命を終わる
はじめまして、島崎トウストです。始めて小説を書かせていただいたので、随所におかしな点や改善点があると思います。その際は遠慮なく仰っていただけたらと思います。それを踏まえてお楽しみいただければ幸いです。
ーえっ?ー(爆発音)
街中に響く爆発音。街の喧騒。すすり泣く声。うるさい警報音。聞き慣れない音ばかりに包まれ、目の前は真っ暗。でもただの暗闇じゃない…。どこか【死】を連想させる。言葉に表せられない光景。
生まれ変われたりするのかな?生まれ変わるなら…
【妖怪が良いな】
妖怪は素晴らしい!
幽霊と違って「見たことある!」という話が少ないし、まさに不思議で怖くて奇妙で……
しかしどこか神秘的。
俺はそんな妖怪の美しさに魅了され、それと共に憧れていた。
俺自身が妖怪になれれば…
と、そんなことを考えながら、初めて見る目の前の光景に呆けていた。こういうTHE.ピンチ、というか、もう後の祭りなのだが…こんな状況こそ、悲しいやら辛いやらの感情が湧かないのはなんとも不思議だ!
俺こと【八坂.真】は高校生で、妖怪…つまり奇妙で不思議で理解不能。科学の力でも解明できないような謎めいたものや、自分や世間も経験したことないような事象が大好き!
そして逆に、平凡で、普遍的なもの。誰でも経験していて、皆と同じようなことと科学の力が大嫌い。
そんなちょっと変わった俺でも高校生活は充実していて、同級生とも仲良くしていて、友達も多かった。中学のころは運動部に入り、選抜チームに入るほど頑張り、高校では絵を描きたかったので美術部に入り、楽しい人生を送っていた。
しかし…
どこか足りなかった。
もっと奇妙で、へんてこな人生を送りたかった…例えば、
不思議な力を手に入れたり、
幽霊と友達になったり。
空飛ぶクルマに乗ったり、
火星に行ってみたり…
あわよくば妖怪に出逢ったり!
そんな奇々怪々で飽きることのない人生を。
真「あー…なんか退屈だったなぁ…。」
おれの最期は突如、傍にあったビルが爆発し、それに巻き込まれ、俺の体は散り散りになって…という感じだ。死んだことを思い出すと、どうも名残惜しくて、遅れて悲しみがやってくると共に、
【死】
という始めての体験に少し喜びを感じている。自分でも、変態だというのは自覚している。人生を終え、家族や大事な人を残して逝ったというのに…
全くおかしな性分だ。考え事をしていると
そんな俺の頭に一つの単語がよぎった。
ー転生ー
それは、一度死んだ者が再び生を受ける事である。まさに奇怪で珍妙!俺の大好きなものだ!
そうだ!まだ第二の人生があるじゃあないか!
「転生」は、神から授かった特別な能力で無双する!とか、
異世界に転移してハーレムを築く!とかの
創作物ではよくある展開だ。
だが、そんな普通なものに興味はない。
転生するなら、何回も言うが
やっぱり妖怪になりたい!
そして、まだ誰も成し遂げたことのない、
非凡なことに、挑戦したい。
と思ったのも束の間。俺の目の前が美しい光に包まれ、
気付けばそこは闇とは真逆の場所だった。
…ここはどこだろう?辺り一面真っ白だ。
地面は全部真っ白で、
空?はほんのり黄金に輝いている…
それはまるで…
真「…天国?」
それは実に面白い!死後の世界なんて初めてだ!まさに怪力乱神といったところか。
そうなれば……
天使を見てみたいな!
……にしても変な感覚だ。先程から手足が見当たらない。動かしている感覚はあるのだが、これは言葉では上手く形容できないな。
魂…の状態かな?死ぬとはこんな感じか…とっても面白い!
自分の体の違和感に喜びを覚えたところで、突如目の前に一人の女性が現れ、高級感のある椅子に足を組んで座っていた。
黄色く輝く長い髪、透き通るような肌…
まさに天使のようだ。
にしてもびっくりするな!さっきまで誰もいなかったのに!独り言聞かれてた?なんて思うと恥ずかしい。それに、全く気配を感じなかった。
そして…なんだろうこの雰囲気とオーラは…おれは勘が鋭い方ではないがすぐにわかった。
こいつは人間じゃない。
もっと近くで見てみよう!
……んん?んー?見た目はどうやら人間そっくりだが、どこか違和感を感じる。とても美人で華奢だが、怪物と相対しているようだ。だがそれ以上に……
偉そうだ!!
遠くから見たら天使だったのに!
鋭く見下すような目つき
金髪
高圧的な視線…
初対面で申し訳ない。天使は天使だが、
それは容姿の話であって所作が…
ちょっと苦手なタイプだ…
真「あ、あの……ここは?」
??「近いです。」
真「あっスイマセン…」(離れる)
??「ここは転生の間です」
真「て……転生の間?なんだそれ!聞いたことない!
