拍手小話⑤ 「IF話~サバイバルin無人島~」
―――もしも、王子、団長、宰相、神官長の4人が無人島に行ってしまったら………。
◇◇◇
ここは、どこかの海に浮かんでいるかもしれない無人島である。
「こ、ここは一体どこなんだっ!?」
在り来たりなリアクションをしたのは、もちろん王子だ。…さすが地味王子。
「上に“無人島”と書かれていますから、無人島では?」
神官長は初っ端からメタをかましてきた。
ひょっとしたら、彼の崇拝する“女神様”をリスペクトしたのかもしれない。
「メタは止めてください。話が進みません。
殿下も、そんなことをわざわざ聞かないでください」
“メタなのはあなたです。”(某宰相サマの物真似)
「なぜ、俺とハルカの無人島生活じゃないんだ?こんなヤツらが出ていても、需要がないだろう」
そんなことをしたら“お月様”になっちゃうでしょ!
少しは自重しろ。
「何をっ!?女神様をこのような場所にお連れしようなどと…!あなたはどこまで悪魔なのです!!」
「夫婦とはいつでも一緒にいるものだ。第一、俺達は新婚だぞ?傍にいない方がおかしい」
「新婚!?あなたが結婚してから、もう3年も経って…」
「本当に、メタは止めてください。
……それで、これからどうするんです?まずは、安全確認と水の確保だと思いますが」
どうしようもない二人の言い合いは宰相が止めてくれた。グッジョブ!
このメンツだと、あなたがいないと話が進みません。
本当にありがとう。
「それならば、私が!!食糧の確保をしよう。あの森から食べられる虫をたくさん捕って来るっ!!!」
王子は森へと駆け出して行きました。
……………。
何で虫限定なんだ。お前にとって“食糧”は虫なのか。
「……殿下は放っておきましょう。お二人はどうされますか?」
宰相は虫王子のことは無視することに決めたようです。
…うん、アイツはもう虫王国の地味王子とかになれば良いよ。
良かったね。キャラ立って。
「そろそろ、祈りの時間です。…私は神に祈りを捧げなくてはならないので」
そう言って、神官長は近くで祈り始めました。
おいっ、お前はキャラ立ち過ぎだ!
状況考えろよ。宰相が可哀想だろ。
「……はぁ。ジークフリート、あなたはどうしますか?」
「ハルカがいないのならば、一刻も早く帰るだけだ。
おい、宰相閣下。お前、転移魔法は使えるか?」
お前もブレない男だな、団長。
“ハルカ”って言い過ぎなんだよ。もはや口癖の域だよ。ほんとに自重しろ。
「使えますが……、ここがどこか分からない状態で使うのは危険です。
それに、転移魔法を使うのであれば、あそこで祈っているアレも必要でしょう」
そう言えば魔法が得意って設定だったね。
「チッ、使えんヤツだ。なら、その無駄に知識の詰まった頭を使って、帰る方法を考えろ。
……俺は、マシな食糧と水を確保して来る。他に必要な物はあるか?」
「あなたなら泳いででも帰れそうですけどね。
そうですね…いつまで掛かるか分からないので、4人で安全に過ごせる場所を探して来てもらえますか」
「ハッ、魔剣でもあれば、空間を切り裂いてでも帰るがな。
安全な場所か…適当に野営でも作ってくる」
団長は森へと向かったようです。
魔剣なんて存在するのか…。
団長が持ってたらリアル魔王になっちゃうね。
「有事の際は、驚く程頼りになる男ですね。有事の際は」
そうですね。
二度言った気持ち、分かります。宰相ガンバ。
「私はあの男を女神様のもとへと帰すぐらいなら、ここで朽ち果てても良いのですが」
おおっ、どこから湧いて出たんだ神官長。
…ずっと神様のところにでもいろよ。その方が平和だよ。
「…………………。アレン殿、祈りは終わったのですか?」
「ええ、今日の祈りは終わりました。……殿下はどうするんですか?」
「野生化しても困りますし、ずっと放っておくわけにも行きませんから、さっさと保護しましょう。……ジークフリートは殿下を見ても放置しそうですしね。」
放っておいても良いよ。
彼にとってはここが楽園だと思う。虫楽園的な。
「では、私達で殿下を探しつつ帰る方法を考える、ということですね?」
「ええ。とりあえず、私達も森へ行きましょうか」
宰相と神官長も森へと入って行きました。
その頃の団長は………。
[猪に似た魔物があらわれた!おいしそうだ!]
