ガンダム哲学 ビームを見てから避けられる理屈 或いはシリーズ最強キャラ決定
機動戦士ガンダム。
言わずとしれた、リアルロボットの草分け的存在だ。
だがしかし。
何がそんなに凄いのか。
それを理解できない人が多いのも確かだ。
何がそこまで凄いのか。
その病的なまでの、設定の拘りを。
ビームを中心に紹介しようと思う。
ちなみにガンダムの公式設定は映像作品なので、書籍独自の情報は考慮しない。
●ビーム兵器:そもそも何か
よくSFに登場するビームとは、そもそも何か。
狭義には「束になって真っ直ぐ進むもの」というのがその意味だ。
そういう性質を持ったもの全般が範疇にある。
レーザーもプラズマも反物質兵器も。
直進する線として描かれたなら、全てビームの一種だ。
しかし広義の意味では、荷電粒子砲・陽電子砲と考えるべきだ。
そして荷電粒子砲とは、とにかく加速され続けた粒子が。
最終的に光速近くになって射出されれば、例え粒子という小さなものでも。
相対性理論によって、破壊的な効果をもたらす、という兵器だ。
その凄まじい運動エネルギーは。
着弾した対象の、原子・分子の結合を破壊。
放射線を伴う爆発を起こす。
●ビーム兵器:クリアすべき課題と残る疑問
しかし、それでは、色々な疑問が生じる。
まず1つ。
ビームは理屈的に、粒子を加速させる為の、距離が絶対に必要になる。
粒子加速を行う施設は巨大だ。
粒子を加速させる為の、サーキットが必須だからだ。
しかも原子力発電所数基を必要とする程、電力をバカ食いする。
つまり、歩兵サイズはおろか、ロボットサイズ・戦艦サイズですら。
搭載を実現するだけの、小型化・実用化は困難だといえる。
そして更に1つ。
ビーム兵器が実現したら、戦闘という行為が発生する筈がない。
何せ、光速は秒速約30万kmだ。
ビーム兵器の弾速がその10%だったとしても、時速3万km。
撃たれた!と気付く前に、ソイツはもう死んでいる。
発射≒着弾なので、予測射撃する必要もなく、狙えば当たる。
発生する行為は戦闘ではなく、先手必勝の蹂躙となる筈だ。
最後に1つ。
ビーム兵器を実用できる電力があれば。
何百メガワット級を超える、超威力のレーザーが余裕で実現できる。
この規模のレーザーだと、照射し続けて対象を融解させるなんて、プロセスは要らない。
エアロゾル・スモークといった防御手段。
霧やガス等の環境的な悪条件を含めて。
軌道上のものを全て蒸発させる。
ビームより仕組みも簡単で高威力。
経済的・軍事的な合理性からいって。
レーザー兵器が主力でないのは相当不自然だ。
●回答:初代ガンダムが使うのは、一般的なSFのビームではなく別物
初代ガンダムの世界観・宇宙世紀は、ミノフスキー物理学という、架空の設定が根底にある。
この設定がよくできていて、諸問題はこれで解決される。
まずミノフスキー粒子を縮退させると、メガ粒子という状態に変化する。
ガンダム世界のビーム兵器とは、縮退寸前の粒子を閉じ込め。
発射時に指向性を持たせて、縮退させる事で実現する。
難しい言い方をしたが。
空気でパンパンに膨らんだ風船を、針で突いたら、その方向に空気が漏れる。
そういうイメージで構わない。
漏れ出る空気が、メガ粒子であり、ビームである訳だ。
●回答:初代ガンダムのビームは遅い
この設定の画期的な所は、銃撃戦が発生する合理的余地を残している事だ。
ビームが荷電粒子砲なら、その弾速は亜光速に及び、秒速3万kmとかになる。
こうなると回避行動が成立しないのは、先述のとおりだ。
しかしガンダムのビームは違う。
その発射モデルを風船に例えた通り、このビームは熱力学的運動に従う。
その弾速はせいぜい、秒速数十〜数百kmと見込まれる。
火薬式の実体弾は、現実の戦車砲が初速1.5km程度。
実体弾よりは速いが、荷電粒子砲と比べて、桁が1〜5は違う低速さとなる。
※ちなみにザク・マシンガン等の実体弾を宇宙で使用した時に、反動で吹っ飛んでいる様子がないので、無反動・低反動である可能性がある。反動が弱い=発射される弾にかかる力が弱い、となるので、より低速かもしれない
