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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
95/116

95 顔の笑いが消えた

「内田の身辺についても、大勢の刑事が聞き込みを行なったんです。でも、あんさんが調べはった以上のことは、まで出てきまへん。




永野先生と名乗る人物についてもね、調べてますが、あきまへん。永野先生ご自身はお若いのに立派なお人やった、そやのに、お亡くなりにな




ったということはわかってますが、それ以上のことは、さっぱりです」




「内田の高校の同級生たちは、どうですか。いじめを行なった連中というのは。この線から何か浮かび上がってはこないでしょうか」




「やってますが、なかなか手がまわりまへん。時間がかかります」




「そうでしょうね」




私はあの光聖学園の閉鎖的な雰囲気を思い出した。永野の友人だったという教師ですら、いじめの仲間の名をいわなかった。




何か恐ろしい圧力がかかっているのかも知れない。あの学校の生徒たちの親といえば、社会的に相当な地位にいる者ばかりだろう。警察の捜査の手など、ねじ曲げてしまえるのかも知れない、と私は思った。




「ほんまに捜査は進まへん。実はねえ」




藤山は申し訳なさそうにいった。




「マユミと河合の殺しの件については、上からですな、もう捜査はほどほどにしとこうという話もあったんです」




「といいますと?」




「上の方からの話です。上の方に何か力がかかったのかもしれまへん。とにかく、内田が自供してるんやさかいね、もう、それで、えやないかと」




「そんないい加減な話が、ありますか」




そういいながら、私は昔読んだ冤罪犯に係るレポートのこと、取り調べの過程で、自身の自供のみを材料にして無実の罪を構成され、




25年間も刑務所に入れられ、その後の再審で奇跡的に逆転判決を得て、社会復帰した冤罪犯の話を思い出していた。




「実は篠原は、市警の偉いさんと親友でしてな。あ、いやあ、また、口滑らしてしもうた」藤山はいった。「今の話、なかったことにして下さい」




「・・・」私は黙ったまま、藤山の顔を見た。




藤山は少し笑ったが、続いて辛そうな顔をした。藤山は苦しんでいる、と私は思った。




藤山は、今、なかったことにしてくれ、といった何かで自分自身を問い詰め、何かに苦悩して日々を送っている。




私はいった。




「それで、最初のプレス発表が、あんな内田を犯人に決めつけるようなものになっちゃったということですか」




「・・・そんなことはない。あれは、わてのドジです」藤山は私を見返していった。




私は慌てていった。




「いや、余計なことをいいました。失礼しました」




藤山は笑って、いった。




「つい口滑らすんで、出世がでけへんのです。ついでに、口滑らすと、まあ、これはわての勘なんですが」




藤山は、顔の笑いを消し、いった。




「永野先生は、内田に惚れてましたな。あんまり、言いたくない話やけど」




私は藤山の顔を見た。そして、いった。




「同性愛・・・」




・・・・・つづく



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