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世界に転生した俺は、勇者たちを導く  作者: 鈴木泉
第1章 出会い

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第5話 黄昏の群れ


森を抜けかけた俺たちを、灰色の影が取り囲んだ。

低い唸り声、赤い瞳――ダスクウルフの群れだ。


「こ、こんなに……!?」リアナが息を呑む。

「下級魔獣でも、数が集まれば脅威よ」ルミナスの声は冷ややかだが、その額に汗が光っていた。


ソウマは剣を抜き、前に出た。

「ふん! 数なんて関係ない! 俺が切り開く――烈斬(レツザン)!」


振り抜かれた剣が、真正面の一体を両断した。

血飛沫が飛び、狼が崩れ落ちる。

……今度は空振りじゃない。ほんとに勇者らしい一撃だった。


「おおっ!」ソウマ自身が一番驚いた顔をしている。


だが群れは怯まず、牙を剥いて一斉に襲いかかってきた。



「神よ、仲間を護りたまえ――セイクリッドシェル!」

リアナの祈りが光の膜を生み出し、飛びかかった狼たちを弾く。

小さな体で必死に祈る姿に、俺は少しだけ感心した。


「詠唱に時間を稼ぎなさい」ルミナスが短く告げる。

すでに両手に魔力を集中させている。


「任せろ!」ソウマが吠える。

俺も剣を構え、狼の牙を受け止めた。

「――斬鉄(ザンテツ)!」

鋭い軌跡を描いて一体を斬り裂き、同時に大地を微かに揺らす。

足を取られた狼が体勢を崩し、ソウマの剣に串刺しにされた。


「よっしゃあ! 俺とテーレの連携だな!」

「……まあ、結果オーライか。」



「行くわよ!

雷鳴轟け、大地を裂け――サンダーストライク!」


ルミナスの詠唱が完成し、青白い雷光が走った。

数体の狼が一瞬で黒焦げになり、地面に倒れ伏す。

同時に威力が絶大で周りの木々も黒焦げになった。


その瞬間――胸の奥に、ドン、と鈍い響きが走った。


(……今のは、何だ?)


ほんの一瞬の違和感。だが戦いの最中、立ち止まって考える余裕などなかった。



群れの奥から、ひときわ大きな影が現れた。

他のダスクウルフより二回りは大きく、全身に傷だらけの毛並み。

――群れを率いるボス、ダスクロードだ。


「来やがったな……!」ソウマが剣を握り直す。

「ソウマ様、無茶はしないでください!」リアナが祈るように声をかける。

「また、時間を稼いで。足止めするわ」ルミナスが短く告げた。



ソウマは叫びと共に突撃する。

「勇気こそ力! 俺が道を切り開く――烈斬(レツザン)!」

鋭い一閃が走り、ダスクロードの肩口を裂いた。

だが巨体は止まらず、逆にソウマが吹き飛ばされる。


「ぐっ……まだだ!」ソウマは膝をつきながらも立ち上がった。

その姿に、俺は少しだけ驚いた。勢いだけの脳筋かと思いきや、折れない芯がある。



「氷よ、世界を閉ざせ――フロストノヴァ!」

ルミナスの詠唱と共に、白い冷気が爆ぜた。

地面から氷の結晶が一斉に吹き上がり、ダスクロードの足と半径500メートルを瞬時に凍らせる。

巨体が軋む音を立て、動きを止めた。


その瞬間、胸の奥にぞくりと冷たい響きが走った。

(……まただ。雷の時と同じ……でも今は考えてる場合じゃない!)



「ソウマ様!」リアナの祈りの声が響く。

「神よ、勇気を与えたまえ――ブレイブハート!」

淡い光がソウマを包み、その瞳に力を宿した。


「……よし! 行くぞ!!これが俺の全力――勇煌斬(ブレイブソード)!」

剣に光が集まり、眩い弧を描いて振り抜かれる。

次の瞬間、ダスクロードの巨体が崩れ落ち、森に静寂が戻った。



「やった……倒したんですね!」リアナが涙ぐむ。

「ふん、やっと勇者らしい働きをしたわね」ルミナスがそっぽを向く。

「ははっ! 俺が決めてやったぜ!」ソウマはドヤ顔だ。


俺は剣を収めながら、胸の奥に残る違和感に小さく息を吐いた。


(……さっきのは、いったい……?)


仲間には言えない秘密。

俺自身すら知らなかった“世界としての感覚”が、少しずつ顔を出し始めていた。

読んで頂いてありがとうございます!!


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― 新着の感想 ―
世界そのものに転生というのが面白いですね。 ポンコツくさい勇者の一行とテーレが これからどんな冒険をするか、楽しみです。 面白かったんので、ブクマさせていただきました。
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