ウワサ
とある田舎の村に、古い洋館がひっそりと佇んでいました。その洋館は何年も前に閉鎖され、住人もいなくなり、今ではすっかり朽ち果てています。しかし、村人たちの間では、その洋館に幽霊が出るという噂が絶えずなかには気味が悪いから取り壊してしまおうと考える者もいました。
ある日のこと、小学生のれいと友達の太一は、その洋館の前を通りかかりました。太一が言いました。「なあ、れい、あの噂、本当だと思う?夜になると幽霊が出て、子どもを連れて行くって。」
れいは少し怯えながらも、強がって答えました。「そんなの、ただの噂だよ。怖がらせるために誰かが作った話に決まってる。」
その日の夜、れいはなかなか眠れずにいました。窓の外を見ると、月明かりが洋館のシルエットを浮かび上がらせ、不気味な影が揺れているように見えました。気味悪さを感じながらも、れいはなんとか目を閉じ、眠りにつきました。
翌日、れいは学校で太一に会いました。太一は青ざめた顔で、震える声で話し始めました。「れい、聞いてくれ。昨日の夜、洋館の近くで何か見たんだ。真っ白な影が動いてて、急に消えたんだ。」
れいは太一の話を聞きながらも、ただの夢かもしれないと自分に言い聞かせました。しかし、その晩もまた、れいは不安な気持ちで眠りに落ちました。
数日後、れいと太一は再び洋館の前を通りかかりました。太一が何かに気づいたように言いました。「ねえ、れい、見て。洋館の窓に誰かいる。」
れいは心臓がドキッとしながらも、窓を見ました。確かに、薄暗い窓の向こうに白い影が揺れているのが見えました。恐怖で固まってしまい、その場を逃げ出したくなる気持ちを押さえながら、れいは冷静に考えました。
「太一、私たち、もっと近くで確認してみよう。もしかしたら誰かが住んでるのかもしれない。」
二人は勇気を出して洋館に近づき、扉を押し開けました。中は薄暗く、埃が舞うだけでしたが、確かに何かの気配を感じました。階段を上がり、あの窓のある部屋にたどり着くと、そこには…
一枚の古びた鏡が置かれていました。その鏡の前に立つと、自分たちの姿が映り込みます。しかし、よく見ると、鏡の中には二人の他にもう一つの影がありました。さっき見かけた白い服を着た女の子だったのです。
れいと太一はその少女の話を聞くために近づこうとしましたが、突然、背後から冷たい風が吹き抜けました。振り返ると、そこには何もありませんでした。しかし、その瞬間、れいはあることに気づきました。
「太一、これって…」
その洋館には実際に幽霊が住んでいたのです。しかし、彼らが見た幽霊は子どもたちを連れて行くわけではなく、ただ一緒に遊びたかっただけだったのです。噂とは違い、その幽霊は孤独に耐えられず、自分の存在を誰かに知ってもらいたかっただけでした。
しかし、その幽霊の姿を見た村人たちは恐れ、噂を広めることによって、さらに彼女を孤独にしてしまったのでした。れいと太一はその真実を知り、幽霊の友達になってあげることを決意しました。それ以来、その洋館に幽霊の噂は立たなくなり、彼女は静かに成仏したのでした。
そして、村の子どもたちは「噂に惑わされず、本当の姿を見極めること」の大切さを学んだのでした。