●回答:回避モデル
ガンダムが胴体のド真ん中を撃たれた時。
肩幅が10mあるなら、半分の5mを。
横に動ければ、回避できるとする。
そして回避時の速度には制限がある。
訓練された戦闘機パイロットが、装備込みで耐えられる、ギリギリが9G程度。
加速運動の方程式から、その加速度で5m動くのに必要な時間は何秒か。
s=(1/2)at^2 (s: 移動距離m、a:加速度、t: 時間(秒))から、
s=5
a=9.8✕9=88.2
で、約0.336秒。
また、人間がものを認識するのに0.1秒、反応して筋肉を動かすのに0.1秒。
併せて0.2秒の、回避運動を実行するまでのラグが存在する。
つまりこの0.54秒が、回避に最低必要な時間だ。
これらの距離・時間・速さが分かれば。
小学校の公式で、それぞれの値を当てはめられるし。
これを計算したら、回避の間に合わない距離がわかる様になる。
実体弾の想定である、秒速2kmなら。
1.08km以近の距離は、狙いが正確なら必中。
ビームの想定である、秒速100kmなら。
なんと54km以近の距離が必中となる。
ビーム兵器の優位性は、威力のみならず。
命中精度にも表れているのがわかる。
しかしコレでは、「作中のビームは純粋な荷電粒子砲ではないので、回避が成立する」には程遠い様に見える。
●回答:マニューバとニュータイプ
しかし上記は、完全な静止状態の前提だ。
実戦で接敵状態なら、機体はマニューバをとる。
前進中、右に方向転換するか、左に方向転換するか。
加速するか、減速するか。
それによって、N秒後の未来位置は変わる。
これにプラスして、宇宙なら上下方向まで加わるので。
着弾する時の位置を、正確に予測するのは困難だ。
このズレの分、能動的回避に必要な距離は縮まる。
もし5m以上ズレれば、回避せずとも弾は外れる。
4mのズレなら、回避に必要なのは0.35秒で、距離35km以近が必中。
2mのズレでも、回避に必要なのは0.46秒で、距離46km以近が必中。
確殺距離が一気に8〜19kmも減る。
更にニュータイプという、特別なパイロットの存在が、時間の制限を覆す。
反応に必要なタイムラグ0.2秒が縮む。
もし反応が0.1秒なら、必中距離は43.6km。
そして、移動に必要な時間0.54秒。
この時間より、長い未来を予知できるなら。
完全な接射だとしても、理屈上は完全回避が可能となる。
僅か1秒に満たない、些細な未来予知は。
戦闘に絶対的な優位をもたらす。
これがニュータイプ音が鳴った時の効力だ。
●回答:高出力レーザーを実現できない
ビームが撃てるなら、レーザーが撃てる。
コレは純粋な荷電粒子砲ならば、の理屈だ。
先述の通り、ガンダム世界のビームは、代用技術でしかない。
電力は「膨らんだ風船を針で刺す」時にしか使われていない。
ガンダム本体にも、核融合炉という動力があるが。
この出力は明確に設定されており、1300kW強だとある。
機体全てを賄う電力の中から、無理なく捻出できる量として。
全体の1/4程度の、300kWをレーザーに転用した場合。
火力が全く足りない事になる。
まず、装甲を一瞬で蒸発させられない。
照射させながら融解させていくプロセスが必要で。
数秒〜数十秒程度に渡り、命中箇所をピンポイントで、狙い続ける必要がある。
かなり非現実的だ。
そして防御手段・環境的要因を突破できない。
特にガンダム世界には空気中に、ミノフスキー粒子が分布している。
コレにレーザーが当たると、熱レンズ効果が発生。
空気中の対象がプラズマガス化してしまい、レーザー光が四散してしまう。
この規模のレーザーだと、兵器として実用できない。
……いかがだっただろうか。
ミノフスキー粒子という設定1つで、SFに発生する矛盾を。
よく回避してある事が分かるだろう。
これだけの執拗な設定が、当時にされていたのは、かなりの驚くべき事だ。
この設定がないと、どういう事が起こるのか。
