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世界に転生した俺は、勇者たちを導く  作者: 鈴木泉
第3章 黒龍討伐

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第23話 黒龍の影



ギルドマスターのダグラスに導かれ、俺たちはギルドの上階へと通された。

石造りの階段を上りきると、重厚な扉の奥には応接間が広がっている。分厚い絨毯が敷かれ、壁には古い地図や武具が飾られていた。

場末の酒場の喧噪とはまるで別世界の空気だ。


「座れ」

ダグラスの声は低く、部屋そのものを震わせるようだった。


ソウマは当然のように椅子にドカッと腰掛け、ドヤ顔を決めた。

「でさ! 黒龍のこと、詳しく教えてくれよ! 俺が一撃で片付けてやるからさ!」


「……黙ってなさい」

隣に座るルミナスが、ぐいっとソウマのほっぺを引っ張る。


「ずびまべん……」

情けない声を漏らしながら、ソウマは引っ張られた頬を必死にさすった。


「はぁ……」ルミナスがため息をつき

リアナは困ったように笑い、俺は額を押さえて小さく息をついた。

(こいつ、どこでも調子だけは崩さねぇな……)


――だが、空気を変えたのはダグラスの一言だった。


「先ほども言ったが先日、もう一人の勇者がここへ来ている」


その場に一瞬、緊張が走った。

ルミナスが目を細め、ソウマが「……銀髪野郎か!」と声を上げる。


「そうだ。ユウマと名乗っていたな」

ダグラスは腕を組み、重々しく頷いた。

「彼もまた神の神託を受けた勇者として、すでに黒龍の調査に向かっている」


「討伐じゃないのか?」俺が問い返す。


「そうだ。討伐の前に、まずは存在の確認だ。黒龍の痕跡は西の山岳地帯にあるが……調査ですら帰ってくる冒険者は少ないからな。まだ目撃情報は断片的にすぎん」


「へへっ、ならユウマより俺の方が先に黒龍に辿り着いて、ドカンと一発で仕留めてやる!」

ソウマが拳を振り上げる。


「ソウマ様……!」リアナが慌てて制止する。

「今は調査の話を聞いてるんですよ!?」


「だってよ〜黒龍だぞ? 勇者ならやるしかねぇだろ!」


「……少なくとも話を最後まで聞いてからにしなさい」

ルミナスはため息交じりにソウマの額を小突いた。



ダグラスは俺たちをじっと見回し、低い声を響かせた。

「黒龍の存在は、まだ確証がない。だが、周辺の冒険者や村人たちが次々と被害を訴えているのは事実だ。――そこでだ。お前たちにも調査を任せたい」


「調査か……」俺は小さく呟いた。

(黒龍が本当に“ただの龍”じゃない可能性を見てるからだな)


ルミナスが静かに口を開く。

「黒龍が現れたという詳しい場所。地形や噂の詳細、分かる限りの情報をいただける?」


「ふむ。後で資料をまとめて渡す。それと……」

ダグラスは俺をじっと見据えた。

「お前妙に落ち着いているな。お前も勇者パーティか?」


「まぁ……そんなところだ」

肩をすくめて答える。


「ふっ、頼りにさせてもらおう」





部屋を出る直前、ソウマがまた大声を張った。

「よーし! ユウマより先に黒龍を見つけて俺が倒す! これであいつより俺の方が上だってこと証明されるな!」


「……証明以前に、まず転ばない練習をしなさい」

ルミナスの冷たい突っ込みに、リアナの笑い声が重なった。


俺は窓から外を見ながら思う。

(ユウマも動いている。黒龍の影の先に、きっと“魔の世界”の気配があるはずだ)


物語は、確実に次の段階へ進もうとしていた。

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