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世界に転生した俺は、勇者たちを導く  作者: 鈴木泉
第2章 勇者選別

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第18話 勇者誕生


翌日、朝の宿にて


「……いただきまーす!」


カリッと音を立てて、ソウマが豪快にパンをかじった。

まだ朝も早いというのに、テーブルの上には湯気の立つスープと焼きたての黒パン、香ばしいチーズと干し肉が並んでいる。宿の主人が気前よく用意してくれた朝食だ。


「ちょっとソウマ、パン三つも取ったでしょう」

ルミナスが冷たい視線を投げる。

「うるせぇ! 勇者は体力勝負なんだ! 腹が減っては戦はできぬってやつだ!」

ソウマは胸を張ってさらにパンをちぎる。


「ソウマ様は食べるのも勇ましいんですね!」

リアナはきらきらした瞳で見守っている。

「……褒めてるのか、それ」

俺はスープを口にしながらぼそっと呟いた。


「テーレは食べないのか?」ソウマがパンを突き出してきた。

「俺はもう十分だ。……っていうか、パン減りすぎだろ。誰の分だと思ってんだ」

「俺の分だ!」

「……開き直ったな」

ルミナスはため息をつき、スープを一口。

「まったく。こんなのが勇者でいいのかしら」


「いいんだよ! 俺は選ばれる! 見てろよ!」

ソウマは胸を張り、口いっぱいにパンを頬張った。


(……いや、選ばれるかどうかはこれからだろ)

俺は心の中で突っ込みを入れつつ、スプーンを置いた。



王都の道


朝食を終えると、俺たちは王都の石畳を踏みしめながら大神殿へと向かった。

街路はすでに人で賑わい、行商人の声や荷車の音が響いている。あちこちから「今日は勇者誕生の日だ」と囁く声が耳に入った。


「ほら見ろ、俺の噂でもちきりじゃねえか!」

「あなたかどうか分からないわ」

ルミナスが冷ややかに返す。


「でも……でもすごいです! 勇者様を見に、こんなにたくさんの人が!」

リアナは両手を胸に当て、目を輝かせていた。


(勇者……な。群衆が期待してるのは““英雄誕生”か……)

俺は周囲を見渡しながら思った。




王都の中心にそびえる大聖堂は、やはり圧巻だった。

大理石の柱が林立し、天井は空を支えるかのように高い。

ステンドグラスから射し込む光が床を染め、荘厳な気配が辺りを包む。


「おおおお……! 何回来ても……すげぇ!」

ソウマが目を丸くする。


「……まあ、王都の象徴だもの。驚くのも無理はないわ」

ルミナスはそっけなく言ったが、その瞳にも一瞬だけ感嘆の色が宿った。


「神様に見守られてるみたいです……」

リアナは祈るように両手を組む。


俺は黙って一歩踏み出した。




「女神の神託を始める!」


神官の声が響いた瞬間、広間の天井から光が降り注いだ。

群衆はどよめき、勇者候補の2人が一斉に顔を上げる。


光の中に声が落ちてきた。

柔らかく、それでいてどこか間の抜けた声。


――聞こえているのは、ソウマとユウマ、そして俺だけだった。


「あーあーマイクテスト〜」


(………!!! マイクテスト??)



「私は 女神 "ルミア“」

「勇者へ神託を授けます。ソウマ・ミツルギ! ユウマ・ミツルギ!」

「あなた方2人は、魔のものを圧しこの世に平穏をもたらす使命を与えます。」


(この声...俺が転生する時に聞いた覚えがあるな..ん?)



「おおおおおお!?」ソウマが心の中で叫ぶが喜びと疑問が入り混じっていた

「……?」ユウマは不思議そうな顔をした。


女神は少し取り乱した。


「ん……? 二人…? あれ、ほんとに二人?ちょっと紙見せてー? あー、ありがとありがと。」

「なるほどね〜。兄弟か〜まあいいや! 二人とも勇者で!」


(ん?? そんな適当でいいのか??てか兄弟??)

思わず声を上げそうになったが、俺しか聞こえていないことを思い出して唇を噛む。


「は? 兄弟!?ミツルギ??」ソウマがボソッと声を漏らした。

ユウマは舌打ちをして横を向いた。


女神の声は続く。

「あーそうそう。二人とも、ほら、あの初代勇者の

リュウヤ・ミツルギ。その血筋だから大丈夫大丈夫!」


(……大丈夫じゃねえだろ。説明不足すぎる)

俺は頭を抱えた。




すると突然光が強くなり、周囲の音が消えた。

俺と女神だけの、静止した世界。


女神の見た目は綺麗な長い金髪でTHE女神なのだが適当でガサツなのでずっとこの世界を任せられている、同期の女神はもっと上位の存在になってるらしい。


「ん〜?」女神が間の抜けた声を漏らす。

「君なんか……変な感じだねえ。むむむ〜?何者なのかな〜?」


「お前がここに転生させたんだろ! 佐藤だよ!」

俺は女神に叫んだ。


「あれ、なんで人になってるの!!」


「どういうことだ?」


女神が慌てて口を手で塞いだ。

「えっとほら、私、世界を観察するのめんどくさいから〜……その〜君を人じゃなく世界に転生させたじゃない...?」


「おい!そんな適当な理由だったのか?」

「しーっ!」女神は必死に口に指を当てる。

「大きい声で言っちゃダメ!他の女神に聞かれちゃうじゃない!」


「ふざけるな……」俺は眉をひそめ女神を睨む。

「勇者どころか、こっちの世界に魔界の代弁者まで出てきてるんだぞ」

「てか、リュウヤ・ミツルギって転生者だろ?俺の他にもいたのか?」


「えー、そうなの? あー、でもそうかぁ……。

君の存在、ちょっと思ったより重要になってるかもね〜?」

女神はケラケラ笑いながら、意味深に言葉を残した。


テーレは呆れた顔をしていた。

「この女神ダメだな...ところでリュウヤ・ミツルギの事は無視か?」


「あ、ごめんねー時間だわ。また今度教えるねー」


去り際に


「あーー、結婚したい。貢いでもらって働かなくてもいい生活送りたいわー」


と言い残して女神は消えてった。


(女神に結婚なんてあるのか...?)



次の瞬間、世界が戻った。

光が広間を満たしその後薄れていった、観客が歓声を上げる。


神官が告げた。


「勇者が誕生した!!」


女神のお告げが書かれる書物に字が浮かんだ。


神官がびっくりした顔をした。

「え?あってる?これ本当?

あー、おっほん。ソウマ・ミツルギ!ユウマ・ミツルギ!2人が勇者となりこの世界に平穏をもたらす!」


周りの人々は「え?」と一瞬時が止まったが次には歓声が響いた



「おおお勇者が選ばれたぞ!」

「二人!? すげえ!」


ソウマは拳を掲げ、ユウマは無言のまま。

リアナは涙ぐみ、ルミナスは冷ややかに「……良かったわね」と呟いた。


俺は黙って二人の姿を見た。

(やっぱり俺はただの観客じゃ済まないらしいな)


勇者二人と、いい加減すぎる女神。

そして俺自身――世界としての存在。


この先、どんなことが待ち受けているのか。

その答えはまだ、誰も知らなかった。

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