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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
86/116

86 誰の許可だ?

「そうですか」




恐れ入ったように藤山がいった。大田は匙を投げたという感じで黙っていた。




私は少し間をおき、いった。




「それと、気になるのはその、篠原医師・・・この事件が何なのか、私も、正直いってわからない。別に名探偵ではないですから。




実は、私が依頼人から頼まれたのは、マユミさんの死の真相、ただそれだけなんですが、その真相を語るには、実にいろいろのことを解明する必要があると、わかってきました」




「困ったもんですな・・・」藤山刑事はいった。「よし、がんばりまひょ。内田と、もっとじっくりと話しますわ」




大田はいった。「まあ、藤山さん、こいつのいうことは、あんまり真に受けないほうがいいですよ」




藤山は、その大田の言葉にも素直に耳を傾け、「まあ、ぼちぼち行きますわ」といって眉毛と口をへの字に曲げて腕組みした。




私は、この藤山刑事とは良い友人になれるような気がした。






・・・・・






翌日、私は篠原が副医院長を勤める、あの未来派建築の病院を訪れた。




無機質なSF的なその病院は、彼には何度来ても馴染めそうになかった。




前回と異なり、今日は診察時間内ということから、診察を受けにきた大勢の人々が待ち合い室の椅子に座ったり、廊下を歩いていたりした。




病院がSF的だからといって、そこを訪れる人々がSFの世界につきあって、宇宙服を着ているわけではなく、彼と同じ、ごく普通の市民たちだった。




私はホテルのロビーのようなその待ち合い室を歩いて通り過ぎながら、人々を眺めた。




そこで私は一人の知り合いを発見した。




薬局のあるコーナーの向うから不意に現われ、大股で足早に歩き、あっという間に玄関口へと去っていった。




薄い緑色のトレンチコートを着て、水気のない髪ののった、かまきりのような顔をしていた。




私に二度も親切な忠告をしてくれた、例のキラーだった。




キラーは彼に気づかずに玄関の自動ドアの外へ消えた。私は首を少し傾げて、誰にするでもなくウインクした。




エレベーターで一直線に篠原の部屋のあるフロアーへと向った。




ドアをノックすると、誰かが部屋の中で何かいった。ドアをゆっくりと開けると、篠原が奥の机に座って新聞を読んでいた。




篠原は私をみて、一瞬驚いた顔をし、続いて不機嫌そうにいった。




「何だ。君、誰の許可を得てここに来たんだ」




・・・・・つづく





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