」

「遅いです。さっさと行きますよ、勇者」


 魔法使いは先を急いでいるようです。

 一体彼に何があったのでしょう。


 …はっ!?これが噂のキャラ崩壊か!?


「うっ、く、苦しい……。ギル、引っ張らないでくれ。HPがへ、減ってしまう………」


 首への攻撃は大ダメージです。


「仲間の攻撃は受けない設定ですから、大丈夫です」


 まあ、それはそうですよね。でも勇者の首、絞まってますよ。


 こうして、勇者一行は魔王を倒す旅に出ました。



   ◇◇◇



 レベルを上げながら旅をする勇者の前に、モンスターが立ち塞がります。

 ………モンスター?


[神獣・着ぐるみがあらわれた!]

[騎士・リックがあらわれた!]

[動物・タマがあらわれた!]


「雑魚ばかりですね。……さあ、勇者、早く倒してレベルを上げてください」


 えっ、“神獣”なのに雑魚なの?


 しかし、何だか統一感のない敵です。

 1人だけ人間が混じっています。………モンスター?


「ええっ!?わ、私が1人で戦うのか!?」


 そうですよ。あなたのためのレベル上げです。


「補助系の魔法はかけて差し上げますよ」

「わ、分かった、頑張ってみる。………レイナルド殿は戦わないのか?」


 おい、頑張るんじゃなかったのか。

 いきなり戦士に助けを求めるとか、男らしくないぞ。男らしかったときがあったのかは不明だけど。


「ん?俺か?………タマ」


 兄貴の鋭い眼差し!!

 ペットなタマはメロメロ(?)だ。兄貴カッコいいッス!


「………ガウ」


[戦士の攻撃!動物は腹を出して負けを認めた!]


 …これ、攻撃だったの?


「これで良いか?」

「ひ、一言でっ!?……ああ、ありがとう。あとは私が!」


 地味にショックを受けている勇者が、気を取り直して神獣に剣を向けます。

 まだ“どうのつるぎ”使ってるんですか?


「ちょっと!ボクに剣向けないでよっ!!」


 なんという無茶ぶり!

 お前は敵だろ。


「す、すまない…」


 あっさり謝ってしまう勇者………。


「殿下……すみません。負けたら団長にやられるんで、俺本気でいきます!」


[騎士の死に物狂いの一撃!勇者に30のダメージ!]


 喰らい過ぎ。

 防具付けてないんですか?えっ、まだ“たびだちのふく”着てるとか………。


「ぐはぁっ!!………くっ、しかし、私は勇者だ!!こんなところで負けられない!!

 …えいっ!…えいっ!…えいっ!!」


[勇者の攻撃!騎士に3のダメージ!]


 ショッボッ!?

 1回の攻撃で1しかダメージ与えられないって、ほんとに勇者ですか?


「イテッ!………え、殿下のレベル低くないですか?」


 なんと!

 勇者のあまりの弱さに、敵が“本当に勇者なのか?”と疑っているようです。


「………………今、レベル上げの最中だ」


 そうそう、レベルが足りてないだけで職業は勇者ですよ。初期設定がそうなんで。


「これ、俺が負けた方が良いんですかね?」

「そうしてください。…ああ、勇者が傷付かないように負けてあげてくださいね」


 どこまでも気を遣われる勇者。

 その優しさに、むしろ泣ける。


「…………。やぁ~らぁ~れぇ~たぁ~」


 おい、この大根役者!


[騎士は倒れた!勇者のレベルが5上がった!]


 レベルが一気に5も上がるとか………一体どのくらい差があったんでしょう。


「か、勝ったのか…?」

「良かったですね、勇者。いきなり5もレベルが上がりましたよ」

「う、うん。………リックは一体どうしたんだ?」


 ほんとにどうしたんでしょうね。あの大根役者。

 さすがの勇者も疑問を抱いてしまう程の大根っぷりでした。


「きっと、勇者の攻撃は後から効いてくるタイプだったんだよ」


 えええ~、何そのジワジワくる攻撃。毒?


「そ、そうなのか!?私にそんな力があったなんてっ!!!」


 いや、ないよ。


「もうレベル25ですし、そろそろボス戦に行きましょうか」

「それは良いが………で、そこの神獣サマはどうするんだ?」


 あっ、そういえば。

 まだ一体残っていました。


「………わー、勇者に殺されたー」


 お前も棒読みだな。何だか、わざとらしい!


[神獣は倒れた!勇者に250の経験値が入った!]


「…っ!?わ、私じゃないぞ!!冤罪だ、殺人なんてしていない!!」

「そうですね。人じゃないですし」


 神獣殺し………カッコいい2つ名ができましたね。中二っぽいですよ。


「もう向こうは全滅しましたし、さっさと行きますよ」


 この魔法使い、本当にサクサク進もうとしてますね。

 …どうかしたんですか?


「ああ。……いや、何か………」


 珍しく戦士が戸惑っています。


[動物・タマが起き上がりこちらを見ています。仲間にしてあげますか?]


