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世界に転生した俺は、勇者たちを導く  作者: 鈴木泉
第2章 勇者選別

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第6話 新たな道


ダスクロードの巨体が地に沈み、森に静寂が戻った。

焦げた匂い、砕け散った氷の破片、血の生臭さ。

戦いの熱はすでに消え、残ったのは疲労と重たい空気だけだった。


「はーっ! やっぱ俺が決めると絵になるな!」

ソウマが胸を張って高らかに笑う。


「……氷で足止めされてなかったら、あなたが倒れていたと思うけど」

ルミナスの冷ややかな声が飛ぶ。


「ぐっ……だ、だけど俺が最後に倒したのは事実だ!」

「はい! ソウマ様はとっても立派でした!」

リアナが慌ててフォローし、ソウマは「ふふん♪だろ!」とドヤ顔を見せる。


……この掛け合い。いつもの調子に戻ったことに、少し安堵する。



だがその裏で、俺の胸の奥にはまだ鈍い響きが残っていた。

雷の衝撃、氷の冷気――

仲間の魔法が俺の体を通して再現されるような、説明できない痛み。


(……俺は“世界”そのものになったはずだ。

なら、こんなことは当然分かっていなきゃおかしい。なのに……なぜだ?)


分かっているつもりで、実際には分かっていない。

自分でも説明できないその矛盾が、妙な不安となって胸を締め付けた。



森を抜けた川辺で、俺たちは腰を下ろした。

リアナが祈りを捧げ、小さな光で全員の傷を癒していく。


「はぁ……やっぱ回復魔法は助かるなぁ」

ソウマがのびをする。


「でもリアナも無理するな。少し疲れた顔してるぞ」

俺がそう声をかけると、彼女は小さく首を振って笑った。

「大丈夫です。こうして皆さんと一緒に戦えて……うれしいですから」


……危なっかしい笑み。でもそこに芯の強さを感じた。



焚き火を囲み、俺は剣を磨きながら口を開いた。

「で、次はどこへ行くんだっけ?」


ルミナスが地図を広げる。

「このまま街道を南に下れば、王都――エルディオンに着くわ。

王の城と大神殿がそびえるこの国の中心。

勇者として正式に認められるために、そこを目指してきたじゃない。」


「そうそう!エルディオンだ! 俺が勇者だって認めさせてやる!」ソウマが拳を握る。


「……その前に修行を積むべきだと思うけど」

「なっ!? お前は俺を信じてねぇのか!」

「信じる根拠がまだ薄いだけよ」


また始まった。俺はため息をつきつつも、そのやり取りに妙な心地よさを覚えていた。



だが、胸の奥に残る“痛み”が再び顔を出す。

仲間の笑い声に混じって、俺だけが別の世界に取り残されているような感覚。

その正体はまだ掴めない。

けれど――それが、この先の旅で避けて通れないものになることだけは、なぜか分かっていた。


こうして俺たちは、次なる目的地――王都エルディオンへ向けて歩き出す。

新たな冒険の始まりを前に、俺の胸は期待と、不安と、答えの出ない痛みに揺れていた。


読んで頂いてありがとうございます!!


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