草原探索と初戦闘
さて、草原に来たわけだが並び方を変えるか。
「まず俺が行くからアカネは後からついてきてくれ。それと後で鑑定する為に出来ればそこら辺の物を拾っておいてくれ」
「分かったわ。私の牽制用に小石も取っておくわね」
そうして注意しながら草原をゆっくり進んでいくと、不意に数m先の草が揺れ始めこちらに近づいてくる。
「アカネ!何か来るぞ!」
後ろに声をかけ、右手のナイフを構える。
「ヂュィィィ!」
そう鳴きながら大型のネズミの様なものが飛び出して来た。
「チッ!」
気合いを入れてナイフをそれに叩き付ける様に振るう。その刃は相手の体を僅かに切り裂き、まとめて地面に叩き落とした。
「ヂィィ!」
突撃を邪魔され、傷付けられたそれは不満気に鳴きながら此方を睨む。
「『鑑定』」
思い出して咄嗟にスキルを使った。
『ムシネズミ』
HP14/15 MP2/2
弱点:火
「ムシネズミ?」
そう疑問に思ってよく見てみると、そのネズミには体の所々に甲殻があったり、目が複眼になっていたりと昆虫の様な特徴をいくつか備えていた。
「撃つわよ!横に避けなさい!」
そう背後からアカネの指示が聞こえると同時に横に跳ぶと隣を火の玉が通り過ぎていき、ムシネズミに直撃した。
「ヂ、ヂィィィ!」
そう断末魔を上げながらムシネズミは煙となって消えていく。
するとピコンという特徴的な音と共にリザルトが表示された。
[バトルリザルト]
討伐対象
ムシネズミ×1
獲得経験点
20
ドロップアイテム
ムシネズミの前歯、ムシネズミの毛皮
「取り敢えずは上手くいったな」
「まぁ初戦にしては上々ね」
そう互いに称え合った後、情報を共有する。
「まずは鑑定出来た情報から話す。あのモンスターの名前はムシネズミ。火属性が弱点だった。それと所々に甲殻が有ったから運が悪いと攻撃が防がれるかもしれない、ただ目が複眼になっていたんだが動体視力が良いとは思えなかった」
「ふうん。火が弱点だからあんなに簡単に倒せたのね。私、複眼と毛皮がドロップしたから後で鑑定してね」
「複眼もドロップするのか。俺は前歯と毛皮がドロップしたな。つまり、アイテムドロップは個人別なのか?だとしたら便利だな」
「ええ。ドロップの権利でいちいち騒がなくて済むのは便利ね。それに複数人で協力すればドロップが増えるという事でも有るし」
「それでこのまま街に戻るか?」
「MPにも余裕があるしもう何戦かしてからにしましょう。多分他にもモンスターはいるでしょうし」
「そうだな。少なくともあのゴブリン達はこの草原の何処かに居るだろうからな」
そうして再び草原を進み始めて少しすると右の方から鳴き声が聞こえてきた。
「ゲギャッ、ギギッ!」「グギャグギャ」「ギーギギャッ!」「グギャオ!」
足音を立てない様にしながらそちらを窺うと、4匹のゴブリンが茶色い何かを何度も殴りつけていた。
「先ずはゴブリンから調べるか。『鑑定』」
『ゴブリン』
HP7/10 MP4/4
弱点:火、氷
「次はあの殴られてる物体だな。『鑑定』」
ツチガメ
HP22/30 MP5/5
弱点:水
「アカネ、ゴブリンは火が弱点らしい。そして全員HPが削れている。それとゴブリン共が殴っているのはツチガメというモンスターだ。HPが非常に高いがおそらく見た目通り鈍重だろう。これなら俺は挑戦してもいいと思う」
「そうね……。いいわ、やりましょう。先ず私がゴブリンに一発撃って出来る限り巻き込むから、抜けてきたゴブリンを防いでちょうだい」
「了解、それで行こう」
「それじゃ行くわよ。ファイアボール!」
燃え上がる火の球は見事一直線に並んだゴブリン2匹に当たり、両方を燃やし尽くした。
「グギャッ!?」「グギギッ!」
こちらに気付いた残り2匹のゴブリンが、慌ててこちらに駆け出してくる。そこで俺がゴブリンとアカネの間に立ち塞がる。最初の時は混乱している最中に突然襲われ逃げるしか無かった。……だが今は違う!
「ここから先には一歩も通さんぞ、ゴブリン共!」
頼り無い得物を相手に向けて自身を鼓舞する様に声を張り上げる。そして、近づいてきた片方のゴブリンに振り下ろす!
「グギャ!?」
相手がアカネの方に注意していた為か、上手い事顔面を切り裂けた。
「グギ!」「グギャッギャ!」
手痛い反撃を受けた為か、警戒する様に少し離れた位置でこちらを窺っている。
「そんな悠長にしていていいのか?ゴブリン共め」
俺がそう言ったのと同時に、攻撃を受けていない方のゴブリンに向けて火球が飛んでいき、焼き尽くす。
「グギャーー!」
最後に残ったゴブリンに向けて何度もナイフを突き刺してトドメをさす。
するとゴブリンが煙となって消えさり、あの音が鳴る。
[バトルリザルト]
討伐対象
ゴブリン×4
獲得経験点
60
ドロップアイテム
良質なミント×2、マナの篭められたミント×2
「ゴブリンには勝ったな。あともう1匹いけるか?」
「MPは後ニ発分残ってるわ。最悪死に戻り出来るでしょうし、倒しに行きましょう」
そう決めてゴブリン共の元居た方向に向かう。
「ンガーメェ」
そこではツチガメが呑気そうに草を食んでいた。
「取り敢えず気付かれない様に近付いて、あの首元にナイフを刺してくる」
「そう。頑張ってね」
ゆっくり近づいて後ろから一気に。
「オラァ!」
刺したらキュッと捻って抜く!
「ガメェ……」
潰れたような声を遺して煙となり消えていく。
[バトルリザルト]
討伐対象
ツチガメ×1
獲得経験点
40
ドロップアイテム
ツチガメの肉、ツチガメの堅甲羅
「よしっ!上手くいったな。それじゃ街に戻るか」
「そうね。少し空も暗くなってきている……。夜になる前に戻りましょう」
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