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世界に転生した俺は、勇者たちを導く  作者: 鈴木泉
第2章 勇者選別

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第7話 勇者の噂


街道を歩くテーレ一行。

森を抜ければ、草原がどこまでも広がり、ところどころに小さな丘が連なっている。

青空には雲がゆったりと流れ、鳥の影が舞っていた。


「ふはは! 俺ってさ!やっぱり勇者の器だよな!」

ソウマが胸を張り、陽の光を浴びながら大仰に宣言する。


「……その器、穴が開いてるんじゃない?」

ルミナスがさらりと切り捨てる。


「ぐっ……! なんだと!」

「ふふっ……二人とも、また始まっちゃいましたね」リアナが慌てて笑顔を見せる。


「まぁ……声量だけは勇者っぽいな」

俺が苦笑まじりに言うと、ソウマは振り返って親指を立てた。

「だろ! お前も分かってきたな!」


俺は「褒めてない」と言いかけたが、もう聞く耳を持っていない。



昼下がりの道を進みながら、話題は自然と昔のことへ。


「今はこうして4人で旅してるけど……もともと3人は同じ村出身なんだよな?」

俺の問いに、リアナがうれしそうに頷いた。


「はい!ソウマ様は子どもの頃から“勇者になる!”って言ってました」

「ただの目立ちたがりよ」ルミナスが冷ややかに返す。


「おい! 俺は昔から勇者の片鱗を見せてただろ!」

「井戸に落ちた子を引き上げただけでしょ」

「それで村の皆が“勇者だ!”って盛り上がったんだぞ!」

「“勇者みたいだ”って言われただけじゃなかった?」


リアナはくすっと笑いながら言った。

「でも、助けてもらった子は本当に勇者様に見えてたと思いますよ!」


ソウマは鼻を鳴らし、得意げに空を見上げる。



その先で、馬車を脇に寄せて直そうとする一人の男に出会った。

白髪交じりの髪に煤けた作業着、腰を押さえながら苦労している様子。


「お困りですか?」リアナが声をかけると、男は深いため息をついた。

「おう……車輪がな、すっぽり外れちまってよ。もう腰が限界でな」


俺とソウマが馬車を支え、ルミナスが木材の強度を見極める。

俺は枝を削って補強を施し、なんとか馬車は元通りになった。


「いやぁ、助かった助かった。若いのに器用なもんだな。

この歳になると、ちょっと力仕事するだけで腰にくるんだ」


「勇者の務めだからな!」ソウマが胸を張る。


「ははっ、そうか!勇者様か。そういや最近は王都でも“勇者”を名乗る若者が増えてるらしくてな。

王都じゃ“自称勇者”が笑い者になるくらいだ」


「なに!? 俺は自称じゃなく本物だ!」ソウマが声を張り上げる。


男はにやりと笑い、腰をさすりながら言った。

「本物かどうかは、大神殿で神託を受けりゃ分かるさ。王都エルディオンはそういう街だ」


ルミナスが「ほら、やっぱり自称」と冷淡に告げ、ソウマは唇を噛みしめる。


リアナは慌てて「でも、ソウマ様ならきっと証明できます!」とフォローした。


「はは、元気があって何よりだ。旅路に幸あれよ」

そう言い残して、男は干し肉を差し出し、馬車に乗ってゆっくり去っていった。



その夜、焚き火を囲みながら俺たちは簡単な食事を済ませた。

火の粉が舞い、星空が広がる。


ソウマは黙り込んだまま、火をじっと見つめている。

あの強気な男が、珍しく口数を減らしていた。


リアナが心配そうに覗き込み、ルミナスは何も言わずに夜空を仰ぐ。

俺は剣を磨きながら、その光景を横目に見た。


そして俺らは、王都エルディオンを目指して旅を続ける。

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