…ところで?確認なんですが、私は死んだのですか?」
??「はい。貴方は死にました」
真「……え?は?「死にました」って…いやまぁ分かってますけど…そんなにハッキリ…
うっ…いやぁ…」
「転生の間」という奇っ怪な空間と素晴らしい言葉の響きを堪能する間もなく実感させられた。
自分で聞いといてなんだか、俺も人間だ。
全く慣れないものだな。
そうだ…俺は死んだのだ。
と真は改めて自分に言い聞かせる。
いざ死んだという事実を突きつけられると、やはり辛くなってくる。しかし、それに興奮している自分がいる。
あと!死んだ哀れな人間に対して冷徹な態度を取るこの女に腹が立つ。
哀楽怒の感情が一度に真を襲う。
真「わ、分かりました分かりました。それで、貴方は一体何者なんですか?」
アヌ「私は【゛女神゛アヌビス】。第二世界【アルケイン】の管理者にして、転生者の取扱を担当しています。」
真「あ、あるけいん…?だいに…全く飽きないな。申し遅れました。僕は…」
アヌ「八坂真さん、ですね。わかっております。」
真の言葉を遮るようにして、アヌビスは教えてもいない名前をつぶやく。
それに対して真は顔面蒼白になりながら目を細める。それだけ、気持ち悪かったのだろう。
いくら美人な女神といえど、自分の知らないところでの情報漏洩は怖いことに変わりないようだ。
真(知らない人にいつの間にか名前がバレてるっていうのは非常に気分が悪い。)
アヌ「突然かもしれませんが、貴方には私たち女神の抱える問題を解決していただきたい。」
真「本当に突然ですね。問題…といいますと?」
アヌ「女神は私を含め7人おり、
それぞれが一つずつ、自分の管理する世界を所有しています。
そして、私の管轄、もとい貴方の転生先である第二世界【アルケイン】の…」
真「の…?」
アヌ「魔王を討伐していただきたい。」
真(ま、魔王ゥ!THE王道ーーッ!ベターーッ!あ・り・き・た・りぃぃぃっ!!他人の指紋が分厚く積み上がったシナリオ!!!
あー…モチベが…どんどん消えていくぅ…)
アヌ「何か文句でも?」
真「あーいや、僕のいた世界では「異世界に魔王は常識」っていう価値観だったので…」
アヌ「何を馬鹿なことを!魔王など、どこの世界にも基本的に現れないのが常識なのです」
真「あーそういうもんですか…(だからといって、日本で培われた「魔王はベタ」っていう考えが変わるわけでもないけど…)」
真はがっかりした気持ちを内側に収め、適当な返事をする。
すっかり大きな目標に興味を失った真は遂に自分の爪とにらめっこを始める
アヌ「……三体。(ボソッ)」
真「あ~はいはい。魔王ね〜……え?なんて?」
アヌ「その魔王が…一気に三体も現れたのです。」
真「さ、三体!?!?」
その言葉に真は歓喜する。モチベーションが近寄ってくる音も聞こえる。
普通とは違う、三体の魔王という前代未聞の環境に、魅力を感じたのだろう。
アヌ「貴方には、その魔王の討伐と、この異常事態の要因の調査。この二つを任務として課します。」
真「面白いですね…!あ、じゃあ一つ聞いていいですか?」
もう既に真の口角は上がっている。
欲しいおもちゃを買ってもらうときの
子供のようだ。それだけ、この質問の答えを待っていたのだろう。
真「スキルとかって貰えるんですか?」
アヌ「えぇ、差し上げますよ」
真「よっしゃーーーーッ!!……あ、すいません。興奮しちゃって。」
アヌ「……。私は、これまで、その人の人生に大きな影響を与えたものにちなんで、
スキルを創ってきました。
例えば、有名な作家ならば、その人の代表作をモデルに作りましたし、
柔道に打ち込んでいたものにはその技術を強化するスキルを、
はたまた剣が、好きだったものには剣聖のスキルを与えました。」
真(おー…聞けば聞くほどわくわくするな…)
アヌ「それでは、スキルは転生してからステータス画面から見てください。
強く念じれば画面が開くはずです。そして、最低限のアイテムが入った袋の魔道具をお渡ししますので、うまく活用してください。」
真(ナ、ナニィッ!?教えてくれないとは…
クソッ…転生してからのお楽しみってか…!)
アヌ「それでは…転生を始めます。準備はいいのですか?」
真「は、はい…大丈夫です。」
するとアヌビスは真に向けて手をかざす。すると、白い光が真の足元から登り、巨大な魔法陣が現れる。遂に転生するのだ。
真(よし…遂にこの時が来た…!!始まるんだ。俺の…俺の第二の人生が…!!)
アヌ「あ…一つ忘れていました…」
真「……?」
アヌ「私の気まぐれですが、貴方の【願い】、叶えておきましたよ。」
ーーーえ?ーーー
そんなアヌビスの謎めいた言葉と共に、真は白く輝いた光に包まれ、新しい世界へと足を踏み入れる。
次回から、後書きではそのお話の中で出てきた妖怪を紹介しようかなと思っています。このコーナーを機に、妖怪に興味を持っていただいたなら嬉しいです。