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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
83/116

83 いじめへの復讐?

記事のタイトルは、「いじめへの復讐」とあり、事件はあくまで捜査中と断りつつも、高校時代にいじめにあった内田が、成人となった今、当時いじめを指揮していたと思われる河合を鉄パイプで撲殺した、と決めつけていた。




詳細は不明だが、先に死んだ影山マユミも内田に殺害された可能性が高い、とあった。




マユミと河合は異母兄弟であり、いじめに対するうらみをはらすために、いじめを行なった者の近縁者をまず殺し、そしていじめを実行していた河合本人を殺害したらしい、とあった。




これを内田の親が読んだら、どう思うだろうと私は考えた。




そしてマユミの母が読んだら・・・?これで納得するだろうか。残念ながら、この事件はそうは簡単ではないのだが。




そこへ電話のベルが鳴った。受話器をとると、大田刑事だった。




「やあ、お待たせした。警察へ来てくれ」大田がいった。




私はすかさずいった。「今、新聞を読んでいたところだ。警察はもう真相を究明してしまったんだろう。もう俺が行かなくてもいいんじゃないか」 




「新聞?まだ読んでないよ」大田はいった。




私は記事の内容を大田に伝えた。




「ひどいフライングだ。しかし、3面記事なんてのは、そんなもんだ。知ってるだろ?新聞が売れるような記事が、いい記事なんだよ、新聞にとっては。まあ、確かに内田は、そう自白しているがね」




「そうか。内田の自白が、そのまま活字になるとはな」




私は警察の発表の仕方にも問題があるのではないかと抗議した。その抗議の件も含めて電話ではらちが明かないと思い、警察に向かうことにした。






・・・・・






警察の取り調べ室では、大田と、藤山刑事が私から聞き取りを行なった。内田の取り調べは、もっぱら藤山刑事が行なったという。




「いやあ、マスコミへの私のいい方が、まずかったんですわ。反省してます。今後、新聞には注意しますさかい」




藤山刑事は頭をかき、汗もかきながらうつむいていた。本当に申し訳なさそうな顔をしていた。




「こんなやさかい、出世でけしまへんのやねえ」




もっと抗議しようとしていた私は、拍子抜けした。




歳はかなりいっているのに、警察における職位は、はるかに若い大田と同じだという。




私はこのさえない刑事が、憎めない気がした。


 


藤山刑事をかばって、大田が口をはさんだ。




「まあ、あそこの新聞だけだよ。この事件をこう書いたのは。フライング気味のスクープだけで生きてる新聞だしなあ。おまえ新聞変えたほうがいいんじゃないか」




大田は疲れた顔をし、続けていった。






・・・・つづく

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