第29話 魔界との接触
「キヒヒヒヒッ……ここまでやるとはねぇ……
やはりザガドが言うだけはあるなぁ……」
瘴気の渦の中から姿を現したのは、漆黒のローブを纏った男だった。
その顔には笑みとも嘲りともつかない歪な表情。歯はギザギザしており、目は黄色く異様に光を放っている。
「……誰だ!!おまえは!」
ソウマが剣を構えたまま睨みつける。
男はゆらりと浮かび、黒龍の頭上に降り立った。
「俺様の名は、リュガル……“ 肆大魔将”が1人ーー魂喰のリュガルだ。キヒヒッ」
「肆大魔将……?」
ルミナスが息を呑む。
リュガルは指を鳴らした。
その瞬間、黒龍の体から一層濃い瘴気が溢れ、まるで苦悶するように暴れ出す。
「そういうことか……」
ユウマが低く呟いた。
「こいつは生きた龍じゃない。魂を“喰われて”……操られている」
「なにぃ!?」
ソウマが目を見開いた。
リュガルは嗤う。
「黒龍は我らがこの地に送った“鍵”の一つ。封印を解くために人々を襲わせ力を蓄えていた。
だが、まさかここまで抵抗されるとは思わなかった……お前たち、面白い」
「そんなもん知るかよ!」
ソウマが怒鳴り、剣を構える。
「操ってる奴がいるなら、そいつごとぶっ倒すだけだ!!」
ユウマが前に出た。
「いや、こいつは……“俺が倒す”。これは俺の、宿命だ」
「なーーっ!しつこいぞ!お前!おれだ!」
ソウマが地団駄を踏みながら怒った
「おや?そこの銀髪...お前勇者の子だろ?以前襲わせた村で勇者と共にいたな。“あの時は残念だったな”
お前だけ生き残ったのか!キヒヒヒヒッ」
リュガルが嘲笑うように言い放ちユウマは拳を強く握った。
「なんだよそれ……俺だって勇者の子だ!あいつだけじゃねえ」
ソウマが眉をひそめた。瞬間――黒龍が再び咆哮を上げた。
「グォォォォォォォォオオッ!!」
その一声で空が裂け、瘴気が稲妻のように地を這う。
岩が砕け、風が暴れ、空気そのものが焼け焦げる。
「くるぞ!!!ルミナス!防御を! リアナ、後衛へ!」
俺は叫びながら剣を構える。
「了解!」「わ、わかりました!」
ルミナスが詠唱を始め、光の防壁を展開。
リアナは祈りを捧げ、仲間の攻撃力を高める祝福を放った。
「ふん……見せてもらおう。勇者の力を」
「そして...“世界”の力も...」
リュガルが笑みを溢しながら俺を軽く睨み両腕が広げると、黒龍の瞳がさらに濃く輝き、瘴気の刃が無数に宙へ浮かび上がる。
「構えろ!!」
俺の声と同時に、黒龍の翼が弾けるように広がり、
瘴気の刃が雨のように降り注いだ。
「うぉおおっ!!」
ソウマが剣を振り、いくつもの瘴気を斬り払う。
ユウマは氷の壁を展開して刃の行く手を阻む。
その直後――黒龍が炎を纏い、地を蹴った。
「グォオオオオオオ!!」
「くっ……あいつ、突っ込んできやがった!」
ソウマが剣を構え防御の体制をとった、だが黒龍の突進には敵わず、壁に吹き飛ばされた。
「ぐっはっ...はぁはぁ...やっべえな」
ソウマは口から血を流し、肩を揺らしながら息をしていた。そこにリアナが走って近寄り回復を始めた
ユウマが前に出る。剣を強く握り黒龍に向かって走り始めた、そして再び剣を握りしめた時、僅かながら光を纏い始めた。
「いくぞ!!氷神殲滅!!!」
光を纏った剣が氷で斧のような形になり、黒龍の体に大きな傷をつけた。
しかし、リュガルは口元を吊り上げた。
「……いいねぇ。その力、その光。
だが、それが絶望に変わる瞬間が――俺は一番、好きなんだ」
次の瞬間、黒龍の体が膨張し、瘴気が爆発的に拡散した。
山頂の空気が一瞬で塗り潰されるほどの闇が広がる。
「……これは……っ」
俺は歯を食いしばる。
リュガルの笑い声が瘴気の中に響いた。
「さぁ――準備は整った!“魔界の門”を、開けようじゃないか……」
黒龍の背に浮かぶ魔法陣が、赤黒く輝き始めた。
俺たちは知らなかった。
この戦いが、“ただの黒龍討伐”では終わらないことを――。
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