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世界に転生した俺は、勇者たちを導く  作者: 鈴木泉
第2章 勇者選別

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第9話 試す者、試される者


広場は勇者候補たちの声で渦を巻いていた。

「俺こそ勇者だ!」「次の勇者は俺だ!」

市民たちは冷めた顔で眺め、子どもは笑いながら走り回る。


その中心に立つのは、王都騎士団長ゼイン。

紫がかった銀髪を束ね、鋭い眼光を放つ男。

剣を抜かずとも、その存在だけで場を圧していた。


「大神殿へ進む前に、この場で力を示せ」

ゼインの声が響き渡る。

「勇者を名乗る者よ、我ら騎士団がその器を見極める」


群衆がどよめく。前へ出ようとする者、怯えて退く者。

ゼインの視線は人々を流れ――ふと止まった。


黒髪の中に揺れる、赤の筋。

(……これは、勇者の血に刻まれる印……)

ゼインの目が細められる。


「――そこの少年。前へ出ろ」


「えっ!? 俺!?」

ソウマが目を丸くする。観衆は「なぜだ?」「ただの田舎者だろ」とざわついた。

しかしゼインだけは、その理由を知っていた。



「勇者を名乗るならば、剣で証明してみせろ」

ゼインが細剣を抜いた瞬間、空気が張り詰めた。


ソウマは剣を握り、深呼吸して構える。

「……やってやる! 俺は勇者だからな!」


リアナは祈るように両手を組み、

ルミナスは「転ばないといいけど」と冷たく呟いた。



カンッ!

鋭い突きがソウマの剣を弾く。


影燕(シャドウ・スワロー)!」

二連突きがソウマの懐を穿つ。ソウマは必死に受け止め、腕に痺れが走る。


「ぐっ……速ぇ!」


ゼインは間髪入れず剣を翻した。

逆風斬(ギャスト・リバーサル)!」

絡め取るような返し技で、ソウマの剣を弾き飛ばそうとする。


「くっそお!」

体ごと押し返して耐えるソウマ。だが呼吸は荒く、汗が額を伝った。


「勇者を名乗る者がこの程度か」

ゼインは冷徹に告げる。



ソウマは歯を食いしばる。

「まだだ……!」


その瞬間。

ソウマの剣が淡い青白い光を帯びた。


俺は思わず息を呑む。

(……これは……!)


ゼインの瞳も揺らぐ。

(やはり勇者の剣……!)


だが観衆には、ただの気迫にしか見えていない。

「押し返したぞ!」「やった!」と歓声が上がる。


ただ一人、フードを深く被った影だけが、その光を凝視していた。

誰にも気づかれず、その影は人混みに紛れて消える。

――不穏な残滓だけを残して。



「うおおおっ!」

ソウマが叫び、踏み込む。


「――烈斬(レツザン)!」


光を纏った一撃がゼインの「烈空閃(ブレイブ・グロス)」を打ち破った。

ガキィン!

轟音と共にゼインの細剣が弾き飛ぶ。


広場に歓声が爆発する。

「すげぇ!」「あの子が勝った!」

「勇者様か!?」「いや、まぐれだろ!」



ゼインは落ちた剣を拾い、静かに告げた。

「……多少はやるな。だがまだ勇者の道は遠い」


ソウマは肩で息をしながらも笑った。

「へっ……そりゃそうだ! 俺はまだ“伸びしろ”ってやつがあるからな!」


リアナは瞳を輝かせ「本当にすごいです!」と声を弾ませ、

ルミナスは「バカだけど……悪くないわね」と少し嬉しそうに呟いた。


ゼインは最後にソウマの剣と髪を見やり、心中で呟く。

(……その印と剣、必ず意味を知る時が来る)


ソウマは剣を掲げ、ドヤ顔で叫んだ。

「これ、親父がくれた家に伝わる剣なんだ! カッコいいだろ!」


観衆からは笑いが起きた。

「家にあった剣!?」「やっぱり自称か?」

だがゼインだけは、その言葉を真剣に受け止めていた。



俺は胸の奥でざわめくものを押さえ込んだ。

(……あの光が剣に宿った瞬間、確かに世界が軋む音を聞いた)


それが何を意味するのか、この時の俺はまだ知らない。

ただ、あの光が――

世界を揺るがす光だと、本能で理解していた。


読んで頂いてありがとうございます!!


毎日更新したいと考えていますが仕事の都合上、深夜に更新することが多いです!ぜひページ左上にあるブックマーク機能使ってみてください!


また、連載のモチベーション向上にもなるので面白いなと思ったらすぐ下にありますので☆☆☆☆☆や、リアクションもお願いいたします!


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