第三章 ~恋~
「花梨~?学校に遅れちゃうわよ」
誰?その声は、誰?
「早く学校に行きなさい。友達が待ってるぞ」
誰?あなたは…誰…?
懐かしいような温かい声。この声は!?
「お母さん!?お父さん!?」
まさか…?
「どうかしたの?花梨、まさか、お母さんを忘れたの?」
え~!?
ここはシェダルじゃないの!?
「お、花梨。風邪…大丈夫か?」
え?
「治ってホッとしたよぉ」
風邪?何の話?
「どうしたの、花梨。今日ちょっと変だよ?」
う…そうかな。
おかしいよ‼だって、戻ってきちゃったんだもん。
あの例の扉が開いたのかな?
帰れて嬉しいけど、エドガー達がちょっと心配…。
もう帰る時間か…
何でだかわからないけど、エドガーのことばかり考えちゃう。
「今日は結菜と美咲は先に帰るって」
そっか。ありがとう、茉希ちゃん。
「そういえば花梨、昨日のうちに何かあったか。今、悩んでるーって顔してるぞ~」
ギクッ…。
「何があった?」
えーと…
花梨はゆっくり息を吸って話し始めたが、孤島や国王たちについては一切ふれなかった。
…で、その男は、エドガーっていうんだけど、今、そのエドガーのことが心配で…頭から離れないの。
「へえ。昨日のうちにずいぶん色んなことがあったんだ。で、そのエドガーとやらと別れちゃって悲しいのか」
正直にいうとね…
「それが恋でなくて何なんだ」
!?
こ、恋!?
そ、そ、それって…
「花梨はそのエドガーを好きになっちゃったってことか」
!!??
「悩むなんて、珍しいよな。花梨が、悩むなんて」
茉希はつぶやくと、後ろにいる花梨に、振り返ってにこっと笑いかけた。
何時までも日は沈まない。けれど今日の日は優しい光を放っている。
「その恋、応援するぞ‼」
ありがとう、茉希ちゃん。
じゃあね。
…やっぱり家だ。
帰ってこれたのね…。
花梨は家の前で安堵の息を漏らす。
いつも通り、花梨はドアを開けた。
と、その瞬間。
「い…いたたたた…何!?」
あ、右手首が…あの誓いの烙印が…。
強烈な光で輝いている‼
何!?どういうこと!?
『烙印同士は強く結ばれていて片方に異変が起こると共鳴するものです』
片方に異変が起こると共鳴する…ってことは…
まさか、エドガー…!?
エドガー!?どうしたの!?どうなってるの!?
どうやったらあの国へいけるの?
――見つけた…カリンさん――
鈴の音のような声。誰!?
――私は前代王妃のウィルです。これからいうことを落ち着いて聞いてください。まずいっておきますが、こことシェダルの時間の速度は違います。シェダルのほうが速いので、もう、あなたがいなくなってからすでに三日経っています。あれから流行り病が流行り始めて…。だからあなたの烙印は光っているのです。早く助けてあげて……あなたにしか、救えないから――
ちょ、ウィルさん!?
あの国には、どうやって行くの!?
…………。
返事ナシ。
どうしよう。このままじゃ…
『行ってどうするの』
こんな疑問が脳裏に浮かぶ。つきまとって離れない。
でも…何も役に立たなくても、行きたい。何かできることがあるのなら、命も投げ出せるよ。
ウィルさん、教えて‼あの国への行きかたを‼
……。
どうしよう。今はウィルさんだけが、頼りなのに。
「今日も悩んでるのか。恋って大変なんだよなー」
「ずーっと悩んでるねぇ。花梨にしては珍しいよねぇ」
そ…うかな?茉希ちゃんもいってたけど。
「そうよ。何かあったら私達にいってね。必ず力になるよ」
ありがとう。またね。
…恋、か。恋なんてしたことないから、わからなかった。
その人のことで頭がいっぱいになる。…茉希ちゃんにいわれて初めて知ったよ…茉希大先輩だよ。
エドガーとは離れ離れだし…それにエドガーもちょっと危ない状況にいるみたいだし…心配しちゃうよ、すごく。
ぼーっとしてたら家の前まで来ちゃった…
「お邪魔してるよ★カリン」
……は!?
「この人、ちょっと道に迷ったんだって。っていうか花梨のお知り合い!?」
お母さん、勝手に人をいれてると、いずれだけど大変なことになるよ…。
「カリンと会ったことは…一回だけありますよ」
「まあ‼そうだったんですか」
…なんでユー…えーと、ユージーンがいるのよ…?
「覚えてくれたんだ!嬉しいなあ」
「じゃあお母さん、出掛けてくるわ」
お母さん、割り込まないで…
「行ってくるわ」
ハイハイ…
…で、だから、なんでいるの?
「そりゃ、おしゃべり…じゃ、ないんだよね」
はあ。
「エドガーが感染したんだ、病に」
え、あの、感染病に?え!?うそ!?
「よく知ってるなあ。その通りだよ。重症なんだけど」
それを伝えにきたの?
「でも僕はここに長居はできないんだ。だから早くカリンも…」
!?
「限界だ。僕はシェダルで長く育ってきたから、ここにいると体の時間が狂う…もっと伝えたいことがあるけど…もう帰るよ…」
ま、待って‼
…消えちゃった、というか帰っちゃった。
どうしよう、どうしよう…
誰か、行き方を教えて…。
「今日も悩んでるな。それほど想いが強いのか~」
うーん…ちょっと違うと思う…
とはいわず。
「昨日は怪しい人がいなくて良かったね」
まあそりゃでないでしょうね。
とはいえず。
「じゃあね、花梨」
え!?
もう下校なの!?
「もう授業はとっくに終わったよぉ」
えー…そっか。
「花梨って意外と天然なのね」
そうかも。
…と誤魔化して家に向かう。
うーん…どうしよう。
明日は学校がないから、じっくり考えられるな。
今日はもう、何だかだるい…




