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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
82/116

82 とんでもないことに手を出していた

「そうです。調べたのね、あんた」




「ええ、まあ」




「何に使ったんだろうね。億近い金だったでしょ、きっと、とんでもないことに使ったんだろうな。大方サラ金かなんかに追いまくられてたんだろうね。




金なんて、あっという間に無くなるからね。私、思うんだけど、きっと奴は、麻薬とか、本当にとんでもないことに手を出してたと思いますよ」




「しかし、銀行も、最近はひどいことをするっていいますからね…」




「ははあ、それも調べてんのね。そうらしいんだよ。湘南銀行ってのは、うちの親会社の系列なんだけどね。




言葉巧みに投信とか株とかFXやデリバティブなんかに勧誘したらしいんだ。」




「デリバティブ…」




「詳しくは知りませんがね、あれは、あっという間に大金が吹っ飛ぶっていうじゃないのさ。金を借りさせて、それを金融派生商品に振り向けさせるって、そんなことをさせたっていうよ。担当の悪知恵らしい。そういう奴が生き残るんだ」




「ご存じなんですね、その融資担当を」




「これは、内部の人間しか知らない。実は私も、もとはあの銀行にいたんだ。でもリストラで、この若さで、出向だ。事実上のクビさ。




えげつないんだ。あの銀行は。我々子会社は、本当に泣いてますよ。あんなことやってちゃ、日本の金融機関は皆だめになるね」




私はカマをかけて、いった。「河合なら殺されました」




「何だって!」山瀬は目を向いた。




「殴り殺されたんです、昨日の夜。夕刊にはきっと載るでしょう」




「そうか…。天罰だな。まあ、宮本もひどい奴だけど、河合の犠牲者の一人ともいえるしなあ。そうですか。




それで、河合の犠牲者の宮本が、自棄になってマユミちゃんを殺したってことですかね…」




山瀬は少し黙った。




「ちがうかな…。あなたも、マユミちゃんの調査が進まなくてこまったねえ。宮本が、ああじゃねえ」




「まあ、お互いさまですよ。でも、困りましたね。本当に…」私は鋭い目付きをしながら静かにコーヒーを啜った。






・・・・




その日の夕刊に、河合の殺人事件のことが報道された。




一般紙の社会面の下の方に、トランプ・カードの半分くらいの大きさの記事で、私が予想したよりも大きな扱いだった。マユミが死んだときの記事の、ちょうど2倍くらいの大きさの記事だ。




私はオフィスのデスクで、その記事を読んだ。目を通して、眉をひそめた。




・・・つづく

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