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直進


「夜お姉ちゃんとお話がしたいわけか」


いつものニコニコとした笑みで葉月先生は言う。

葉月先生はしょうがないなあと言ってぐっと伸びをした。

徐に携帯を取り出す。トーク画面から通話を掛けますか?の確認表示にはいを押した。


「久しぶりーお嬢さん!妹ちゃんが呼んで…うるさいなあそんな大声でお嬢さん呼び否定しなくても聞こえるわ、やめる気はないけど。…うっせーこっちで何とかしますーはいじゃあ要件は伝えたんでさよならー」


はあ、とため息をついて葉月先生はこちらを見る。


「まあどうであれ用意は出来たよ。行ってらっしゃい陽菜ちゃん」


「はい…!」


葉月先生はお姉ちゃんと古くからの友人だ。

他にも可愛らしい「舞姫」のお姉さんと「悪魔の末裔」のお兄さんがいて、よく面倒を見て貰っていた。お姉さんは死んじゃったしお兄さんは消息不明になってしまったけど…。





「やっぱり月下剣術戦を受ける?」


姉は眉を顰める。

柚月家のリビングにはピリピリとした空気が漂っていた。

紅茶に少し口をつけてふう、とため息をつく。


「言わなかったかしら?月下なんて無茶よ。貴方に到底できっこない」


「できるできないではなく、絶対にやり切ってみせます」


「…」


姉は苛苛としているのかギュッと目を閉じている。


「記念受験は許されないのよ?確実に受かる気はあるの?」


「はい。絶対に月の能力を顕現させてみせます。顕現できなくても…全て力ずくで突破します」


姉がはあ、と盛大にため息をついた。

…やはり、駄目なのだろうか。駄目と言われても受けるつもりだが、許可があるに越したことはない。


「…分かったわ。でも貴方確か絵画コンクールも受ける気なのでしょう?両立させて失敗したなんて絶対に言わないわよね?」


「はい。絶対に、です」


姉の顔つきが苛立ちから真剣に変わる。

紅茶を1口啜り、顔をこちらに向けた。

カシャリ、と僅かに食器の音がする。


「月下はね、後継者の登竜門よ。そう、たかが登竜門なの。その先は更に強い期待と洗練された剣術、多忙なスケジュールを要求される」


姉はぽつぽつと話し始めてくれた。嬉しい…!私、お姉ちゃんに認められたんだ!


「月下自体の説明もしていなかったわね。まず剣を夜空に捧げ、形が変わって光を纏ったことを確認したら強固になった動くかかし達がしてくる攻撃を避け、なぎ払って階段をひたすら登るだけよ。最後に月の手前に剣を置くの。そして試練は終了」


姉は淡々と説明をする。

今の姉からしたらその程度屁でもないのだろう。大きな実力の差を感じる。


「まあとりあえずは練習を重ねながら絵画コンクールを優先しなさい。桜に勝てるといいわね」


紅茶を飲み干した姉が立ち上がり、カップを片付けにキッチンに向かう。

私はありがとうございます!と声を上げて家を出た。





「蓮くん蓮くん!お姉ちゃんから許可貰えたよ!」


「ああ、陽菜ならできると思っていた。すごいな」


私はあまりの嬉しさににこにこした。

クッキーとココアでも作ろうか。ああでもそんなことをしている暇があったら練習を…!


「陽菜」


蓮くんに呼び止められる。


「無理はしすぎないように、だ。思い詰めてしまった時はすぐに俺を頼れ」


蓮くんが優しい表情で言う。

無理をしているわけじゃないし、思い詰めてもないのに。蓮くんは心配性だなあ。


「ねえ蓮くんどう思う?桜さんに言われたことの話。青い林檎なんて伝わるかも分からないし四角い林檎なんてもう林檎じゃないでしょう?ペットボトルの質感を布にして描いてみたんだけどなんか違うし…」


「ああ」


なんて事ない、と言った顔の蓮くんが口を開く。


「陽菜にとって特別なものって何だ?」


大切なもの?

ぱっと思いついたのは髪の毛をしばっているリボンだった。

蓮くんに貰ったそのリボンを、出会った日から今日まで毎日付けているんだ。

私は綺麗に整えた三つ編みのハーフアップを束ねているリボンをそっと触る。


「このリボンとか…あ」


そこまで言ってすごく恥ずかしい発言をした自覚が湧いてきた。

これじゃあまるで、蓮くんにもらったリボンが大切みたいじゃない…!

蓮くんはにこにこと満面の笑みだ。


「嬉しいな」


「蓮くんっ…!」


私は真っ赤になりながら蓮くんに圧をかける。

蓮くんはそっと首を振った。


「陽菜の特別を知りたいだけだったんだ、すまない。それが特別ならそれの見え方は普通の人とは違うのではないか、と思ってな」


「普通の人と…」


確かにすごく、大切に思える。もう古いものだからほつれてもいるのに新品のように輝いている。


「ありがとう蓮くん!この考え方、大切にする!」

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