魔力統べる命樹杖
見た中で二番目に状態の良かった部屋を出て、隣の部屋のドアをノックする。ちなみに一番はアカネの部屋だ。
「アカネ、もう起きてるかー。装備の強化をしようと思うんだがー」
「分かったわー。あと10分くらいで出るわー」
ふむ。寝起きという感じでも無かったし、一度自室に戻るか。
「少し時間があるな。実験と準備運動を兼ねててきとうな合成でも試すか」
取り敢えず余ってて失っても痛手では無く、それでいて相性良さそうな組み合わせは……木の枝と雑草でやってみるか。
そこまで気合い入れる必要も無く、ささっと陣を出して『木の枝』を左に、『雑草』を右に置いてマナを巡らす。
「これは…変な感じだな。前の三回とは感覚が違う」
例えるなら、今までの三回は左に置いたアイテムに右のアイテムを流し込み馴染ませる様な感覚だったが、今回は両側のアイテムを混ぜ合わせ一つにする様な感覚だ。
そんな事を考えていると陣が光り輝き、アイテムが完成した。
「うっ眩しい。今までより光っていたな?『鑑定』」
【天狗の団扇】
八つに分かれた葉に持ち手のような茎が生えた葉っぱ。
煽げば強風を起こすという伝説をもつ。
※アイテムとして使用すると消滅
・装備効果
MATK+20
風属性強化
・アイテム効果
任意の対象一体を10〜100km吹き飛ばす。
「は!?何だこれ!まさかさっきの輝きは大成功とかだったのか!?」
いや、何もかもが規格外過ぎる…。MATKの上昇値が俺の虫鼠の歯短剣のATKの四倍もある上、アイテムとしても使える?明らかに現状手に入れられる物じゃないだろ……。
「ねえートウヤー。呼んだ本人が居ないのはやめてよー」
そうだ、アカネを待たせていたんだったな…。コレの事は隠しておくか。
ドアを開けアカネに謝る。
「すまん。待っている間に少し錬金術の実験をしていたら集中してしまった」
「ふーん。それで私を呼んだ理由は何なの?」
「その錬金術でアカネの装備も強化しようと思ってな。任せてくれるなら装備を渡してくれ。装備二つなら使うアイテムもアイテム分配の範疇でいいだろうしな」
「それで貴方の装備が昨日と変わってたのね。それじゃあ作る装備は出来ればINT、MYS、MATKを重視してね?」
「了解。それっぽい素材は使うことにする」
「そういえば詠唱ってした?」
「いや?特に表示されなかったからしていないが…」
「そう。私の体感だけど使う魔術に合わせた詠唱をすると威力が上がったり、負担が軽くなる気がするから試してみれば?」
そう言ってアカネはドアを閉め、部屋から出て行った。詠唱、か。彼女が俺を担ごうとしているので無ければ試してみるか。
「それより先ずは装備を調べるか『鑑定』」
【初心者の服】
※譲渡不可
※耐久無限
・装備効果
DEF+2
【初心者のロッド】
※譲渡不可
※耐久無限
・装備効果
MATK+2
「ふむ。装備の内容が殆ど変わらないのは予想通りだが、俺がナイフで、アカネがロッドなのは何故だろう?まあ考えても分かりそうにないか」
それで最初はロッドの強化をするか。そうだな使う素材は……いっそ全部錬金した物を使ってみるか?もし失敗したら最悪【天狗の団扇】でも渡せばいいだろう。
そして俺のMPは、さっき錬金した為残り20。出来る回数は四回だな。ならば素材作成に三回、最後の一回で完成させるか。
一度目は『マナの篭められた木の枝』と『マナの篭められたミント』で『魔力宿す枝葉』に、二度目は『マナの篭められたミント』と『ハート草』で『生命力宿すミント』に、そして三度目に『良質なミント』と『マナの篭められたミント』で『魔力宿すミント』を作成した。
『魔力宿す枝葉』
魔力を宿した葉っぱの付いた枝。
光に当たると僅かにマナを生み出す力を持つ。
『生命力宿すミント』
強い生命力を持ったミント。
土に植えれば直ぐに根付くだろう。
食べると僅かにスタミナを回復する。
『魔力宿すミント』
魔力を宿したミント。
土に植えれば直ぐにゴブリンを生み出すだろう。
中々悪くない結果だな。では、いよいよ【初心者のロッド】を合成するか。
そして今まで通り陣を出し、左に【初心者のロッド】を入れ、右に『魔力宿す枝葉』を置いたところで、試しに上に『生命力宿すミント』を、下に『魔力宿すミント』を投入した。そこでアカネの言葉を思い出し詠唱をしながらマナを込め始める。
「始まりの杖よ。魔を総べ術となすものよ。」
始めると同時に気付く。
「今、汝と合わさるは、魔を生み出し、生命宿す薄荷の葉、魔を蓄えし一振りの枝なり。」
今回の錬金は凄まじく難易度が高い。それこそ『バーサークポーション』や【天狗の団扇】などよりも遥かに。
「汝、その身に貯え、象を作り出し、命を癒して、全てを成す一助として、彼女の道行きの支えとなれ『アルケミー・シンセシス』」
ただ、気合と根性で大体成功させることが出来た。ただ、綱渡りの様なものを何十回と成功させたようなものであり、二度と出来るとは思えない程だ。
非現実の興奮に酔って、偶然と幸運を味方に付け、全力で詠唱を考えながらマナを陣に巡らしていき、必死になってどうにか完成させた。何故か今までの光は透明な白だったが、今回に限っては少々緑と赤色が混ざっていたようだが理由は……俺の詠唱か?
「まあいい。俺の黒歴史と精神力を犠牲にどんな物が出来たのか…『鑑定』」
【魔力統べる命樹杖+5】
錬金術士トウヤが創り出したこの世にただ一つの杖。
それは魔術士の杖でありながら一つの生命でもある。
そのため自ら魔力を生み出し、所有者の魔力と共に貯える。
また、大量の魔力を消費する事で仮の体を得て行動出来る。
これは生きているため自我を持ち成長する。
作成に大成功しており性能が引き出されている。
※所有者アカネと製作者トウヤ以外所持不可
・装備効果
INT+15
POW+15
MYS+15
MATK+30
魔力生成
魔力貯蔵(1/100)
自動回復
分体創象
「え、何これ知らん、怖っ」
お読みいただき、ありがとうございました
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