権能
「そういえば桜さん」
「んー?どしたの少年」
さっきまでの愛らしかった桜さんではなく、おちゃらけて底の見えない桜さんだ。
「治癒、って言いましたか?僕の怪我ももしかしてそれで治ったんですか?でも権能って…」
「あー、そうだよね」
一つ一つ説明するかー!と伸びをする桜さん。
「まずは、うん。この世界には権能と呼ばれる特殊な力がある」
はあ、権能。なんですかそれ。
「少年はその権能の覚醒途上だった。故に死の魔女の人達に目をつけられ、藍ちゃんは人質にとられたってわけ。あ、死亡は学園側が彼女を後で匿うためについた嘘だよ」
「つまり_____僕のせいで、藍は誘拐された」
ぐにゃり、と口を歪ませて桜さんは答える。
「そう落ち込まないで。よくある事だよ。その度にわたしたちがなんとかしてきてるし、大丈夫」
そう、ですか…。と元気がないまま俯く。
「あーーーー……うん、わたしの権能の話でもしよっかなあ」
そう言って人差し指を立てる。
ふん、と得意げになっていた。
「わたしの権能は治癒。さらにわたしはエネルギーの回りがいいから何人でも死人蘇生できちゃう。ここ数年間死人があまり多くないのはわたしのおかげでもあるんだよ」
治癒。蘇生。………蘇生!?!?
「死んだ人間が生き返るってことですか…!?」
わぁ食い付きがすごいと桜さんはぼやく。
「まあでも蘇生なんて本当は禁忌中の禁忌だ。できるだけ生きてるうちに助けるようにはしているよ」
禁忌を犯せるほどの力…。考えると少し恐ろしい。
「だからね、わたしはできるだけ平等にみんなが生きれるように、今日も願うんだ」
平和を願う気持ち…か。実行力のある人が言うとやはり説得力が違うな。
「だから、みんなが幸せに今日を生きれるよう尽力するのがわたしの正義」
正義…か。正義って普通自分のためにあるものなんじゃないのか…?他人任せの正義なんてありなのだろうか。
「少年、君もいつかそういう自分の正義がみつかるといいね」
さあ、と桜色の髪がなびいて桜さんがにっこりと笑う。
この人の笑顔、暖かいな。
「少年さ、このまま家出しない?寮紹介してあげる」
…………この人は僕の心が読めるのだろうか。
実を言うとうちの親はかなり前に離婚しててそのまま父に引き取られたもののほとんど帰ってくることは無い。
「是非」
またなにかでお返しでもできたらいいな。




