第3話 村を襲う影
食卓を囲んだ翌朝。
俺は、自称勇者一行とともに村の広場へ向かっていた。
「おい村人たち! 金を出せ!」
耳障りな怒声とともに、数人の男が現れた。粗末な剣や棍棒を手にした盗賊だ。
「なっ……!?」リアナが小さく息をのむ。
「ちょうどいい。昨日何もできなかっからな!勇者の俺が相手をしてやる!」ソウマが胸を張って前に出た。
剣を構え、大声で叫ぶ。
「見せてやる! 俺の必殺――烈斬!」
……が、振りかぶった剣は空を切り、足を滑らせて地面に転がった。
「はあ……」ルミナスが額に手を当てる。
「で、でもすごく勇敢でした!」リアナが必死にフォロー。
盗賊が笑いながらソウマへ迫る――その時。
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「下がれ」
俺は一歩前へ出て、盗賊の棍棒を受け止めた。
「くそっ!」力任せに振るわれた一撃を弾き返し、剣を斜めに振る。
「―斬鉄!」
甲高い音とともに、盗賊の剣が真っ二つに折れた。
「な、なに!? ただの旅人じゃ……」
「甘いわね」背後からルミナスの冷たい声。
「燃え盛る炎よ、敵を焼き尽くせ――フレアランス!」
彼女が詠唱を終えると同時に、炎の矢が盗賊たちの頭上をかすめそのまま屋根瓦が焼け焦げ、盗賊たちは青ざめる。
「神よ……どうか恐怖を鎮めたまえ――セイクリッドシェル!」
リアナの祈りが村人たちを包み、恐怖で固まっていた彼らに安心を与えた。
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盗賊たちは戦意を失い、慌てて逃げ去っていった。
「ふぅ……」俺は剣を下ろす。
「ふ、ふん! 勇者の俺が脅してやったから逃げたんだ!」ソウマが胸を張る。
「転んだ勇者がよく言うわね」ルミナスが冷ややかに刺す。
「でも、本当に皆さんのおかげです!」リアナが微笑んだ。
……まったく、三人とも相変わらずだ。
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事件の後、村人たちは深々と頭を下げた。
「ありがとうございました! あなた方はまさしく勇者さまですね!」
その言葉にソウマがニカッと笑い、胸を張る。
「だろ? 俺の勇気があったからこそだ!」
ルミナスは肩をすくめて、ちらりと俺を見た。
「功績を独り占めするほどの力は、あなたにはなかったけどね」
リアナは、ほっとしたように両手を合わせる。
「でも……皆さんのおかげで、村の人たちが救われました。」
そして三人の視線が、自然と俺へと向けられる。
「なあ、テーレ」ソウマが笑顔で俺の肩を叩いた。
「お前、ただの旅人じゃないだろ。腕も立つし、何より肝が据わってる。
俺の――いや、俺たちの仲間になれよ!」
「うん……その方がいいと思います。テーレさんが一緒なら、きっと安心できますから」
頬を少し赤らめながら言うリアナに、俺は思わず視線を逸らした。
「ふぅん……」ルミナスは顎に手を当て、探るような目を向けてきた。
「ただの旅人にしては妙に強い。秘密を隠しているのかしら……。でも――仲間にいると便利そうではあるわ」
……三者三様の誘い方。
俺は少しだけ考えて、そして苦笑した。
「……まあ、しばらくは暇だからな」
こうして俺は、勇者一行と正式に歩み始めることになった。
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