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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
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68 山手情報商会から手紙

夜の街を走り、オフィスのあるビルにたどりついた。




郵便受けを開けてみると、山手情報商会からの、青い色の分厚い封筒が届いていた。私はそれを持ってオフィスへと入った。




さっそく封筒を開けた。こちらの要求した資料はほとんど揃っていた。紙の束を仕分けて、順々に、さっと目を通した。




見終わると、一息ついて、キチンへ行き、ブラック・コーヒーを入れた。コーヒーが沸くまでの間、首をまわしながら体操のようなまねをした。




コーヒーを満たしたカップを持って、軽く口笛をふきながらデスクに戻った。タバコをふかしながら、今度は丹念に資料に目を通し直した。




湘南総合開発の関係書類、宮本のいた劇団の公演暦、光聖学園高校の同窓会名簿…。




同窓会名簿をめくり、内田久の名前を見つけた。同級生は200人。ほとんどが、一部上場企業や役所に勤めていた。医師の名が相当数見え、内田のような、大学院生も相当数にのぼった。




「篠原」という名があった。あの、マユミの実の父と同じ名だ。何人かの湘南銀行勤務の同窓生の一人だった。そして「山瀬」という名も発見した。




篠原医師の経歴に関するペーパーを見た。




マユミの母と関係してから、ほどなく離婚していた。妻との間には一人息子がいた。離婚して以後は独身で通している。優秀な医師だが、冷徹で横柄だという人物評もある。そうだろうな、と私は思った。




宮本の劇団については、やはり、次回公演の「テレフォン・ライン」という名前が気になる。




そのチラシのあらすじ…やはり、「いのちの電話」がテーマだった。絶望した少女を、電話相談の男が救うというのが縦糸の筋になっている。




宮本の家の前で出くわした山瀬。彼が勤める不動産会社は湘南総合開発の子会社…。






・・・・




山手情報商会も、調査力は本格的なものになってきている。コーヒーを飲みながら、私は感心した。少しの間、目を閉じて頭の中を整理した。




ビルの外を行き交う車の音や、道ばたでふざけあう男女の声が聞こえた。




ふと、デスクの引き出しを引っ張り、中から黒い金属の塊を手にとった。銃弾は6発入っている。




机の上に置き、いつでも珍客を迎えられるようにしておいた。珍客は、来ないにこしたことはないが。




私は覆いが割れたままの照明を見上げて、裸の電球の光を少し目に入れた。




椅子の向きを変えて、パソコンのスイッチを入れた。




メールボックスを開けてみると、私が数日前に求めた情報収集の呼びかけに答えて、電子空間の向こうの、無数の名も顔も知らない友人たちから、かなりな数のメールが届いていた。しかし、こちらには、あまり役に立つものがないのが常だ。




メールボックスは、毎日のぞいているが、こちらの調査力は、まだまだなのだ。




中には、マユミの友人だという、メイという女の子からのメールが届いていたりするのだが、マユミの死に感化された空想物語を教えてくれるに過ぎないようなものだった。






・・・・つづく





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