第28話 黒龍、開戦
「グォォォォォォォォォォォォォォ」
咆哮と共に黒龍の巨体が翼を広げる。大気が震え、山頂を覆う瘴気が渦を巻いた。
その場に立っているだけで、心臓を鷲掴みにされるような圧迫感が襲う。鱗は煤けたような漆黒、眼は血のように赤い。
「うっは!でっけぇぇ!」
ソウマは目を輝かせていた。
リアナは口元を押さえ、足を振るわせながらも必死に立っていた。
「こ、これが....黒龍...」
「っしゃあ!俺が行くぜ!」
ソウマが剣を握り、一歩前にでた。
すると、黒龍はギロっとこちらに眼を向け大きく口を開き、赤黒い光が収束する。
「まずい!ソウマ下がれ!」
俺が叫ぶと同時に、黒炎が奔流のように吐き出された。
「無比の盾となりて、我らを守りたまえーー《ピアレス・シールド》」
ルミナスの“防御魔法”は皆を守る程デカく現れ、黒炎を受け止める。だが、弱まる事なく押し寄せてくる黒炎により盾は軋み、ひび割れが走る。
「くっ....もう持たない...」
「まかせろ!俺が斬る!」
ソウマが横に動く。剣を強く握りしめ力を込めた。
「うぉぉぉぉ、烈斬」
閃光のような斬撃がかろうじて黒龍には届き黒炎は止まったが、鱗が堅く擦り傷すらつかなかった。
「やるなぁ...勇者の攻撃すら効かないなんて!」
ソウマが額の汗を拭った。その時、黒龍の尾が唸りを上げソウマの身体を薙ぎ払った。
「ぐあああっ!」
ソウマが地面に叩きつけられたのを見て、リアナが駆け寄り両手を上げた。
「ソウマ様...! 神よ。癒しの光をーー《ヒール》」
柔らかな光がソウマを包み、出血と痛みを回復させた。
「ありがとな。リアナ!」
ソウマは再び立ち上がり、剣を握る。
ーーーーーーー
「仕方ない。仕掛ける! 太刀風!!」
俺は剣を振り抜き、風圧すら裂く一閃を黒龍に叩き込んだ。
ーーガキィンッ!
金属を斬ったような轟音が山に響く、だが鱗には傷はつかず、わずかに火花だけ散った。
「やはり...硬いな」
体制を立て直そうとした瞬間、黒龍の赤い眼が俺を捉える。再び尾がうなりを上げるーー。
「くっ....」
躱すことができず、守りの体制に入った。
ーーその時。「氷嶺柱...」
地を這う氷柱が一気に隆起し、黒龍の一撃を防いだ。
「ここにいたか...黒龍」
声と共に現れたのは、銀髪の勇者――ユウマだった。
その双眸にはただ冷徹な光。だが、その瞳の奥底に憎悪にも似た熱が宿っている。
「銀髪野郎!」
ソウマが吠える。
「勝手に出しゃばるな! 黒龍は俺が倒すんだ!」
「黙れ」
ユウマは一言だけ吐き捨て、黒龍を見据える。
「こいつは……俺の剣で葬る。俺が斃さねばならない理由がある」
(理由....?こいつ黒龍と何かあったのか...?)
ーーーーーー
黒龍が咆哮し、氷柱を砕き散らす、再び口を開け赤黒い光が収束する。
「まずいわ...またあれがくる!」
ルミナスが慌てて詠唱を始める。
ユウマが瞬時に剣を構えて、高く飛翔し黒龍に斬りかかる
「氷刃零閃...」
氷を纏った剣が黒龍の鱗に傷をつけた。
「なっ...あいつ黒龍に傷を...! あいつに出来て俺に出来ねえわけねえ!!」
ソウマが剣を構えて強く握ると、青白い光が纏い始めた。
「うぉぉぉぉおお!光劍ぃい」
青白い光を纏った剣を振るった時、光が斬撃となりて黒龍の翼に一撃を与え傷をつけた。
「はぁはぁ、どうよ?黒龍は俺が倒してやるよ」
ソウマは剣で体を支えてドヤ顔をした。
「くだらん...」
ユウマは気にも留めず、黒龍から眼を離さず睨んでいた
ーーーーーー
再び黒龍が雄叫びをあげ天地を震わせると同時に翼を大きく広げ高く飛翔した。ーー再び口を開ける。
(まずいな...少し“世界”の力を使う)
剣を地面に突き刺し、力を込めた。
「重力束縛」
瞬間、大地が軋み、見えない重力の枷が黒龍の巨体を押し潰すように縛りつける。
「グォォォォ……!」
黒龍の飛翔は止まり、地面に脚をつける。吐き出しかけた黒炎の軌道が逸れ、炎は山肌を焼き抉り、爆風で木々が吹き飛んだ。
「なんだ?黒龍が降りてきたぞ?」
ソウマは剣を握り直す。
「今がチャンスだ!畳みかけろ!」
俺が叫んで伝える。
「おうよ!いくぜ!!もういっちょ!
ーー光劍!!!」
ソウマに続き、ユウマも黒龍に向かっていく
「終わらせる!氷刃零閃ー終式」
氷を纏った剣閃がソウマの光刃と交差し、黒龍の鱗を切り裂く。
血飛沫が飛び散り、瘴気が一層濃く渦巻いた。
「グアァァァァァッ!!」
黒龍が苦悶の咆哮を上げ、巨体がよろめく。
「やった! 傷が入った!」リアナが喜ぶ。
ソウマは剣を構え直し、息を切らしながらも笑う。
「どうだ銀髪野郎! 俺だってやる時はやるんだ!」
ユウマは一瞥をくれるだけで、冷たく吐き捨てた。
「……黙っていろ。」
黒龍は血走った赤い眼をぎらつかせ、天地を震わせるように吼える。
瘴気が一層濃く膨れ上がり、山頂全体を覆い尽くす。
(まだ、倒れないのか...もう隠してはいられない。)
心を決め力を解放させようとした。
その時ーーー濃く膨れ上がった瘴気が渦を巻き中から“ソイツ”は現れた。
「キヒヒヒヒッ、黒龍をここまでやるとはねえ...
やはりザガドが言うだけはある...」
「俺様の名はーー」
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