表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に転生した俺は、勇者たちを導く  作者: 鈴木泉
第3章 黒龍討伐

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/31

第31話 門


ーー空が割れた。


黒龍の咆哮と同時に、瘴気が噴き出し山そのものが悲鳴を上げた。

岩肌がひび割れ、空気がねじれ、音が遅れて届くほどの衝撃。

そして空には、赤黒い円が開いた。

それこそが“門”だ。

その中心に広がる闇は、底なしの穴のように、見上げる者の心を飲み込んでいく。


「キヒヒヒヒッ……これでいい……これでやっと我らの“魔界”が息を吹き返す……!」


リュガルの声が、まるで雷鳴のように響き渡った。

その声は、空気を震わせ、山にいる者だけでなく“世界”の隅々にまで染み込んでいくようだった。


……その震動を、俺は感じた。

いや、正確には大地を流れる脈が、悲鳴を上げていた。

“世界”の根に宿る俺の意識がざわめく。

地脈が逆流し、瘴気が染み込み始めている。

それはただの魔力ではない、“世界そのものを汚す毒”それと同時に複数の魔物が門から飛び出した。


「テーレっ!!」

リアナの叫びが響く。

彼女は震える指で遠くの空を指差した。


「み、見てください! あの魔物たち……! グラナートの方角に向かっています!」


裂け目から這い出た無数の影が翼を広げ、空を覆いながら街の方向へ飛んでいく。


「……まずいわね」

ルミナスが歯を噛みしめた。

「このままじゃ街が――」


「俺が行く!」

即座に声が出た。仲間たちが振り返り俺を見つめた


「ソウマ!黒龍の相手はお前に任せる。ユウマと協力しろ!」

「はあ!?お前ひとりで何する気だよ!」

「気にするな!お前はただ黒龍を倒せ!」


俺は振り返り、ルミナスとリアナに叫んだ。

「ルミナス、リアナ! 二人はソウマとユウマのサポートをしてくれ!なんとしてもあの黒龍を止めろ!」


ルミナスが一瞬だけ目を細めたが、すぐに頷いた。

「……わかったわ。必ず生きて帰ってきなさい」


リアナも涙目で叫ぶ。

「気をつけてください! テーレ!」


「任せろ」


胸の奥で世界の律動が高鳴る。

地脈の震えを足裏に感じながら、俺は崩れかけた斜面を駆け下りた


―――


山を下る途中、瘴気が風のように流れ込んでくる。

それは“臭い”ではない。

心の奥に直接触れてくる――“死”そのものの波動。

視界の端、森の木々が枯れていく。

触れた草が、灰のように崩れた。

俺の前の地面が裂け、影が這い出た。

黒い煙のような、だが形を持つそれは、翼を生やした魔物だった。

門から溢れた群れの先駆け。


「行かせるかよ」


剣を構え、地に刻印を描く。

光流反衝(フォトン・リバース)!!」


剣先から光が奔り、斜面を這うように走る。

その光が魔物たちを包み込むと、影の形が焼き切られ、闇が弾けた。


だが次から次へと群れは押し寄せる。

“数”が違う。

世界が汚されている証拠だった。


(これ以上、普通にやってもキリがねぇな……)


俺は剣を地に突き刺した。

掌を地面に押し当て、世界の理へと語りかける。


「第弐界位――封印式、起動。

 座標指定、グラナート周域……

 地脈干渉、領域展開――」


空気が震えた。

地が光り、光が川となり、山から街へと流れ落ちる。

俺の体から溢れた力が、世界の根へと流れ込み、“結界”を形成していく。


「……頼む。間に合ってくれ」


視界の先に見えるのは、瘴気のせいで暗くなりそこに浮かぶ街の灯り。

あの明かりを消させるわけにはいかない。



グラナートの街はすでに混乱の中にあった。

鐘が鳴り、人々が逃げ惑う。

空の黒い雲を見て泣く子供。

街を出ようとする馬車。

冒険者たちが剣を構え、空を見上げていた。


そこへ、最初の群れが到達した。

黒い翼をもつ魔獣が、街の上空を覆う。


「くそっ!なんだあれは……!」

城壁の上にいた見張り兵が叫ぶ。

弓を放っても、矢は闇に吸われ、届かない。


その瞬間、俺の展開した“光の線”が街を包み込んだ。

淡い青白い結界が、城壁の外側に形成される。

光の壁が、流れ込む闇の奔流を受け止めた。


「はぁ……はぁ……っ」

膝をつきながら息を荒げる。

視界の端で、結界にぶつかる魔物の群れが爆ぜる。

だが数が多すぎる。一体倒せば十体湧く。


「……まだだ。まだやれる」

俺は立ち上がり、再び剣を構えた。

「この世界は……俺だ。この世界にいるみんなは俺が守る。」


世界が震える。

遠く、山頂の方から再び轟音が響いた。

赤黒い光――あれはリュガルの魔力。

ユウマとソウマがまだ戦っているのがわかる。



「第參界位ーー光護式 解放。

 護界陣セイクリッド・ドメイン!!」


地面が爆ぜ、巨大な光陣が展開する。

その中心に立つ俺を軸に、光が街全体を包み込んだ。

光は脈打ち、まるで心臓の鼓動のように響いた。


「……ここは守り抜く。」


魔物が押し寄せる。

結界に体当たりし、牙を突き立て、爪で引き裂こうとする。

そのたびに火花のような光が走り、俺の身体を焼く。

地面を蹴りながら、両手を広げた。

光の柱が何本も立ち上がり、闇の波を押し返す。

結界の外で爆発が連鎖し、夜空が昼のように明るく染まる。



その頃、遠く山頂から――

雷鳴のような咆哮が再び響いた。

リュガルが口を開く


『キヒヒヒヒッ……やはり守るか、“世界”の化身よ。

 だがその姿がどれほど滑稽か...」



「はぁ はぁ この数の魔物は中々に世話が焼ける...」

手のひらが焼けるように熱い。

地を走る光が一瞬、途切れかけた。

だがその時、街の中から声が聞こえた。


「ありがとう……」

結界の内側、避難を終えた母親が、幼い娘を抱きしめながら呟いていた。

その声が確かに、俺の胸に届いた。


「……そうだ。これが、“世界”としての使命だ」


俺は剣を高く掲げた。

「来いよ、魔界の軍勢! この世界の光が、簡単に消えると思うな!!」


空から、影が降る。

だがそのたび、光が弾ける。

夜と昼がせめぎ合うような光景が、山から街までを照らしていた。



瘴気の風が吹く。

山頂で戦う勇者たちの光が、遠くに見える。

そして街の中では、人々がその光を見上げていた。


世界が裂ける夜に――

俺は、ただひとりその裂け目を塞ぐように立っていた。

読んで頂いてありがとうございます!!


毎日更新したいと考えていますが仕事の都合上、深夜に更新することが多いです!ぜひページ左上にあるブックマーク機能使ってみてください!


また、連載のモチベーション向上にもなるので面白いなと思ったらすぐ下にありますので☆☆☆☆☆や、リアクションもお願いいたします!


お気軽にご感想コメントをいただけますと幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