「いいえ」

「いりません」


 一行両断ですね。

 仕方ありません、ゲームが違いますから。


「……ガ、ガウ…」

「すまんな。ちょっとゲームが違うみたいだ」


[動物・タマは寂しそうに去って行きました。]


「…仲間にしてやっても良いんじゃないか?何だか可哀想だぞ」


 ああ、自分と重ねちゃったんですか?


「勇者、そんなにこのパーティから出たいのですか?」

「えっ!?ど、どう言うことだ!?」

「パーティは最大4人までです。ソレを入れるなら、誰かが抜けなくてはいけません」


 そういう設定なんですね。


「あ、なら私が!」


 まさかの衝撃発言。


 僧侶はパーティを抜けたがっているようです。

 一体何が不満だったのでしょうか?やっぱり勇者がショボかったからですかね。


「却下」

「それは困るな」


 皆、必死で僧侶を引き止めています。だって、仲間だから!!


「私、いる意味なくないですか?回復魔法とか使えませんし」


 そ、そんなっ!?

 回復魔法が使えないことを気に病んでっ!?


「あなたより使えない人もいますから」


 いますね。誰とは言いませんが。


「女神サマは巫女ポジションだろ?いた方が良いと思うぞ、これからの展開を考えると」


 巫女ポジション!?

 まさか、僧侶が主役だったんですか?


「…完全にジーク対策ですね」

「ジークフリートと戦うなど、ご免です」

「俺もアレとはあまり戦いたくない」


 ……………彼、一応本編のヒーローなんですが…。


「………勇者がもっと頑張れば良いんですよ」


 尤もな発言ですが………僧侶だって、人任せで全然頑張ってないですよね?


「私はつ、使えない人なのか………」


 勇者は、魔法使いの発言に落ち込んでいたようです。

 …“使えない”のは事実ですよ。 


「…誰も勇者のことだとは言っていません」

「じゃあ、誰のことなんだ…?」


 ああっ、勇者が禁断の質問をしてしまいました。

 そんなに止めを刺されたいのでしょうか。


「おいおい、勇者。そういうことは聞くなよ。使えないって言われたヤツが可哀想だろ?」

「絶妙なフォローですね」

「……………………」


 戦士のせっかくのフォローが、僧侶の発言で台無しです。


「いや、俺かもしれないからな。言われたら、さすがに悲しい」

「それは、さすがに苦しくないですか?あなたが使えないなら、勇者なんかどうなるんですか」

「……………私…」


 僧侶はちょっと黙ってっ!

 確かに、戦士のフォローには無理があるけど。このままだと勇者、瀕死になっちゃうから!


「そう言われても……俺はあまり戦ってないからな、使えないと思われても仕方ないと思うぞ」

「いや、もう良いんだ………ありがとう。これから少しでも役に立てるように頑張る…」


 ううっ、健気な…。

 ガンバレ勇者、強く生きろよ。


「アンタの努力は報われてるさ。レベルも結構上がってるだろ?」

「戦士のレベルって、いくつですか?」

「………あー…」


 もうほんとに黙って!

 僧侶は勇者に何か恨みでもあんのか?それとも戦士が気に食わないのか?

 パーティの和を乱さないでよ!


「………遅いです。そんなことはどうでも良いですから、さっさと行きますよ」


 ケッ、元はといえばお前が原因だろ。………八つ当たりでした、スミマセン。


「何か、異常なくらい行きたがってませんか?」

「……………そんなことは…」


 魔法使いは、何やら先を急ぐ理由があるようです。

 その理由とは………いや、知らないですけど。


「まあ、国に平和を取り戻したいのは皆一緒だろ」


 戦士が話をまとめてくれました。

 もう、彼がリーダーで良いと思います。


「そうだな!さあ、早く先に進もう!!」


 勇者もいつの間にか元気はいっぱいのようです。

 あなたの良いところは、その立ち直りの早さだと思いますよ。


 その後も、勇者はコツコツとレベルを上げていきました。

 堅実なプレイスタイルのようです。…回復できませんからね。



   ◇◇◇



 勇者一行はとうとう中ボスのところに辿り着きました。

 もう中ボス戦のようです。………勇者の身体がボロボロに見えるのは気のせいですか?


[悪の神官長・アレンがあらわれた!]


 ああ、僧侶ポジションじゃないと思ったら………敵方でしたか。

 “悪の神官長”とか通常運転ですね。


「ああっ、女神様っ!!あなたの方からこちらに来られるとは!!!」

「………勇者、早く倒してください」

「ア、アレン!?なぜ、お前が悪に染まってしまったんだ!?」


 “悪に染まった”って、いつも通りだと思いますけど。

 この変態は大体こんな感じですよ?