それも併せて見ていこう。
●種:純粋なビームの実用
種シリーズことコズミック・イラの世界では。
ビームライフルは荷電粒子砲だし。
ローエングリンは陽電子砲だ。
夢の本来的な意味のビーム兵器が実現した。
……実現してしまった。
●種:亜光速・必殺の攻撃が飛び交う戦場
つまり、その弾速は亜光速そのもの。
先述の通り、光速は秒速約30万km。
その1割でも秒速3万km。
なんと16080km以近が必中圏内。
地球の直径が約1.2万kmなので遥かに長い。
●種:必中・必殺を凌駕する領域
そんな必殺・必中が必然の攻撃を。
能動的に回避するキラやアスラン達。
これはニュータイプのような、反応速度・未来予知では片付かない。
これだけの先進的技術力で、測定技術が未熟なんてあり得ない。
正確な射撃が可能なのは確実だ。
キラ達が何秒先を予知して、回避行動をとったところで。
この弾速と照準精度なら、機体のド真ん中を狙って撃てば当たる筈だ。
なのに回避が成り立つとしたら、もう単純な話。
ただの力技だ。
もし10km先から撃たれたとして。
回避に掛けられる時間は、 反応時間が完全にノータイムだとしても、僅か0.00033秒。
再び加速度の方程式、s=(1/2)at^2 (s: 移動距離m、a:加速度、t: 時間(秒))から、
s=5
t=0.00033
その瞬間的回避に、掛かる加速力は937万Gにも及ぶ。
これがどれ程恐ろしい数値か。
深海ですら300〜500G。
この時点で、スクラップを圧搾する、プレス機より遥かに強い圧力だ。
つまり2人は、プレス機で潰されても死なない。
むしろそれで、体が無事なら。
必死に避けたビームが、生身で直撃しても死なない。
というか、核爆発の中心にいても死なない。
核爆発の圧力は、数万〜数十万気圧。
9000Gの圧力の時点で、数百万気圧。
そして核爆発の、数千万度の熱すら問題ない。
熱で溶けるとか、ビームで破壊されるのは。
そのエネルギーに負けて、結合が破壊されたという現象だからだ。
ここまで強固に結合してるなら、その程度の熱に負けない。
実際ストライクは、イージスの自爆を食らっても、普通に原型留めていた。
逆にイージスが、核爆発で消滅した事が謎といえる。
正直、素でこれだけ硬いので。
フェイズシフト装甲なんて、まるで無駄としか言いようがない。
※VPS装甲でも回避時にバラバラになってない=通電の有無に関係なく硬い
●種:呼吸・血液・対消滅の超越
こんな奴を殺す手段があるのか。
酸素のない空間に放り込めば、流石に死ぬだろうか。
正直なところ、酸素が本当に必要なのかも疑問だ。
そもそも呼吸を行うのは、エネルギーを生み出す為だ。
そして酸素=エネルギーを運ぶ為に、血液は体中を流れる。
しかし酸素から得られるのは、2000kcal=100W程度。
彼らの超人的生体活動に必要なのは、原子力発電所規模の出力だ。
というか逆に血液が流れているなら、その加速度だと一瞬で、脳死する筈なのでおかしい。
彼らには血が流れず、未知の動力で活動し、呼吸すら必要ない事になる。
そしてこの事を裏付ける描写がある。
不可能を可能にする男こと、ムウ・ラ・フラガだ。
種のラストでアークエンジェルを、陽電子砲から庇って機体が消滅。
後にはヘルメットだけが残っていた。
なのに種死では続投している。
真空に生身を晒せば、肺は膨張し、血液は沸騰し、僅か数十秒で死ぬ筈だ。
しかし記憶喪失以外の、後遺症もないムウの存在。
それは、呼吸と血液が不要な超人である証左だ。
というか、もっと不思議な事がある。
何故、不可能を可能にする男なのか。
それは陽電子砲が直撃しても生存しているからだ。
陽電子砲といえば、反物質兵器で。
あらゆる物質が持つマイナスの電子を、陽電子と対消滅させ。
全てをエネルギーへと変えてしまう、絶対的兵器だ。
これには1000万Gに耐える肉体だろうが、耐えられない筈だ。
しかしムウは耐える。それも2度も。
2回目はアカツキのヤタノカガミがあるからだって?
