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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
88/116

88 あなたは殺し屋を雇ったか

篠原は、またあきれた顔をしていった。




「警察からきかされたよ。別に興味もないんだがね。君が警察の知り合いとやらから聞いた情報ってのは、このことか。




だったら、お笑い草だ。大体、内田って奴は、もともと、こんな事件を起こすような、根の暗い、性質の悪い男だったんだろう。




だから、それを敏感に察知した連中が彼をいじめてたんだ。しかし私にいわせれば、それはいじめじゃない。




悪質な人間を社会から排除するための正当な裁きだ」




「そうでしょうか。しかし、世の中の人たちは、そうは受け取らない。正利さんのことを悪くいうに決まってますよ。あなたの名誉に傷がつきやしませんか」




「世の中の連中には、いいたいようにいわせておけばいい」




「この手の事件に巻き込まれると、思ってもみないような中傷の的にされることが、あるんです。




警察は、あなたについても色々のところで調査をしています。そこから、変な誤解が生ずることも、あるんです。




あなたの地位や名誉にとってマイナスになることが、起きないとも限らない。




自分について、何がどう調べられ、どう評価されたか、把握して、先手を打っておく必要はないでしょうか?」




篠原はきわめて不愉快な顔をして私にきいた。




「君は何がいいたいんだ?」




「いえ、気に障ったら、どうかご容赦下さい」




「もう十分に気に障っているよ」篠原はいった。




「誠に相すみません。あくまで、例えばの話なんですが、こういう事件の調査がもとで、過去に犯したつまらない過ちが明るみに出てしまうことが、あるんです。




例えば、不倫をして出来た子供がいたとか。いえ、これはあくまで例えばの話ですよ。




そういったことが、捜査の過程でどこかに洩れてしまう。つまらない中傷の種になり、大変に迷惑する。




私は職業がら、そういう方を何人も存じ上げています」




「なるほどね」篠原は、目を光らせていった。




「この事件については、私はかなりの情報を得ています。あなたを守るには、私が適任と思います」




「帰ってくれ。大変結構な忠告だが、私には君のいうような過ちはない。




仮に過ちがあったとしても、君のような実に不愉快で知能の低い探偵を雇おうとは思わん」




篠原は机の上の電話に手をのばしながらいった。




「おい、ほら、帰れ。警察を呼ぶぞ」




私はいった。「すでに、どなたかを雇用されたんでしょうか?」




「何?」




「腕のたつ探偵を、雇われたんでしょうか。心あたりが、おありですね。いや、探偵どころか、もっと過激な職業の方かもしれない。殺し屋とか…」




篠原は電話に伸ばしかけた手を止めて、私の顔を見た。私はいった。




「実は、私、殺されかけたんです。この頬の傷、もうほとんど跡もなくなりかけてますが、その時のものです。




事件の調査から手をひけ、といって、私の事務所に来ました。あなたの所をこの間たずねたすぐ後です。・・・






・・・つづく

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