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番外編 ドキドキのバレンタイン!?

「お菓子を食べて欲しい?」


はい、と真面目な様子の陽菜ちゃん。

その手には料理の教本があった。


「実は私、その、…お菓子作るの下手で!でももうすぐバレンタインだから…」


「それで味見して欲しいって訳だね?」


陽菜ちゃんがこくりと頷く。

バレンタインと言えば桜もチョコくれるかなあ…去年はマシュマロだったなあ…今年はなんだろう…ああ…桜…桜…。


「先輩、顔つきが気持ち悪いです」


「ああ、ごめんごめん」


気を取り直して陽菜ちゃんの話を聞く。


「そもそも!バレンタインって何あげればいいんですか!?」


蓮くんが何かの突然変異でチョコが食べれなくなる可能性もあるし、かといってマシュマロをあげると嫌いって意味…?って思われちゃう!クッキーはありきたりだし、金平糖は分かりやすすぎるし…と言葉をつらつら並べる。

だんだんと顔がひきつり、目が死んでいく陽菜ちゃん。

…ん?


「ねえ陽菜ちゃん、なんでマシュマロをあげると嫌いだって思われる可能性があるの?」


えっ…という顔で陽菜ちゃんがこちらを向く。


「知らないんですか?バレンタインにマシュマロを送る意味。嫌い、なんですよ」


「…………ェ」


嫌い。嫌い…嫌い…?


「ど、どどどどどうじよう…桜に嫌われた…?嫌い…嫌い…」


急になんですか、怖い人ですね、と呟く陽菜ちゃん。


「あっ…あー…大丈夫じゃないですか?桜さんそこら辺疎そうですし」


「ほんと!?」


僕の落ち込み度合いから大体のことは察してくれたらしい。

僕は食い気味に何度も聞いた。


「まあ、多分。50%ぐらいの確率で」


「それって半分じゃん…ほぼ無意味だって」


だんだん僕も死んだ目になっていった。

桜色の髪、桜の葉色の瞳を思い出し心が癒される。が、しかし、マシュマロを送る意味が思考回路を上回り、だんだんと荒んでいった。


「ガトーショコラで良くないすか?」


「…びっくりした」


「急に誰かと思いました」


いや酷!ずっといたんすけど!と、少年くん。

少年くんはいいよなあ、両思いでバレンタインデーはいちゃいちゃするだけなんだから。


「少年さん、馬鹿にしてます?私みたいな超料理音痴からしたらガトーショコラなんて無理ゲーです!桜さんみたいな器用人間ならまだしも」


「僕は料理とかしないからよくわからないけど、ガトーショコラは重いんじゃない?」


「ちょっと、バレンタインに悩める乙女に向かって重いってなんですか!?」


「いや違…物理的に!胃もたれするでしょ」


言い合う僕らを見てやれやれ…と少年くんはスマホを取りだし何かを調べ始める。


「…あ」


僕と陽菜ちゃんが少年くんの方を見る。

と、同時に少年くんはこちらにスマホを見せた。


「これ、どうすか?」


少年くんが提示したのはなにやらキラキラ光る宝石のようなお菓子だった。


「…か」


「か?」


ゴゴゴ…と音がなりそうなぐらいの剣幕で下を向く陽菜ちゃん。

なんだなんだ、と思った瞬間ぱっと上を向いた。


「かわい〜〜〜〜!!!!!!」


陽菜ちゃんが少年くんからスマホを取り上げ気分良さげに目を輝かせた。


「とってもかわいいし重すぎないし美味しそうだし琥珀糖って名前おしゃれ…なによりかわいい!」


これでいいのか…とホッと息をついた。ナイス、と少年くんに合図を送ると少年くんはグッと親指を立てて得意げにしていた。ありがとう、少年くん。


そんな日からはや3日。


「乾燥しましたかね、琥珀糖」


「ん、したんじゃないかな」


いくつもある鮮やかなそれのうちの一つを丁寧に取り、陽菜ちゃんが自分の口に放り込んだ。


「おいし」


甘いもので上機嫌な姿はまさに女の子だ。


「ほら、先輩も」


そう言って僕の口に琥珀糖を放り込む。その時。


ドサリ。


なにかが落ちる音がした。

音のした方向を見ると、顔面蒼白な桜の姿があった。


「あ、桜、どしたの?顔真っ青だよ。よかったらこっちで休んで__」


「やだ!」


中々見ない桜の拒絶的な態度に腰を抜かす。

桜はすぐに後悔したような表情になり、その後、すごく傷ついたような顔をした。


「っ…!」


パタパタ、を踵を返して廊下を走っていく桜。

なにがなんだかわからずただ困惑していた。


「あー…めんどくさい人達ですね」


「もー、こうなると思ったんすよ俺。だから乗り気じゃなかったのになあ」


なにやらボソボソと声が聞こえたが耳に入らなかった。桜を追いかけ廊下に出る。


「桜!待って!」


桜は文武両道、運動神経も勿論ずば抜けている。が、僕だって運動はそれなり。追いつけるに決まっている。…いや?追い付いてくると分かっていて走ったのか?

…もしかして。


「桜」


「…!」


ぱしり、と桜の手を掴んだ。

桜は大きくびくり、と肩を揺らし、涙目でこちらを見る。


「ごめんね、陽菜ちゃんと距離近かったよ。最近ずっと陽菜ちゃんと居たし。反省してる。…でもね、桜のバレンタインチョコ、世界で1番楽しみにしてるの僕だから」


涙を必死でこらえているもののぽろぽろと大粒のそれが目から溢れていた。


「だから、よかったら今年もちょーだい」


「…うん!」


ふわり、と桜が笑う。


「あ、笑った。かーわい」


お人形さんのようにキョトンとした顔をする。

その後、ボッと赤くなる桜。

その後、一通りもじもじしてから笑って口を開いた。


「今年は何がいい?マシュマロ?」


にっぱりと無邪気な笑顔。2年連続マシュマロ…本当に嫌われていないのだろうか。


「ま、マシュマロは…他のものがいいかも」


後日、桜は満面の笑みでフォンダンショコラをくれた。マシュマロが第1候補だったのはココアに溶かすと美味しいかららしい。なるほど、よくわからん。

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