あれ?これって、RPGパロのじゃ…。
「………。ハルカがいないのでは、やる気がでないな。
この魔物は食えるのか?…とりあえず殺るか」
いつの間にかダンジョンに入って、哀れな魔物をイジメていたようだ。
だから、“ハルカ”って言い過ぎだってば。
あと、やる気は出さなくて良いよ。何か碌なことにならなさそうだし。
その頃の王子は………。
「おおっ!!こ、この虫は!?まだ食べたことがないヤツだっ!!!」
虫と戯れていた。
………“まだ食べたことがない”って、どこまで虫を食糧扱いしてるんだ。えっ、嗜好品なの?
そこに宰相と神官長が現れました。
「殿下、こんなところにいらしたんですね」
「…何をしているんです、…虫?………。
食糧はジークフリートが調達してくれるそうなので、殿下はじっとしていてください」
あっ、宰相が虫を見て嫌そうな顔をしている。
こんな虫王子を探さないといけないなんて、本当に“宰相”ってツライね。
「な、何!?ジークが……。
そうか、私は必要ないのか……。あっ、この虫を食べてみないか?」
どこまでも虫に拘るヤツだな。
何なの、アイデンティティなの?それ以外にキャラ付けないの?
「…食べません。………それに、殿下は不要ではありませんよ」
「殿下が居なくては帰れませんからね」
「っ!?そ、そうか!!そうだなっ、私も必要だよな!!では、身体に良さそうな虫でも捕ってくるかっ!!!」
2人共、フォローになってないよ。…まあ、仕方ないけど。
というか、何が“では”なんだ。脈絡がなさ過ぎるぞ、虫王子。
“身体に良い虫”ってどんな虫だよ。
「…っ!?待ちなさい、この虫王子!!」
ああ、宰相もさすがに我慢の限界だったようだ。
そんな虫王子、やっちゃえ!
「ぐ、ぐるしいぃ……。首が、首が絞まる……」
「大丈夫ですよ、絞まっても私が何とかしましょう」
“何とか”って………。
神官長、あなた意外と万能ですよね。
王子は宰相に首根っこを掴まれて、元の場所へ戻ることになりました。
元の場所へ集まった4人は………。
「な、何だ、この猪は!?……ジーク、この魔物を食べるつもりか?」
いや、虫を好んで食べるお前には言われたくないだろ。
虫は良くて魔物はダメとか、一体どんな味覚してるんだ。
「………。おい、そこの変態。これを食ってみろ」
…団長って基本的に王子のことは無視だよね。
ひょっとして、視界に入ってないの?
そして、神官長に毒見させるとか…。
「ハッ、なぜ私が。あなたが食べれば良いでしょう」
「………。ジークフリート、その魔物は珍しいですが、食べられますよ」
2人がくだらない言い合いを始める前に、宰相が止めに入ったようだ。
…うん、本当にご苦労様。
「そうか。ああ、神官長殿は食べないんだったか。……餓死でもしてしまえ」
「元より、あなたが獲って来たものを食す気はありません」
もうっ、仲悪いな!
言い合いのレベルが小学生並だ!!
「………はぁ。ジークフリート、帰る方法のことですが…」
もう宰相は溜め息しか出ないようだ。
「何っ!?帰る方法が見つかったのか!?」
「うるさいですよ、殿下。騒がないでください。
…魔法でここがどこか分かりましたので、転移魔法を使うことが可能になりました」
宰相、一体いつの間に…。
「なら、さっさとしろ」
ねぇ、あなたは命令口調でしか話せないの?
ホント無駄に偉そうなヤツだな。何でこんなのが人気(現在1位!?)なんだ。
(神官長が団長の言葉を聞き騒ぎましたが、時間がないので割愛します)
………本当にお疲れ様でした、宰相。
君はこんなヤツら相手によく頑張ったよ!!
[宰相と神官長が転移魔法を唱えた!4人は王宮に戻った!]
ルーラ!!って、あれ?
サバイバルのはずなのに、最後はRPGじゃん!!
何だコレ、メタか。
―――そうして、4人の無人島生活は幕を閉じた。
読んでも読まなくても良い蛇足。4人のサバイバルスキル。
王子:雑食で、何でも食べるお腹が強い子。手先はそこそこ器用だが、びっくりする程不運。
「………皆、私のことを無視し過ぎじゃないか?…地味だからか……」
団長:そこそこ何でもできる人。一応、騎士なので野営は得意。人任せなのに偉そう…。
「ハルカの出ない話には、俺を出すな」
宰相:知識だけはあるお坊ちゃん。不器用。よほど切羽詰まらない限り、虫など食べない。
「このメンバーだと、私にかかる負担が大き過ぎる気がします…」
神官長:変態のくせに意外と器用で何でもできる。実は料理とかも得意だし、虫も平気。
「騎士団長は置いてきた方が良かったのでは?」




