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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
74/116

74 君は犯人になりたがる

やがて内田は口を開いた。




「僕は犯人を、知っている」




蒼白く透き通るような頬に、深海のマリンスノーが光っているような錯覚にとらわれた。




私はだまって、内田の声をきいていた。内田はゆっくりと言葉を続けた。




「僕は犯人を知っている。僕は、犯人を知っている」




内田は体を横に向けて、車のシートにもたれかかったまま、どこを見るでもなく、誰にいうでもなく、犯人を知っている、という、その言葉をつぶやき続けた。




・・・・




内田は全く憔悴しきっていた。うわごとのように、犯人を知っている、という言葉をいった後は、死人のように沈黙した。




「犯人は、誰なんだ?」と、私はきいた。




内田は黙ったままだった。暫くは口をききそうになかった。




私はいった。「犯人は、君だというんだろう」




内田は身じろぎもしなかったが、やがて私のほうに体をゆっくりと向けて、そうだ、と聞こえるか聞こえないかの小さな声でいった。




「腹は減ってないか?どこか、落ち着ける場所に行こう」




内田は、また私から顔をそむけて、死体に戻ってしまった。




私は車をスタートさせ、3分ほど走ったところの、ロードサイドのレストランの駐車場にに車を止めた。レストランには、巨大な赤い色のネオンが灯っていて、ロブスターの大きな模型が客を出迎えた。




テーブルにつくと、私はコーヒーと蝦の肉のサンドウィッチを注文した。内田にきいても、何もいわなかったが、コーヒーを注文してやった。私は、口を開いた。




「君のメールを見て、警察に連絡した。警察は現場に直行した。河合は殺されたことは、もう知っている」




「…そうですか」内田は消え入りそうな声で、しかしやっと口を開いた。




「また君の犯行だというのか。どうして君は犯人になりたがるんだ」




「僕は悪魔だ」内田は目を横にそらして、また放心した顔になった。




「なぜ、君が河合を殺さなければならないんだ」




内田はいった。「僕が悪魔だからだ」




「わからないよ、そんなことじゃ」




私はグラスの水を一口飲み、そしていった。




「河合は、ひょっとしたら、マユミさんの兄さんだったんじゃないのか?」




その言葉に、内田は反応した。驚いた顔をして、いった。




「何?何といったんだ」




「河合は、マユミの義理の兄じゃないのか」




「…」




内田は目を丸くした。




「そんなことは…ない」大きな目をして、テーブルの上を見つめた。




私は続けていった。




「僕の調査によれば、河合はマユミの実の父の篠原という男の息子だ・・・」






・・・・つづく



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