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その魔法学校で暮らす終末装置は救いたい  作者: くずきり
底章 厭になる程暑い夏
15/23

お呪い

「ああ、桜。探したよ」


「宙…?」


どこか硬い表情をした宙。

…嫌な予感がする。


「ねえ桜。君のお母さんのことだけど__僕がなんとかするから、桜は下がっててほしいんだ」


「…なんで?」


宙は言いにくそうに口を開いた。


「だって、君のお母さんは指名手配犯だろ?あそこまでの重度なら数年ぶりの死刑となるはずだ。取り押さえなんて生ぬるいことじゃ__」


「…わけない」


宙は顔をしかめる。


「桜」


「そんなわけないって言ったの!対話すればわかることだってきっとある!だから、だからお母さんは…」


「わかった」


ダンっと音が響いた。わたしの真横に剣が突き刺さる。


「次は…分かってるよね?」


「っ…!」


わたしは死に物狂いでその場を去った。


はやく、早くお母さんのとこにいかなくちゃ。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





「貴方の実母は三毛1家の猟奇殺人容疑をかけられています。ですが、10割の確率で実母が犯人でしょう。なんてったって三毛1家は貴方の父親を殺害した__」



今最も魔法界で忌み嫌われていること。それは精神への攻撃。

肉体的な損傷はわたしがいるからいくらでも直せるが、精神は傷ついたまま戻らない。

だから、お母さんのした事は重度も重度な犯罪。そんな犯罪を犯したお母さんは、きっと_。


三毛一家はわたしの治療を拒んだ。故に彼らは、死んだ。そこも大きすぎる損失だったのだろう。数年ぶりの死刑、というのも納得…である。



走った。血が出ているけれどそんなの関係ない。今は治療なんてどうだっていい。早く、早くお母さんを。


お母さん。赤子の頃はよくお守りをしてくれて、わたしを誰より可愛がってくれて。

そんな天国のような生活は、いつの間にか終わってしまった。

お父さんが死んでからだっけ。それとも宙と出会ってからだっけ。


お母さんは思う存分わたしを痛めつけた。いつからか、それはだんだん悪化して行った。

でも、どれだけ体が辛くたって治癒してしまえば関係ない。そうやって傷つく意味も痛みも忘れてしまったわたしは、正に化け物のようなもので。



視界に綺麗な赫が映る。

ああ、ああ、ああ、お母さんだ。

どうしよう、どうしようどうしようどうしよう!

こんな時、お母さんならどんな顔をするの。わたし、わたしなにもわからないよ…。


「あら、桜」


いつもの不気味な笑みだった。

お母さんの手を掴む。そのまま思い切り壁に叩きつけた。


「投降してください。投降さえしてくだされば、私は貴方を打ちません」


お母さんに覆いかぶさり、そう言葉を発する。

そう、わたしが望むのは投降。お母さんだって、わたしが助けてきた沢山の人間のように更生できる。きっと。だから、わたしは___。


気付けばわたしは泣いていた。醜く顔を歪めて。苦しそうに、悲しそうに。


「桜」





あいしてる。





思わず目を見開いた。

わたしだって。わたしだって愛してるよお母さん。大好きだよお母さん。ねえ、なんで猟奇殺人なんてしたの。そんなことしなければお母さんは、罰を受けずに済んだのに。なのに…。

ぐす、ぐす、とすすり泣く声が聞こえる。誰かと思えば自分だった。


「おかあ…さん…」






その時だった。


ヒュンと音がした。その後、グチョァ…とグロテスクな音が鳴る。





「……………は?」


「大丈夫、桜。君は何も見なくていい。ただ目を閉じて、じっとしていて」


目の前には、お母さんの…、肉塊?

どういうこと?どうしてどうしてどうしてどうしてどうし、て、


まさか、宙が…?

あ、そんなの、


違う。絶対にそうじゃない。


そうだよね?ねえ、そうって言って!



「大丈夫、殺したのは僕だ。桜じゃない」


「────あ、あああ、あ、ああ」


効かない。治癒が何も効かない!


宙の手が邪魔で、上手く、できない…!


宙が権能を使って権能を無効化させているんだ。その証拠に今だって自傷しようとしてる、どうして!


赫い眼の彼女を思い出す。それもかつて、わたしが救えなかった、


大丈夫。桜は悪くない。


呪いのようにわたしに響いていた。

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