第6話 新たな道
ダスクロードの巨体が地に沈み、森に静寂が戻った。
焦げた匂い、砕け散った氷の破片、血の生臭さ。
戦いの熱はすでに消え、残ったのは疲労と重たい空気だけだった。
「はーっ! やっぱ俺が決めると絵になるな!」
ソウマが胸を張って高らかに笑う。
「……氷で足止めされてなかったら、あなたが倒れていたと思うけど」
ルミナスの冷ややかな声が飛ぶ。
「ぐっ……だ、だけど俺が最後に倒したのは事実だ!」
「はい! ソウマ様はとっても立派でした!」
リアナが慌ててフォローし、ソウマは「ふふん♪だろ!」とドヤ顔を見せる。
……この掛け合い。いつもの調子に戻ったことに、少し安堵する。
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だがその裏で、俺の胸の奥にはまだ鈍い響きが残っていた。
雷の衝撃、氷の冷気――
仲間の魔法が俺の体を通して再現されるような、説明できない痛み。
(……俺は“世界”そのものになったはずだ。
なら、こんなことは当然分かっていなきゃおかしい。なのに……なぜだ?)
分かっているつもりで、実際には分かっていない。
自分でも説明できないその矛盾が、妙な不安となって胸を締め付けた。
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森を抜けた川辺で、俺たちは腰を下ろした。
リアナが祈りを捧げ、小さな光で全員の傷を癒していく。
「はぁ……やっぱ回復魔法は助かるなぁ」
ソウマがのびをする。
「でもリアナも無理するな。少し疲れた顔してるぞ」
俺がそう声をかけると、彼女は小さく首を振って笑った。
「大丈夫です。こうして皆さんと一緒に戦えて……うれしいですから」
……危なっかしい笑み。でもそこに芯の強さを感じた。
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焚き火を囲み、俺は剣を磨きながら口を開いた。
「で、次はどこへ行くんだっけ?」
ルミナスが地図を広げる。
「このまま街道を南に下れば、王都――エルディオンに着くわ。
王の城と大神殿がそびえるこの国の中心。
勇者として正式に認められるために、そこを目指してきたじゃない。」
「そうそう!エルディオンだ! 俺が勇者だって認めさせてやる!」ソウマが拳を握る。
「……その前に修行を積むべきだと思うけど」
「なっ!? お前は俺を信じてねぇのか!」
「信じる根拠がまだ薄いだけよ」
また始まった。俺はため息をつきつつも、そのやり取りに妙な心地よさを覚えていた。
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だが、胸の奥に残る“痛み”が再び顔を出す。
仲間の笑い声に混じって、俺だけが別の世界に取り残されているような感覚。
その正体はまだ掴めない。
けれど――それが、この先の旅で避けて通れないものになることだけは、なぜか分かっていた。
こうして俺たちは、次なる目的地――王都エルディオンへ向けて歩き出す。
新たな冒険の始まりを前に、俺の胸は期待と、不安と、答えの出ない痛みに揺れていた。
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