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第63話 消えぬ闘争心

 明応三年(一四九四年)七月。


 関東で和睦が成立した。


 言うのは簡単だが、ここまで至る道程は決して平坦ではなかった。


 関東管領家は足利茶々丸を引き渡すことを拒否。これにてボクと政元が考えた和睦案はお流れとなってしまう。


 その後、関東管領家は合戦を続けたわけだが、分家と早雲庵宗瑞さんの連合軍に連戦連敗してしまう。ここに至って、講話の道を再度探ることになる。もちろん茶々丸を見捨ててだ。


 茶々丸は関東管領家に殺害され、首級が京へ送り届けられた。


 ボクはその首を鴨川の河原で晒して、その後丁重に弔った。


 仇が討ち取られたということで清晃くんも非常に喜んでくれた。


 茶々丸討伐という目的が達せられたので、ボクは本格的に関東の和平へ本腰を入れることにする。


 関東管領家にはより厳しい条件を突きつけ、連合軍には何とか納得してくれそうな条件を探り、やっとこさ和睦へこぎ着けた。


 この結果、関東管領家は大幅に勢力が後退。代わりに分家が伸張。家格こそ宗家が上のままだが、実力は完全に分家が上となってしまった。


 宗瑞さん率いる駿河勢も相模と武蔵に大きな所領を獲得。これ以後関東で強い発言権を持つことになるだろう。


 ボクとしてはもっと宗瑞さんに暴れて欲しかったが仕方がない。関東に一応の平和が訪れたということを喜ぶことにした。


 関東での和睦が成立してから間もなく、畠山政長さんがボクの元を訪れてきた。


「隠居して家督を倅に譲ることをお許し下さいませ」


 政長さんがこんな申し出をしてきた。


 確かに五十三歳ということで隠居してもおかしくない年齢なのだが、せっかく正式に畠山家の家督を継承したのだからもう少し頑張ってくれると思い込んでいた。というか、ボクのためにもう少し政界に留まって欲しい。


 しかし、ボクが我がままを言っても仕方がない。


「相分かった。長きにわたりご苦労であった。今後はゆっくりと過ごすが良い」


「ありがとうございます。然れど、ゆっくりとはできないかと」


「どういうことだ?」


「家のことは倅に任せて越中へ向かおうと考えております」


 越中国は畠山家の分国だ。政長さんは在地で領地経営をしたいのだろうか。とボクは思ったのだがどうやら違うようだ。


「加賀衆が境を超えて越中に入り込んでいるので、追い払って参ります」


 彼は新たな戦いに臨みたいらしい。人生の大半を家督争いに費やしてきただけあって、平和な都で暮らすよりも危険な戦場に身を置きたいのだろうか。


 加賀衆とはもちろん一向一揆の連中のことだ。ボクがすげ替えた本願寺の新法主くんによって破門されたわけだが、未だに根強く反抗している。その一向一揆が隣国で悪さをしているようだ。


挿絵(By みてみん)


「左衛門督(畠山政長)よ、越前の朝倉と手を結ぶ気はあるか?」


「朝倉にございますか?」


「この際だから、一揆勢を叩き潰してしまいたい。東西から攻められたら連中も苦しかろう。一揆衆を打ち破った暁には、加賀国は畠山と朝倉に二分して与える」


 そろそろ幕府軍を加賀に送り込もうかと考えていたところだったのだ。政長さんの下向はちょうど良い。


「かような恩賞を頂けるとはまさに望外。必ずや加賀衆を打ち破ってご覧に入れます」


「まだ朝倉に話してすらいないがな。まあ、越前も一向一揆に手を焼いているから、余の誘いに乗ってくれるだろう」


 加賀の一向一揆討伐へ道筋が見えてきた。史実だと百年近く続く一揆なのだけど、ボクが生きているうちに終わらせることができるかもね。

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