『SHIROBAKO』を観て
シンパシー。僕は作業所で働いている。仕事は週二回の病院での病院でのリネンやおむつ、そしてゴミの回収作業。それと日々作業所が取ってくる様々な半端仕事が主な業務だ。工賃は良くない。歩合給で、月めいいっぱい真面目に働いて、並のアルバイター程度の給金がもらえる。作業所の空気はぬるく、仕事熱心とは言い難い(僕と友人のせいだが)、僕たちを管理するスタッフには素早い機転と頭脳、そして運転技術が求められる。そして、こちら利用者はと言うと、背中をただ使うか手先をあくせく動かすかすればいいのだ。中には邪魔な置物になるやつさえいる。
僭越ながら、この業界(アニメ業界)は、自分が身を置いている場所と共通項が多いような気がした。そこは人々に居場所を与える場でもありながら、同時に病みつつある場でもあると思うから。
武蔵野アニメーションで制作として働く宮森あおい、美術の絵麻、声優志望のずかちゃん、後輩として遅れてこの業界に入ってくるみーちゃん、りーちゃん、その他大勢のアニメーションスタッフ、関係者、原作者等によって話は構成されていく。
このアニメーション会社は大体締切に追われている。よって制作の宮森あおいもいつも何かに追われている。そんなこんなで大の大人がギャースカやるアニメだった。
「いつか終わる」とか「大ヒットを飛ばす」とか大きな希望を抱えているのに、彼らはほとんど裏切られながら生きている。その小さな裏切りに一矢報いるため、彼らは働く。そりゃもう馬車馬のごとく働く。
登場人物はなにも夢に向かってまい進する人物で占められてはいない。声優志望のずかちゃんは居酒屋で働きながら、オーディションに落選を繰り返す。そして最終的には自宅で他の声優の子を見ながら、ビールを飲み、独り言をこぼす、ぐらいに落ち込む。
ツキのないやつがいれば、ツキのあるやつもいる。りーちゃんはとんとん拍子に脚本家の階段を駆け上がる。そのことについて一言チクリと刺されたりもするが、すぐに巻き返す。死んだ兄貴でもいるんじゃないかと言いたくなるくらいこの辺りはズルい。
平岡というキャラクターがとくに印象に残った。個人的にはああいう奴をみると、弁護したくなる性分だからだ。どんな奴かはTUTAYAでDVDでも借りて、見てほしい。年末だし、年の瀬のお供にはこのアニメはいいじゃないかと思う。昨年か一昨年、何かで一挙放送されていたのを思い出して、このDVDを借りた。同じ所(PAワークス)からウイスキーの映画も公開されているらしい。
最後に作品を作るには、手間隙かけた試行錯誤と議論が必要で、そしてそれらは当然、締切に追われているのだということを学んだ。と、思う。
命を削る姿勢は覚悟だ。