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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
76/116

76 藤山刑事登場

「そんなところです」




「嘘をつけ」




私は内田をにらんでいった。




「河合が君の親友?ちがうだろう。河合は、君を学校時代にいじめていた奴だろう?」




内田は私をにらみ返した。少しの間、視線と視線がぶつかり合い、火花が散った。しかし内田は私から目をそらし、辛そうな顔をした。




私はいった。




「君は、誰かをかばおうとしている。そいつの名前をいってやろうか?」




驚いて、内田は私を見た。私はいった。




「永野先生だ」




「…」




内田は、追いつめられた顔をして、眉間に皺をよせ、歯をくいしばった。体が少し震え出し、焦りを悟られまいとでもするように、グラスを手にとって、ゆっくりと水を飲んだ。




私は鋭い口調で内田にいった。




「違うのか?海の底の電話の先生だ」




内田は、手にしていたグラスを、テーブルに叩きつけるようにして置いた。グラスは、割れはしなかったが、店内にその音が大きく響いた。




内田はいった。




「あんたには、何もわかっていない。永野先生は、もう、いない。僕が河合を殺した。マユミもだ。警察へ連れていってくれ。僕は、もう、疲れた。あんたとは、もう、何も口をききたくない」




私たちはしばらく、沈黙したまま向き合っていた。






・・・






ヨコハマ市警の玄関口に私の車がすべりこんだ時、時刻はもう午前1時をまわっていた。




当直の制服警官に、今夜起きた殺人事件の容疑者を連れてきた旨を伝えた。警官は現場に行っている捜査班に電話をかけ、連絡をとった。




電話の向うでは、恐らく大田がしゃべっているのだろう。警官は電話を切ると、私たちを建物の中へと連れていった。




内田は怒気を含んだ蒼白い顔をして、取り調べ室前のベンチに腰掛けて、目を閉じてうつむいた。私は内田の向かいのベンチであくびをした。目を閉じて、今日あったことを思い出した。




廊下の向うから、静かな靴音が近づいてきた。




目を開けると、中年の、私服刑事とおぼしき男が歩いてくる。40代なかばぐらいの、腹のでた、背のやや低い、顔の大きな刑事だった。




私はこの刑事をどこかで見たと思った。




そうだ、マユミの殺された日、ハーバーホテルで大田とともに捜査に来ていた刑事だ。




あのときと同じ、地味な茶色のくたびれた背広を着ていた。廊下を歩く姿は、いかにもだるそうで、のろくさしていた。




私の前までくると、その刑事はいった。




「夜おそくに、ご苦労はんです。刑事の藤山と申します。大田の同僚です」




「どうも。そちらこそ、ご苦労さまです」私は頭を下げた。






・・・・・つづく







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