「失礼ですね。私はただ、神の教えを説いていただけです」


 神官長は一体誰に教えを説いたんですかね?…そろそろ被害者の会とかできそうな気がします。


「きっと迷惑条例に引っかかったんですよ。公序良俗に反しているとかで」

「アレン、人に迷惑を掛けてはいけないぞ!!」


 もう完全に変態扱いですね。前からでしたが。

 神官長は存在が“人に迷惑”なんですよ。


「ああ、女神様!!今日も神々しい!」


 相変わらず人の話を聞かない神官長。


「わ、私の話を聞いてくれっ!!」

「……あの変態を黙らせてください。戦士、アレの保護者はあなたでしょう」


 そう、しかし今日は強力な助っ人がいるのです!

 頼れる兄貴な戦士・レイナルドが!!


「アイツの保護者になった気はない。………俺が手を出すと、勇者に経験値が入らないぞ?」


 こんなときでも勇者なんかの気遣いができるなんて、素敵です。


「勇者のレベルとかどうでも良いですよ。どうせ役に立ちませんし」


 僧侶は黙っててください!

 もう何なんですか、あなたは。戦士の気遣いを無駄にすることが生きがいなんですか!?


「………………。勇者、とりあえず神官に攻撃してください。一度でも攻撃していれば、少しは経験値が入るはずです」

「ええっ!?な、何の話だ?すまない、アレンを説得していて……」


 何っ!?

 話を聞いていなかっただと!!

 お前まで戦士の気遣いを無駄にするとは………勇者めっ!


「………この、地味勇者が」


 もっと大きな声で言ってやってください。


「…勇者、アイツに攻撃してくれないか?一応、敵だからな」

「わ、分かった!アレン、すまないっ!!…えいっ!!」


 こんな勇者でも見捨てない戦士、素敵です。


[勇者の攻撃!クリティカルヒット!神官長に5のダメージ!]

[しかし、神官長は回復した!]


 ショッボ………。

 ちゃんとレベル上げたんですか?


「予想はしていましたが………全然効きませんね」

「……ク、クリティカルヒットなのに…」

「ショボイですね」


 皆、勇者のショボイ攻撃にがっかりです。がっかりです!


「いや、アイツは常に結界を張ってるから仕方ないだろう」

「フォロー乙」


 おおいっ、世界観を考えてものを言えっ!!


「………僧侶、そういう発言はやめてください」

「おつ?何語だ??」

「そういうツッコミは世界観を壊すのでやめてください」


 お前が言うなっ!!


「す、すまない」

「話が進みませんね。…戦士、早くアレを叩きのめしてください」


 話が進まないのは、主に僧侶の所為です。

 ………マトモな人の少ないパーティですね。もっと良い人材はいなかったんですか?


「ああ、そうだな。………アレン、いつまで遊んでるんだ?」

「………っ!?レ、レイ、いつの間に!?」


 まさかの、幼馴染に気付いていなかったという神官長。

 本当に女神サマしか見えてないんですね。その目、いらないんじゃないですか?


「ずっといたぞ?」

「………………」

「俺はそろそろ先に進みたいんだが」

「…………………。ああっ!!めが…僧侶様の魅力に負けてしまいました!」


 …っ!?な、なぜか僧侶の手柄になってる!?

 ………くっ、ここまで信仰心(?)を貫き通すとは、やるな!


[神官長は倒れた!僧侶のレベルが15上がった!]


「じゅ、15もレベルが!?」


 僧侶のレベルはいくつだったんでしょうね。気になるところです。


「何となく嫌な気持ちです」

「そういうこともあります。………さあ、次に行きましょう」


 魔法使いは先を急いでいるようです。

 …だから何で?


「次って、魔王戦ですかね?」

「それに近いな」


 中ボス・悪の神官長を倒した勇者一行は次のダンジョンへと向かいました。

 ………勇者と僧侶は、もうちょっと真面目にレベル上げた方が良いと思いますよ。


   ◇◇◇



 またコツコツとレベルを上げた勇者は、ボス戦へと挑みます。


[闇の騎士団長・ジークフリートがあらわれた!]


 えっ、まさかのラスボス!?

 “闇の騎士団長”………魔王と何が違うんですか?


「よく来たな、ハルカ」


 いつぞやと同じセリフですね。

 祝言はもう挙げたんですか?


「あっ、私は勇者じゃありません」


 そうですね、今回は回復魔法の使えない僧侶です。

 何に使えるのかがここに来て判明しました。


「…?なら、誰が勇者なんだ?」

「私だ!!」


 勇者が元気いっぱいに返事をしてしまいました。

 お願いだから、空気読んで!


「……………消えろ」


[団長の攻撃!勇者に500のダメージ!]

[なんと!勇者は死んでしまった!]


 …っ!?ま、まさか、これはゲームオーバーでは!?


「……あ」

「………あ」

「…あーあ、ジークの所為で」


 悲しみに暮れる仲間達………惜しい人を亡くしました。


「………弱過ぎないか?」


 ご尤も。

 ちゃんとレベル上げしないからですよ。





 後編に続きます。


 ……思いの外、長くなってしまいました。

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