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忍び寄る足音

「さあ、授業を始めるぞお」


葉月先生の声に皆が反応した。

寮生活2日目。普通に今のところ楽しい。


「今日は座学だよ。じゃあ、葵からみんなに」


これ回して〜といくつかの分厚い本を葵さんに手渡す。


「センセ、重い…」


うぐぐぐ、と重そうなのがよく伝わる。

それを桜さんが回収して皆に手渡していた。


「はい、少年」


「あ、はい…って、え!?」


なんだこの本、僕の権能の専用取扱商品!?


「あーそれはね、急いで昨日刷ったから新品だよ。大丈夫」


いや、そういう問題ではなくて…。


「あの、1人1人違う本なんすか」


え?と桜さん。


「じゃなきゃ意味もなにもないでしょ。1人1人学びたいものや課題は違うんだから。」


はあ、と僕。そんなものなのか…?


「じゃあここで昨日のおさらいだね〜。少年クンを除く全員、お手本としてヨロシク」


はい、と陽菜さんが手を挙げた。


「わたしの権能、月の権能は古来より伝わる日本の伝統、刀が用いられます。月と太陽の権能は紙一重、当時の術者も兄弟だったようです。また、この権能には刀の型が用いられ、その種類は__」


ガラ、と扉が開く。


「失礼します。一限だけでも授業、良いでしょうか」


宙さんだった。あれ、なんか眩しいオーラが放たれている気がする。

というか、ここの人たち皆人気者で一般人が通過するには重たすぎるんだよな……。陽菜さんもモテクイーンとか言われてるらしいし。


「ああ宙、相変わらず君は忙しい人だね。お疲れ様、どうぞ座りなさい」


「宙さんおはようございます」


「宙…!おはよう!」


みんなにおはよう、と挨拶をして宙さんは座った。


「折角だから宙、君が自分の権能の説明をするかい?いいかな陽菜」


「構いません」


陽菜さんはにこにこしながら宙さんに順を譲る。

宙さんが立ち上がった。


「僕の権能は……簡略化すると相手の権能の無効化だ。発動条件は色々あるけれど、僕の場合は相手が権能を使うタイミングで自傷をすることだね。上手く当たると自傷が効かず、僕の権能が届く」


とてつもなく難しい条件な気がするのだが……。気の所為だろうか。


「そう、宙の権能はいつだって命懸けだ。だから厳しい稽古がつけられ、上手く使える宙はあちこち引っ張りだこになる」


なるほど…。やっぱり難しいのか。

引っ張りだこか。だから皆、彼のことを敬っているのかな。


「宙の権能は唯一エデオの仲間たちにもない、特殊な権能だがその特殊さ故採用された。」


そんなに特殊なのか…。やっぱりすごいな。


「そんなことよりさ、宙も来たことだし遊ばない?人生ゲームあるんだよね!」


お、面白そう。


「いいですよ。負け試合をするつもりはさらさらないですからね、よろしくお願いします」


「陽菜のためなら勝つ」


「え、あたしたちに勝とうとか上等じゃん、半殺しにしよ」


「こらこら、葵」


桜さんがいつもより楽しげに人生ゲームのセッティングを始めた。

ああ、なんだかんだこの生活、悪くないな。





「美しき皆様」


どよめく周囲の声を踏みにじり、私は息をつく。

今日もまた、何かを殺めて生きていく。

たとえば、この前のあの少年のような__。


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