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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
92/116

92 ヨコハマで男が一人殺された

気分がむしゃくしゃして、私はテレビのスイッチを入れた。




天気予報をやっていた。明日も今日のような晴天らしい。天気キャスターは新人の女の子で、話し方があどけなかった。




「ヘクト・パスカル」という言葉を口にするたびに、それが気象用語ではなく、新発売された洋菓子か何かのように聞こえて仕方がなかった。




天気予報が終わり、コーシャルになった。




ふと宮本のことが頭に浮かんだ。




宮本は、永野と何らかの接点を持っているはずだ。あの「テレフォン・ライン」という芝居は、永野の「いのちの電話」のことがモデルになっているとしか思えない。




私はタバコをもう一本取り出し、吸った。テレビではコマーシャルに続き、ニュースが始まった。




高級官僚が、株の取引きで金融機関からまた便宜を受けていた。




国の財政状態に灯った黄色信号は、赤信号に変わりつつあった。




東ヨーロッパの民族紛争は、まだ本格的な解決には程遠かった。




日米の貿易交渉は長引き、2日も徹夜になり、経済産業大臣は辛かった。




そしてアナウンサーは、ややくたびれた顔で、殺人事件があったのを伝えた。




ヨコハマで男が一人殺された。




男は医師で、名前は篠原惇だった。






・・・・・・






篠原が殺害されたことについて、新聞は翌日の朝刊の一面で伝えた。




記事の大きさは相変わらずトランプカードの半分くらいの大きさだったが、今度は一面であり、社会面にもさらに詳細な記事が載っていた。




市立病院の副医院長が殺されたとなると、これだけの扱いになるということらしい。




記事によれば、篠原は射殺された。




篠原がいる病院の隣のホテルから、一発で仕留められた。おそらくプロのスナイパーの仕事ではないかと報じられていた。




弾丸は頭部に見事命中していた。狙撃者が潜んでいたのは、ホテルの11階の客室。殺人者は、昨日私が見上げたホテルの一室にいたのだ。




消音銃によるものか、誰も銃声を聞かなかった。弾丸を鑑定すると、狙撃に使われたのは、まだ日本では珍しい最新式の銃だという。




さらに新聞は社会面で、この殺人がマユミと河合の殺害事件と何らかの関連があるのではないかと伝えていた。




警察は、マユミと河合を殺害した疑いありとしていた内田について、犯行当時の供述等があいまいであり、犯人とは断定できないとして、前言を翻し、今回の篠原の殺人者と同一人物の犯行である可能性もあるとしているという。




記者発表をしたのは、また、あの藤山刑事だろうか。




警察は事件を連続殺人事件と決めつけているように読めるが、これはゆき過ぎではないかと私は思った。




先走った発表について、また、頭をぺこぺこ下げる藤山の姿が目に浮かび、少しおかしくなった。




そして同時に、篠原に腹をたてていた自分が滑稽に思えて苦笑いした。




・・・・つづく





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