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世界に転生した俺は、勇者たちを導く  作者: 鈴木泉
第1章 出会い

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第2話 世界と青年


数日後――


小さな村の外れで、俺はまた彼らと出会った。

そう、数日前にすれ違った三人組の冒険者パーティだ。


「よし! 今日は西へ進むぞ!」

剣を掲げて堂々と宣言する黒髪の青年。ソウマ。


(……村は西にはないけどな)


「え、えっと……でも村は東にあるって……」

巫女服姿の少女、リアナがオロオロと口を挟む。

「そうね。地図を逆さに持ってるわよ」

銀髪の魔法使い、ルミナスが冷ややかに突っ込んだ。


「な、なにっ!? 俺は勇者だぞ! 方向を間違えるわけが――」


(あいつ...勇者だったのか)

俺は気になって後をつけていた。


その瞬間。

草むらから低い唸り声が響き、灰色の毛並みを持つ狼型の魔物が飛び出した。

旅人を襲うことで知られる下級魔獣――黄昏の狼【ダスクウルフ】だ。


前にいた村人が襲われていた。

「た、助けてくれええ」


「俺の出番だ!!」

ソウマが剣を抜いた。だが勢い余って柄を取り落とし、剣は地面に突き刺さった。


「ほんとバカね」ルミナスが呟き、詠唱を始める――が、その魔力は強すぎて周囲の木々まで巻き込もうとしていた。


(このままじゃ森ごと吹き飛ぶ!)


俺は前へ踏み出した。地面をわずかに揺らし、ダスクウルフの動きを止める。

その隙に剣を拾い、横薙ぎに一閃。


「ガゥッ!」

悲鳴を上げた魔獣は地に倒れ、そのまま動かなくなった。


「……」

しばし沈黙。


「お、おおっ! やるじゃないか!」ソウマが驚きと興奮の入り混じった声を上げた。

「なかなか腕が立つわね」ルミナスが冷ややかに評価する。

「すごいです! 本当にすごい!」リアナが瞳を輝かせた。


俺は剣を地面に突き返し、肩をすくめた。

「……通りすがりの旅人だよ」



「あ、ありがとう!助かったよ」

そう言うと村人は走っていった。


――


魔獣を退けた後、俺は三人と一緒に案内がてら村へ向かった。


「いやぁ、助かったな。 勇者である俺が仕留めるはずだったが、まあ今日はお前に譲ってやる!」

ソウマが胸を張って笑う。

「剣を落とした勇者の台詞とは思えないわね」ルミナスが冷たく刺す。

「えっと……でもソウマ様が勇敢に飛び出したから、きっと魔物も怯んだんですよ!」リアナが必死にフォローする。


……なんというか、この三人のバランスは絶妙に噛み合ってない。

俺は後ろを歩きながら、心の中で何度もツッコミを入れていた。


――


村に着くと、事情を知った村人が駆け寄ってきた。

「聞きましたよ!村の者を魔物から助けてくださってありがとうございます! お食事でもどうですか?」


「おお、それはありがたい!」ソウマが即答する。

俺も断る理由はなかった。むしろ少し腹が減っていたところだ。


――


粗末ながらも温かい料理が並ぶ食卓。

その場で、ようやく正式な自己紹介が始まった。


「俺は勇者ソウマ! この時代を救う使命を背負った男だ!」

ソウマが胸を張って高らかに名乗る。


「……はいはい、自称ね」

ルミナスが小さくため息をつき、冷ややかに突っ込んだ。


「じ、自称って……そんな言い方……!」

リアナが慌ててフォローしようとするが、ソウマは気づかず笑顔のまま。


「巫女のリアナと申します。どうぞよろしくお願いしますね」

「ルミナス。見ての通り魔法使いよ」


三人の視線が俺に向く。


「……俺はテーレ。ただの旅人だ」


名前を口にした瞬間、妙な感覚が胸をよぎった。

世界そのものの俺が、人間として名乗りを上げている――。

当たり前のことのはずなのに、不思議と胸が熱くなる。


「テーレさんですね!」リアナが嬉しそうに笑う。

ソウマは豪快に肩を叩いてきて、ルミナスは興味深そうに俺を見ていた。


賑やかな食卓の中で、俺は妙な安心感を覚えていた。

世界そのものである俺が、こうして人間たちと同じ席についている――。


……悪くない。少なくとも、あの孤独よりはずっと。

読んで頂いてありがとうございます!!


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― 新着の感想 ―
戦闘シーンもサクッと爽快で、最後に「人間として名乗る」テーレの胸の熱さにグッときました。
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