ヤタノカガミの原理は反射だが、反射してるという事は接触してる。
接触したなら、消滅するのが本来の道理だ。
原理不明だが、とにかく反物質兵器が効かない。
●種:シリーズ最強パイロット
機体を低いスペックで合わせれば、議論の予知もあるが。
ガンダムシリーズ最強パイロットは、見事ムウ・ラ・フラガに決定だ。
亜光速戦闘をこなしたのは他のキャラも同じだが、反物質兵器を無効化した実績は、ムウにしかない。
次点はキラ・アスラン・シンといった、亜光速戦闘のエキスパート達。
CEのキャラの中でも、ネームドキャラと交戦しながらも、最後まで生存したキャラをノミネートした。
反物質の無効化が肉体の仕組みによるものなら、彼らも同様かもしれないが、確認できたのがムウのみの為、評価を分けた形だ。
ムウ達は圧倒的反応速度で、相手の全行動に対して。
後出しジャンケンによる、最適解の対応が取れる。
そして亜光速の必中必殺ビームがあるので、先手必勝・後の先を盤石にする。
更に機体込みで議論した場合、単純に乗機の剛性が違いすぎる。
亜光速のビームを避けて、機体がバラバラにならないなら。
先述の通りそもそも、ビームを避ける必要がない。
歴代ニュータイプ達は、亜光速レベルの戦いに、肉体がついて行けない。
ムウ達にとって他作品の戦いは、スロー過ぎて児戯に等しい。
予知されて回避を事前にされても、回避込みで狙撃して終わる。
もし流派東方不敗と、生身で渡り合った場合。
一応本人達の運動能力は、優れているとはいえ人間の範疇なので。
生身でデスアーミーを撃破した、東方先生には勝てないだろうが。
しかし東方先生も決定打がない、千日手となる。
機体込みだとムウ達圧勝。
設定上最強のヒゲも、スペックは亜光速に達している可能性はある。
が、ロランが加速度に耐えられないので、宝の持ち腐れ。
月光蝶を回避不能な量まで散布する前に、先手ビームで勝てる。
一応、Gセルフのフォトントーピードに当たれば死ぬ(筈だ)が。
Gセルフ本体が亜光速に追随できないので、撃たれれば必ず死ぬ。
なので亜光速の狙撃と回避で、キラが常に相打ち以上を取れる。
コンプレッションシールドは、荷電粒子砲も防げるが常時展開が不可能。
人間離れした反応速度で、解除直後に狙撃すればいい。
ユニコーンの、その時不思議な事が起こった、で。
なんやかんや勝ったをやるにも、普通に亜光速ビームの先手で決着が着くだろう。
Iフィールド・ビームバリア搭載のシールドも、ビームの原理が違う以上貫通されるし。
ダブルオーなら、と思うかもしれないが、量子化には、
・刹那が攻撃を事前に察知=不意打ちだと量子化できない
・刹那が知っていれば回避できたのか=回避不能の範囲攻撃・必中攻撃は量子化できる可能性自体が存在しない
という条件がある。
キラは刹那の行動を見てから撃てるので、必中攻撃化して、量子化できる余地がない。
精神的に脆いので、ジョナサン・グレーンなら煽りで、キラ達にはワンチャン勝てるかもしれない。
……ガンダムキャラじゃないけど。
●その他:ビームの扱い
宇宙世紀作品とXとターンエーは、先述のミノフスキー物理学系の代替技術。
もし他の作品で、明確に荷電粒子砲であると分かる作品があれば、ムウ達と並び立つ可能性がある。
Gのビームはナノマシンによる、物理的な技術の総称だったりする。
ボルトがグラビトンハンマーをビームで牽引して振り回したり。
ゴッドが本戦出場に向けて、ビームロープの反動でネオホンコンに飛んだり。
これができるのは純粋物理だからだ。
Wはプラズマなので、比較的低速。
00はGN粒子技術で、部分的には荷電粒子砲なのだが。
どうもMS戦では、圧縮して撃つ必要があり、低速化するらしい。
AGEはドッズ技術という、フォトンを螺旋回転させる方式。
これも方式的に、熱力学の範疇らしく、低速っぽい。
水星はパーメットを利用して、プラズマ化させているので、比較的低速。
鉄血は純粋な荷電粒子砲だ。
しかしビームを完全防御する装甲が実用されている。
この堅牢な装甲のせいで、一周回って鈍器で殴り合って、中の人間を圧死させる戦闘をしている。
という事で、ビームは通じないが、亜光速戦闘に対応できてないのは明白。
逆にメイスでいくら殴られたところで、亜光速組からすれば、そよ風程度にもならない。
よって戦闘開始と同時にバルバトスを、羽交い締めにして亜光速加速に巻き込めば、三日月ごと殺せる。
ちなみに、937万Gの加速=3.2秒後に光速に達する。
つまり彼らは相対性理論によって、質量が無限大となり、ブラックホール化する。
そうならない以上、彼らは意志によって自発的に、相転移できるという事になる。
考えれば考える程なんでもありになっていき、無敵の存在になっていく。
……この問題を予見し、ミノフスキー粒子という設定を設けた。
昭和時代の作品でありながら初代ガンダムは、丁寧に作りこまれている訳だ。




