寮内紹介
「さあ、ここが食堂だよ!」
「ええっ…とーーー…」
なんと言うのだろう、想像と違った。
もっとがやがやしているのかと思ったら、いるのは2人。蓮さんと陽菜さん。
「あ、こんにちは。悠さん、汗をかいていますよ。特訓をしっかり受けたんですね。素晴らしいです」
私、努力出来る人は好きですよ、と陽菜さんが僕にほほ笑みかける。努力、か。そんなに得意では無いな。
「陽菜の方がすごい。予習復習を怠らないだけでなくその後も自主勉ができてるなんて、努力の塊だ」
「だから蓮くんそれやめてってば!」
自慢げ、なのか…?蓮さんはそう言ってジュースを飲むが、陽菜さんに揺さぶられていて飲みにくそうだった。楽しそうでなによりである。
「じゃあ一言もらったところで次のところに行こっか」
桜さんがぱちり、とウインクをした。
「ここが研究室兼図書室だよ!」
「その2つって一緒にしていいんだ…」
桜さんがはあ、と息をついた。
「そうなんだよねえ、せんせーがそうしたんだけど、せんせーってば化学は下手っぴだから正直ねえ…修理費が絶えない」
「おい、きこえてるぞお桜」
へにゃへにゃ、と溶けかけて説明する桜さんにおいおい、と先生…葉月先生が出てきた。
それと、あの猫耳の子…。猫耳、本物っぽいんだよなあ…。
猫耳の子はゲーム機を手に取りながら呟く。
「あたしはそういう研究熱心なとこはいいと思うよ。ただ部屋燃やすのどうにかして。誰の魔法で鎮火してると思ってるの」
「いや〜だからね葵、水かけてくれるのはありがたいんだけどバケツとかで鎮火しようねこれからは、そこら辺一帯に魔法かけてバーンじゃその周辺の道具や本もおじゃんなのよ」
「……手っ取り早いからいいもん」
葉月先生の指摘にすっかり葵さんは拗ねてしまった。
フードに顔と耳を隠す。
しっぽまでふにゃりと垂れ下がっていた。
「あはは…じゃあわたしはこの辺で〜!」
桜さんが逃げるようにささ、と僕の手を掴んだ。
「少年、話したいことあるから行こう」と、僕に囁く。大方ここにいずらくなったことが原因な気はするのだけれど…。
「さて、少年、お話の時間だ」
あ、お話ってほんとにあったんだ。あそこを抜け出す嘘だとばかり。
なんだか綺麗な部屋に通された。ベットがあるけど、他の人の部屋とかじゃないといいな…。桜さんならやりそう…。
「ここはある権能を集めようという信念から出来ている」
「信念…?」
そうだ、と頷き真面目な顔になる桜さん。
「数百年前に大災害を収めた偉大な救世主かつ魔法使い、エデオとその仲間たち。彼らはそれぞれ使う権能が特殊だった。」
「特殊な権能…」
「能力には被りが多いんだ。わたしが前出した閃光の魔法とかも権能の場合は多い。彼らが使った魔法は特殊、また能力値が高いゆえ、上級権能と呼ばれている」
権能にそんな種類があるなんて。僕は全然知らなかった。当たり前か。
「ここはその上級権能を持つ人間だけを集めた寮。考査はわたしがしている」
桜さんってやっぱ偉い人なんだな…。
「例えば陽菜ちゃんが使うのは月の魔法。まだ権能を現してはいないがお姉ちゃんの使う権能が月なためほぼ確定で月だと思っていいだろう。仲間たちの中には月と、また太陽を操る人間もいたらしい」
だからあの子は月のネックレスを…。
納得である。
「隣にいた蓮くんは魔術ではなく召喚術を主に使う。契約している悪魔もいるようだ。女の子でね、愛らしいピンク髪のツインテールだよ」
悪魔…見なかった気がするけれど、隠れていたりしたのだろうか。
「せんせーが使うのは鏡の能力。どうやらあまり目だった使いどころがあった訳ではなく、その切れる頭で俊敏に味方の手の届かない部分の手助け、カウンターをしていたらしい。せんせーはああ見えて頭がいいからね。それで採用された」
頭がいい…?本当だろうか。
見かけにはよらない人間、という事なのか。
「せんせーの後ろにいた葵ちゃんは睦月葵ね。水の権能を持つ。水の権能を持つものは多いが、彼女は水の女神に愛されたかのように水だけはいくらでも生成できるため選ばれた」
水だけはいくらでも…。さっきの話からしても、彼女は図書室一帯にでも水をかけたようにすら思えてしまう。いやそれはやりすぎか。
「それから治癒の権能、わたし。一色桜。エデオの権能といっしょ。」
「え!?」
まあまあ、落ち着いて聞いて、と桜さん。
エデオと一緒…?
「治癒の能力ならまっかせて!寿命以外での死亡は全てなくせるよ。ここ数年魔法世界には死亡者がいない。今は民間人も救おうとしているところだ」
寿命以外…。すごい人だ……!魔法世界に死亡者が出ないのも納得だな。
「そして最後、少年」
「えっ僕!?」
こくこく、と頷く。
僕の権能…?感情の権能のことか…?
「感情の権能もまたエデオの持つ権能。エデオが扱うのは主にその2種類だ。喜怒哀楽を中心に色んな感情を操り権能として消化したとか」
「っえ…!?!?ぼ、僕の権能が!?」
「そうだよ、満戸悠くん、君の権能」
にこり、と笑ってこちらを見た。
ぼ、僕が…?いや、そんなわけ…!
「期待してるよ、少年」
気付けばこつこつと帰り始めこちらに後ろ向きでひらひらと手を振っていた。
「部屋はそのまま使っていいよ。少年の部屋だから」
「えっこれ僕の部屋!?」
この綺麗な部屋僕のものだったの!?
ああもう、理解が追いつかない!




