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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
78/116

78 人間の形をした人形

「…」




「しかし、先日、その永野という男から私のところに電話があったんです。ちょうどその時、内田も私といっしょにいました」




「ええ?!…変な話…」




「変な話です。それで、話は唐突に方々へ飛んで恐縮ですが、宮本からはその後何も連絡はないでしょうか」




「いいえ」




「そうですか。宮本の後も追っているんですが、まだ掴めてないんです。ひょっとして、と思ったんですが。




まあ、とりあえず、今日は遅いですし、これくらいで。明日になれば、今日の殺しのことが新聞に出るでしょう。警察の捜査結果もわかります。




新聞以上のことも、あの大田から聞き出そうと思っています」




「そうですか。変なことになってきたんですね。私には、さっぱり、わからない。誰が、マユちゃんを殺したんでしょう…」




「すみません。今は直感でも、何もいえない状況です。…あ、それから」




私はいおうかどうか迷っていたのだが、やはりいうことにした。




「真紀子さん、今、あなたには、あなたを慕っているような、その、何というか、恋人のような方はいらっしゃいますか」




「は?」




「いや、失礼。つまりですね、あなたのために私が捜査しているのを、何か下心があってのことじゃないかと批判する人間がいるんです。




このことは、いうまいと思ってたんですが、ひょっとしたらこの事件に関係するかもしれないと思うものですから、やはりいいます。




…俺は真紀子を愛している、真紀子に係わるのをやめろ、この捜査をやめろ、・・・と私を脅迫してきた奴がいます。




20代半ばか30歳くらいの、背が高い、ちょっとかまきりに似た顔の奴でした。




この手のことは、私みたいな商売では、ちょくちょくあることですから、どうか気になさらないで。




ただ、その脅迫というのが、随分とストレートで危険なやり方でした。私のところにきて、拳銃を撃った」




「何ですって!」




「いや、単なる脅しです。よくあることです。私は全然平気です。それで、つまり、私がききたいのは、そんなことをしそうな男に心当たりはないか、ということです」




電話の向うの声はしばらく無かった。それから、真紀子はいった。




「ないです。でも、これも、分からない。そんなことするとしたら、私の客…




でも、客は、みんな、あたしのことを愛してるとか、似たような大嘘を言うし。だから、客の話なんか何もきいてない。




大体、客の顔とか性格とか、何も覚えてないんです。見ないようにしてるんですよ、そんなもの。




人間の形をした、ただの人形だと思ってやってるんですよ、私。だから…わからない」




・・・・つづく

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