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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
69/116

69 予告

また、自分の世の中に対する絶望をつづっただけの手紙があったりする。差し出し人はデーモンだそうで、マユミは悪魔に殺されたのだという。




いずれにしろ、電子空間に友人を求めたり、愚痴をいったりする類の内容がほとんどで、身元をきちんと明らかにしたような、確かな筋の情報というのは、あまりない。




しかし、時間の許す限り、メールには目を通す。時々は、思ってもみないような情報も飛び込んでくる。




私は画面をスクロールした。そして、あるメールに目を止めた。




「探偵どのへ。殺人の予告。内田亨」




メールを開いた。ごく短い手紙だった。その文面はこうだ。




「河合を救って下さい。私は彼を傷つけてしまいました。私では彼を救うことがもうできません。彼はきっと、ハーバー・ホテルで殺される。悪魔は悪魔によって殺される」




私は、マリンクラブの客の河合正利の顔を思い出した。




そして、マユミが殺される直前に読んだ、この文面とそっくりの手紙を思い出した。




記録を見ると、メールが送信されたのは今朝がたのことだった。




私は反射的に電話をとった。プッシュ・ダイヤルを忙しく押した。電話の向こうで、男の声が「はい、ハーバー・ホテルでございます」と答えた。




あのフロントマンに違いない。




「そちらに、河合さんという方はお泊りじゃないでしょうか。会社のものなんですが、急用がありまして」




「河合さんですか…少しお待ち下さい」




しばらく待つ間、私は忙しく考えた。実名では泊っていないかもしれない。そう考えるべきか。しかし、フロントマンの事務的な声がかえってきた。




「いま、お呼びしていますが、お出にならないようです」




「部屋にはいるんでしょうか」




「いらっしゃるかとは思いますが…」




しばらく待ったが、やがてフロントマンの声がした。




「お出になりませんが。お休みになれているのかも……あなた、ひょっとして、探偵さん?」




「そうです」




「今度は何ですか。また殺人が、うちのホテルで起るっていうんですか」




「わかりません。とにかく、河合さんと連絡がとりたいのです」




「うちとしては、お休みのお客さまを起こすわけにはまいりません」




「そうですか」私は業をにやして電話を切った。




続いて内田の家へ電話した。母親が出た。こちらは友人になりすまして、内田の行方をきいたが、昼過ぎに出ていったきり、帰っていないという。




どうしたものか、私は少し考えた。そしてまた、電話をかけた。電話の向こうで声がした。




私はいった。




「いたか!」




・・・・・つづく

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