第一章 ~出発~
リリリリリ…
チュンッ、チュンッチュンッ。
ドサッ。
いてててててて、また落ちちゃった。はあ…やっぱり夢だった。やっぱり腕についているわ。
そう、ブレスレットが。
「えぇ、花梨、今日は一人で帰るのぉ?」
ごめんね、今日、用事があって…
「昨日つけられていたみたいだが、大丈夫か?」
…だ、大丈夫だよ。たまたま、だよ。
「そう…気をつけてね。」
あー、また、誰もいないよ。
やだな…怖いな。早く帰ろう。
シャー…
な、何?今度は、何?
足が勝手に止まる。動かない…動かせない‼
一刻も早く逃げ出したいのに、足がすくんで動かない。
後ろから何か、来ている‼
ど、どうしよう。逃げられない。
ガッシャ―ン‼パリーン…
あ…クリスタルが…
「粉々に…」
どうしよう…どうしよう‼
ごめんなさい、お父さん…
その時、声が聞こえた…。
「こちらシリウス。ターゲット確保。確かにこの娘です。高校二年生の17歳です。栗色の柔らかい髪なんて、あの母親にそっくりです。目の色は父親によく似た若葉色でした。」
すると雑音混じりに別の声が聞こえた。
「あっそ」
「今から娘を連れて、そっちに向います」
あ…痛…
もう…なんなのこの人‼どうしよう。クリスタルはわれちゃうし…。
「エドガー様、自分の妻のことなんですから、少しは興味をもったらどうです?」
え…私…結婚しちゃうの?好きでもない人間(人と読む)と?やだな…っていうか意味わかんない‼そういえば…
…そっち…て、どこ?
「孤島シェダルだ。…これからあんたには、ちょいと来てもらうよ。あんたの両親の罪をあんたが償え。」
お父さんとお母さんは…罪を犯すような人じゃ、ない‼
「違うね。あんたの親は…」
シリウス、とやらは、それ以上は何もいわなかった。
黙って歩いていたら、突然、シリウスが指を鳴らした。
途端、地面がなくなった、いや、正確には消えた。
見ると、下は…緑があふれる孤島。透き通った海。
緑がないところには所狭しと家々やビルが建ち並んでいる。
って…もしかして…
「私、空から落ちているの!?」
「そうだけど?」
わあ…すごい…
緑があふれる中に、ひときわ目立つカラフルで豪華な宮殿。
まるで、おとぎ話に出てくるような景色が今、自分の前に広がっている。
「あのカラフルな宮殿は、シェダルを治める国王陛下がお住まいだ。あれはこうでそれはどうで…」
花梨の耳にはあの宮殿のこと以外は、全く入らない。
あの宮殿に入ってみたいなぁ…
そんな不可能な願いが、脳裏をかすった。
「あの宮殿には入れないのですか?」
すると今まで熱く語っていた彼は、話をぴたっとやめた。
「はぁ?何言ってんの。これからあそこに行くんだよ。…着いたぞ。足元に気をつけろ」
?…あ、あぁ‼やばっ。ふう、セーフ。転ぶところだったぁ…。
改めて見ると、大きい…豪華…。いくらかかったのかしら…?
地球上にこんな場所があったのかー。
「行くぞ」
え?どこに?
「目の前の建物」
ええ?あの!?
国王が住むとかいうところに!?
「とにかく、早く行くぞ‼」
えええー‼
「私は国王のエドワードだ。こちらは妻のエリーノだ。そいでもってこちらは王子のエドガーだ」
わ…何この人達。日本ではあり得ない服装だなぁ。
…あの人、エドガーっていったよね。瞳は、深い海色で肌は金髪に負けず劣らず白い。歩く時靡く綺麗な金髪。ブロンドっていうのはこういう髪のことなんだろうなあ。
「まあとにかく、今日はもう休んでいいよ。疲れただろう…えーと、カリン。斬新な名前だなあ。あの父親の娘のくせに」
何この…えーっと、国王?
帰っていいかしら!?
「帰れないよ、カリン。ここへの扉は必要以上に開かないのだよ」
何よシリウス‼絶対に帰るんだから‼
とはいえず…
「カリン、お前はエドガー様と結婚するんだぞ」
は?な…何の話?もう一度いってよ。
「だぁかぁらぁ、お前はエドガー様と結婚するんだぞ」
私が?えー!?嘘でしょ、シリウス!?
「そういうことだから」
ええー!?
はあ…疲れた。明日には結婚式があるから、早朝には帰らなきゃ…そうしないと政略結婚させられちゃう。帰りかた、帰りかた…わかんない‼あ、でも、ここに本がある。面倒だけど探そうっと。