表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テレフォンライン  作者: 新庄知慧
96/116

96 それはたんなる推理

藤山はうなずき、私にきいた。




「あんさんも気づいてはりましたか?」




「いいえ」私はいった。




藤山は続けた。




「その愛に、内田は気づいていた。しかし、内田は永野先生を信望し、尊敬してた。これは間違いないです。複雑や。二人の心には、何というか、ギャップがありましたな」




「そうですか」




「内田と話していて、そこまでは、何とのう、わかりました。そして、河合は内田のことも永野先生のことも憎んでたようです。




これは、捜査結果とはいえない。内田と話をしての、単なるわての推理です」




藤山の口は滑りに滑った。




「しかし、永野先生は、これまで集めた証言が正しいとするなら、河合を憎んだりはしない。むしろ救おうとするんでしょうな。




永野さんが、河合を殺すとは思えない。




・・・分からないですな。まあ、ここは永野先生は最初は内田を殺そうとしたが、何らかの事情で、河合を殺してしまった、としましょうか。




犯人が永野先生とするなら、内田は、尊敬する永野先生の罪をかぶって自分が犯人だと言い続けてると、こういうことになる」




「なるほど」




「それで、一体、永野と名乗る男は、何者か、どこにいるのか、ということになる」藤山は首をひねり、苦しそうな顔をした。




私は黙って藤山の顔を見た。




不意に、私の脳裏に、宮本のことが浮かんだ。




永野先生の「いのちの電話」をモデルにしたとしか思えない「テレフォン・ライン」という芝居のことが浮かんだ。




永野にアプローチする道は、宮本だ。しかし宮本のことを出せば、マユミが宮本に犯された事実が明るみに出る。それは依頼主であるマユミの母を裏切る結果になる。それはできない・・・




藤山の苦しそうな顔を見て、私もまた、心の中で苦しんでいた。




・・・・・・




藤山の取り調べは2時間にも及んだが、私は結局、恐喝罪には問われず、放免された。




警察を出たその足で、私は黄金町へと向かった。




私は黄金町の愛生病院を訪れた。しかし、宮本はすでに退院していた。いや、脱走したというのが真相のようだ。




病状は良くなりつつあったが、病院が許可もしていない外出をして、そのまま帰ってこなかった。




これまでの入院費はとれなかったが、病院としては、むしろ厄介払いができて、内心喜んでいるようだった。宮本が病院から消えたのは3日前のことだった。




私は失望した。




病院にきいても、勿論、行方はわからなかった。




病状が良くなったとはいっても、治ったわけではないから、また病院にかつぎこまれるでしょうよ、と看護師は唇を歪めて語った。私はもし宮本がかつぎこまれたら、連絡してくれるように病院に依頼した。




・・・・・つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