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第37話 一触即発

 本願寺との交渉は予想外に難航した。


 幕府の謝罪要求に対して本願寺が大きく反発。各地から門徒を山科に集結させる。


 将軍のボクも対抗して、在京守護に兵を集めるよう指示を出した。


 そして、一向宗と仲が悪い仏教他宗派も門徒を都に集め始めた。これはボクの指示ではなく、彼らの独断である。特に制止したりしなかったのだから、加担したも同然だけど。


 突如として兵が集合し始めたので、京の都は騒然となった。応仁の乱のような合戦が起こるのではないかと皆が思ったのだ。


 一触即発な状況で、細川政元が幕府と本願寺の仲裁に入った。


 本願寺としては政元に大きな恩がある。加賀の一向一揆が起こった時、幕府からのお叱りを実質ゼロにしてくれたわけなのだから。


 そんな過去があるわけで、実如は彼女の仲裁を素直に受け入れた。もちろん、幕府や他宗派と一戦交えるのを嫌ったという事情もあるのだろうが。


 政元のおかげで事件が解決するかに思えたのだが、ここから話がさらに複雑になっていく。


 本願寺は一旦受け入れた仲裁案をまさかの撤回。支配下の寺が猛反対をして、実如がそれに屈してしまったのだ。


 なかなかに本願寺の内部事情が複雑のようだ。先代蓮如の時に教団が急拡大をしたわけだが、組織の上下関係が整備されきっておらずに意思統一ができないのだろう。蓮如が健在ならカリスマ性で信者たちを導けたかもしれないが、まだ若い実如では難しいと思われる。


 というわけで、幕府と本願寺の対立が変わらずに続いた。幸いにして政元が細川家の大軍を率いて睨みを効かせてくれたので、末端の兵士が暴走するということもなく、武力衝突は一切おこらなかった。


 そして、政元のさらなる懸命な説得が実って、本願寺は集めた門徒を解散させた。それを見たボクも守護たちの兵を引き上げさせ、同時に諸宗派の兵も都から離れていった。これにて京の都での緊張は解かれたのであった。ここまで実に二ヶ月ほどかかって、四月になっていた。


 幕府と本願寺の間を取り持ってくれた政元には感謝するしかない。


 まあ、政元が本願寺と仲良しだと分かっているからこそ、ボクが強気の姿勢を崩さないでいられるってのもあるけどね。本当に武力衝突したら、都が再び灰燼に帰してしまう。それだけは避けなければならないのだから、彼女がいなかったらボクがどこかで妥協せざるを得なかったはずだ。


 何だかんだと動きはあったが、結局のところ本願寺は呪詛を続けていて、それに対してボクが謝罪要求をするという元来の構図が残った。つまり、何も進展していない。ボクとしてはのろいなんてどうでも良いから、以後はほったらかしにすることに決めた。一年間病気しなかったらボクの勝ちである。


 都の人々は、ボクが近々病に倒れると思っているみたいだけどね。


 そうそう、この騒動の最中に本願寺のほころびを見つけることができた。蓮如の第五夫人さんが実如の方針に反対しているというのだ。ありがたいことに彼女は男児を出産しているので、跡継ぎとして据え置くことができる。全力でこの人と仲良くしましょう。


 とにもかくにも本願寺の件は取りあえず片づいたので、これ以後は近江の方に目を向けたい。六角行高が横領した土地を全く返そうとしないのだ。向こうがその気なら仕方ない。戦争だ。



 

 月が変わって五月。朝廷から改元の打診が来た。


 ものすごく嫌な予感がしたけど、断る理由もないので了承をした。


 すると、新元号の候補に「明応」が入っていた。案の定である。


 他の候補を選ぶことも可能だったけど、新元号は明応とした。ボク自身への警鐘の意味を持たせておきたいからだ。近いうちに政変が起こるかもしれないと、この元号を見る度に思い出すことができるはずである。


 さてさて、将軍の座に留まり続けられるように、より一層頑張らないとね。

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