第六十八話 騒動終着 ~首を垂れる貴~
招き入れ、扉を閉め、偽装を外した機械天使姿のツグが言う。
「どうぞお掛けください」
心配そうに。
小さきマクスの顔色は悪かった。無理を承知で訪問した、というのが、首筋に流れる脂汗からも明らかだった。
力が抜けるように、先ほどまでツグが座っていた椅子に乱暴に座ることになった小さきマクス。
ミツも偽装を外した。
「お休みに、なられます……?」
と、晴れ渡った青い大海原の光景を内包するガラス玉を左眼に嵌め、コレクトルが小さきマクスへ声を掛ける。
「大丈夫ですよ。無理の効くたちですので。それより、話があってきました。大事な話です。いいえ、お願いです。お願いがあります。無理を言います。ですが、どうか……」
強い意志の籠った目。けれどもとても悲しそうで。
「アーミヤさんのことです……。どうか、協力願えないでしょうか……」
そして、とても、らしくない話し方。
「それでは、分かりませんって……。しっかりしてください……。無理言ってるのは分かってるんですけど、落ち着いて、ください……。……。少し、休みませんか、というか、休んでください……。貴方は今、お話できる状態じゃあないです……」
コレクトルは迷いつつも結局、そう、小さきマクスにはっきりと言った。そして、
「ミツさん。権能の展開をお願いします」
ミツへ、時間の流れを遅くする権能の展開をお願いし、
「ツグさん。何か落ち着ける飲み物の準備をお願いします。きっと長い話になる気がしますので」
と、ツグへ目覚めた後の為の用意をお願いし、そして、嵌めたそれの中の水精に働きかける。
水の領域で、自身と小さきマクスを飲み込んで、瞳を閉じたのだった。
ぱちり。
「コレクトルさん……。おはようございます」
顔色のすっかりよくなった、けれども顔に浮かべる心因性の暗さはどうしようもない小さきマクスは、申し訳なさそうに、コレクトルにそう、水の中で声を掛けた。
つまるところ、実はコレクトルの方が総合的には疲れていた、ということ。
無理することに慣れ過ぎていたコレクトルにとって、小さきマクスが為だったその行為は、図らずして自身の為にもなっていた、ということである。
「あっ……! ご、ごめんなさい」
と、慌てて解除する。水はきれいに消え、跡形も無い。もうすっかり、習熟したということである。その瞳を外し、最も慣れた瞳に変える。かの煌めく紅の蛇眼へ。
「……! その瞳……! いいえ、後にさせてください。その瞳について、後でお話しさせてください。コレクトルさん」
「は、はい……? はい」
戸惑うコレクトル。
二人の遣り取りに口を挟むことのないミツ。
そして、ツグが、飲み物を持ってやってくる。
「ただのお湯ですが、体調関係無く落ち着くとなると、これが一番でしょう」
灰色の陶器の円柱状のグラスに入れられたお湯がツグによって並べられ、魔法でスッと自身の分の椅子を新たに出して、卓についたツグ。
早速啜っている小さきマクス。
「ふぅ。確かに。ありがとうございます。では、始めましょう。私のお願いというのは、アーミヤさんのことです。彼女を助けにいきたい。ですが、彼女の今いる場所に、踏み入ることができる者は、私の一族には現在一人も存在しません……。あぁ、言葉が纏まりませんね……。だからといって、このぐちゃぐちゃなまま、皆さまに体験して頂いたとしても、脈絡が無く、意味不明でしょう……。ツグさん。ミツさん。私は一切抵抗しません。全て曝け出します。ですので、どうか、整理してください。そして、この、私には受け止めきれない事実を、伝わる形にして、コレクトルさんに、伝えていただけないでしょうか……」
そう、項垂れるように、頭を垂れ、お願いした。
「よい、のですね……? マクス様」
と、ツグは尋ね、
「マクス様。日を改めろとは言いませんが、時間なら稼げますので、ゆっくり、整理するおつもりにはなられません……ね……」
と、ミツは、言っても聞かないだろうと、言葉にして分かったので説得を諦めた。
「焦っても仕方がないと分かっていても、足踏みしてはいられないんですよ。気が……狂いそうなので……。どうか、一思いに、やってしまってください……」
と、小さきマクスにはもう、威厳も糞も無かった。もうその心はボロボロだった。
「「では。躊躇も配慮も致しません。貴方様のその意思を尊重させて頂きます」」
二人は声を揃えてそう言って、共に権能を行使した。
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