明日
猫。
癒しをくれる存在である。どんなに嫌なことがあっても、あのふわふわな毛を撫でて忘れられる。一緒に遊んだり、寝たり、まるで兄弟のような存在でもある。「ニャー」と何か語りかけてくるが、きっと会話がしたいのだろう、こちらも会話ができるならしたい。
「君は1日をどのように始めたいですか。陽の光を浴びて起きる、何か希望を持って起きる、朝の習慣は大事だと思うのですが。」
「特にありません。普通に起きれれば。」
―明日も生きるのが怖い、今すぐにでも死にたい。
そう考えている人をどのように救えるのだろうか。同じことを考えている人との会話を何回通しても一向に答えは見つからない。それは、人によって悩んでいる内容が違うからかもしれないが、きっと僕に救える力がないからだろう。だからどんな趣味を持っているか、その趣味を続けて生きる希望をとか、仲のいい友達や親友、家族は君を大切に思ってるとかありきたりなことを言ってしまっている。こんな悲観的に考えていれば、お前も死にたいって考えるんじゃないのかって思われそうだが、当たり前だ。早く死ねるなら死にたい。
「趣味は何かありますか。」
「趣味と言っていいのか分からないんですけど、家のねこと戯れるのが好き。」
猫。昔おばあちゃん家にペルシャの猫がいたことを思い出す。
「その猫、名前はなんていうんですか。」
「ちこ。」
その名前を聞いた瞬間、僕が小さかった時に一緒にいた猫との思い出が蘇ってきた。猫アレルギーを持っているが僕の家で飼っている訳ではなかったから、医者にはあまり猫と関わるなと言われていながらも、一緒に寝たり、遊んだりしていた。
「僕も昔猫飼ってました。同じ名前です。」
「ねこかわいいですよね。私、いつもちーちゃんに愚痴るんです。あの子だけは分かってくれる気がして。」
「ちーちゃん、いいですね。絶対分かってくれてますよ。」
動物か、なんて考えながらその日の相談は終わった。なぜ言葉が分かって理解もできる人間がいるのに、そのどちらも不可能な動物が人を救えるのだろう。僕は勉強をすることが好きで、疑問に思ったことはすぐに解決して知識として得ている。しかし今回はそう簡単にいかない。猫のかわいさでその時だけ嫌なことを忘れられるから、という根拠も何も無い答えしか考えることができない。今日言われたことを思い出して余計に違うんだろうと思った。
―あの子だけは分かってくれる気がして
今考えても、何も思い浮かばない。もう寝て、また明日考えることにしよう。
ep.1 明日




