番外編1 旧王国統一記 序章
前置き
本書は旧王国時代に編纂された「王国統一記」の複写であり、原文に一部訂正と修正を加えたものとなる。
尚、端的に旧王国時代の史実のみを求める場合は「旧王国史書」を手に取る事を勧める。
以上。
―はじめに―
我ら王国が統一されて早10年。
未だ他国との小競り合いに巻き込まれることはあれども、自国での組織的な争いは起きるに至っていない。
そう、我らはあの統一戦争に勝利し、確かな平和をこの手に勝ち取ったのだ。
あの大戦以降、3人の王は民の為に精力的に公務へ励み、その姿に胸を打たれた者も少なく無いはず。
地獄のような時を経て、今我らはこの平和に心から感謝をしなければならないと、その背中越しに強く思わされる日々である。
あの大戦で大切な何かを失った者も居るだろう。
未だ憎悪が消え入らない者も居るだろう。
だが我らは生き残ったのだ。
それだけを胸に、次世代へこの希望と絶望の歴史を繋ぎ続けなければならない。
それでしかこの平和を保つ手段は無いと、私は強く考える。
本書はそんな想いから王をはじめとした王族関係者、そして先の大戦でその傍らに居た者たちへの綿密な取材により編纂されたものである。
これを読む若者たちが未来に何を想い馳せるのか、どんな平和を望むのか、その行く末を出来る限り見届けたいと、この老体ながらに思う。
元老 イギル=アガストン
―序章―
ノースト王国(旧王国名)の東、モノラという村で彼らは産まれた。
生まれは特別に裕福という訳でも、はたまた貧しいという訳でも無い。
だが彼ら自身の中には類稀なる才が眠っていたのは事実である。
同じ年に生まれ落ちた彼らは、それぞれ「ホルド」、「ウィグレ」、「シャラ」と名付けられ、成長した3人は家族の意向により、村で唯一の学び舎で学業に励むこととなる。
既にその頃には彼らの目覚ましい才能は片鱗を見せ、その学び舎で成長していくにつれて互いが互いを只者では無いと認識するようになった。
ある時は学友に、またある時は好敵手に、またまたある時は親友にと、青年になる頃には互いに離れ難い存在へとなっていく。
成人を迎える頃には、文武において村で敵う者たちは居なくなり、3人は広い景色を見たいと村を飛び出す。
これが彼らの、いや、この国の命運を左右する旅となることを、この時はまだ誰も知る由も無かった。




