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第7話 伊勢貞宗・伊勢貞陸

 今日も今日とて、人脈作りです。


 本日会談するのは伊勢貞宗いせさだむね)さんと、その息子さんである伊勢貞陸さだみちくん。貞宗さんが四十六歳で、貞陸くんが二十七歳。


挿絵(By みてみん)


 伊勢家は政所まんどころ執事しつじを世襲する家柄だ。政所というのは、二十一世紀の日本でいうと財務省と金銭問題専門の裁判所が合わさったお役所って感じだろうか。執事というのは長官職。


 この伊勢家と、ボクの家は普通に仲が悪いです。原因は貞宗さんのお父さんである伊勢貞親さだちかさんと、ボクの親父様が政敵同士だったからです。


 やたらと敵を抱えていた親父様だけど、貞親さんとは本当にどうしようもないくらい仲が悪かった。どのくらい悪かったかというと、殺すか殺されるかの騒動が起こるくらいに。


 親父様が西軍に寝返った理由の何割かは、貞親さんとの諍いだったはずだ。


 そんな因縁の相手のご子息がわざわざ通玄寺まで来てくれたというわけだが、親父様は面会拒否という姿勢で応えた。現在、寺の奥に引きこもっている。


「下御所様(足利義視)にお目通りが叶わないのは残念ですが、致し方ありませぬ」


 貞宗さんが申し訳なさそうな顔をする。


 親父様にはもう少し大人の対応というものをお願いしたい。貞親さんと貞宗さんは違うんだからさ。


 さて、この貞宗さん貞陸くん親子なんだけど、この人たちも明応の政変でボクを追い落とす側です。


 応仁の乱が終結する時、うちの親父様は義政伯父さんから赦免をもらうことが必要になった。その際、「私が西軍に寝返ったのは、伊勢貞親に命を狙われていたから仕方がなかったからなのです」って感じに責任を全部押しつけたのだ。この時点で貞親さんは鬼籍に入っていたから、まさに死人に口なしというやつだ。


 うん、普通に禍根が残るよね。伊勢家とも仲良くするのも厳しそうだ。


 だけど、伊勢家は将軍家の家宰的な立場なのだから、ケンカなんかしていたら政権運営に支障を来してしまう。幸い、この二人は悪い人ではなさそうだし、腹を割って話せば上手くやって行けそうな気がする。


 細川政元と比較したら大抵の人はまともに見えるだろうけどね!


 伊勢家のお二人には少し実務のことを尋ねておこう。初対面だから挨拶程度で済ませても良いんだけど、山城の国一揆の話を聞いておきたいんだよね。伊勢貞陸くんが山城守護で、一揆関連の担当者なのだ。八代将軍義政伯父さんに厄介事を押しつけられたとも言う。


 今から四年前の一四八五年に勃発した国人一揆が、未だに解決していない。国人たちが幕府権力を否定して自治をしているのだ。将軍のお膝元である山城国のことなのだから、早めに終結させないと沽券に関わる。


 ――ふむ、どうやらまだまだ一揆解体に時間がかかりそうとのことだ。武力に裏打ちされていない権力って、悲しいくらいに無力なのよね。


 山城の国一揆に並ぶ有名な一揆、加賀(石川県南部)の一向一揆も昨年勃発して現在進行中だったりする。一向宗門徒が守護を追い出して、一国を支配してしまっているのだ。こちらも幕府は有効な対策を打ち出せていない。


挿絵(By みてみん)


 ……先代義煕くんのやり残し多過ぎじゃない? もう少し何とかならなかったのかな?


 一揆鎮圧に関して、守護たちの協力がほとんど得られていないから、義煕くん一人が悪いわけじゃないけどね。主に細川政元が悪い。あいつ、一揆勢と裏で繋がっているんじゃないかってくらいに、一揆の鎮圧を嫌がっているとのこと。そのうち追及してやろう。


 そういえば、伊勢貞宗さんの従兄弟に伊勢盛時もりときさんがいるな。後の世で北条早雲と呼ばれる人だ。優秀な武将は手元に置いて活用したい。ただ、この人って既に駿河国(静岡県東部)に下向しているはずなんだよね。この時点で既に駿河で武名を轟かせているのだからたぶん間違いない。何とか都に呼び戻せないかなあ。


 やることが山積みで頭が痛いけど、一つずつ片付けていきましょう。

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