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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
66/116

66 実はきわめて異常な

「それですね。いったい何が苦しかったのか…。僕は、実はずっと、わかりたくなかったのですがね。




・・・・こういう学校ですから、体面ばかり重んじる。あの事件に関して、隠してるといってもいいようなこともあった。陰湿なものがあるんです」




芳田はうつむいた。「ここは、学校というより、進学のための、生存競争の場ですし、宗教を標榜してますが、宗教とか愛とかからは、遠い、反対の側にある場所です」




私は芳田の顔を見つめなおした。芳田の顔に、やや真剣な雰囲気が流れた。しかし、すぐ芳田の表情はもとに戻った。




「…なんてね。まあ、どこの学校もそうでしょうがね。でも、永野君には耐えられなかったでしょう。スポイルされてた。




先生の間でも、生徒からも。彼は現代国語の教師で、僕は生物ですけど、どっちも、ここの生徒が受けようとする大学には、あまり使えなかったし、永野君の授業は、受験向きではなかった。生徒には不人気だった。しかも、もっと陰湿なこともあった」




私はきいた。「いじめですか」




芳田は少し間をおいたが、答えた。




「そう。どこかで調べられたんですね」芳田は言葉を続けた。「陰湿ないじめがあった。これは学校の表には出ていない。




学校も隠してるし、生徒たちのいじめも巧妙で、表からは絶対わからない。生徒たちは頭がいい。優秀です。




生徒たちの人間性は、永野君からみたら、きわめて異常なものだったのでしょう。




多感な少年期に、もっとやっておくべきことがあるのに、それがなくて、こんな異常な陰湿ないじめを行う子どもたちができた。




彼らは一流大学へ進む。異常な連中が、そのまま社会にでていく」




「それを、きちんと教育しようとして、なしえなかったことに、絶望したと…」




「簡単に言葉でいえば、そういうことです。しかしこれには、色々の要素がある。永野君は一途な性格でしたが脆い面も多分にあった。




よその土地の出身で、このヨコハマの生徒たちとは、基本的にそりの合わない面もあった。




生徒やまわりの先生が、いわれのないコンプレックスを彼に植え付けたようなところもあった。




実は、僕と永野君とは同郷の仲なんです。それで、よく分かる面もある」




「ひょっとして、一番陰湿ないじめに会っていたのは永野先生じゃないかということですか」




「そうとはいいませんが。しかし、まあ、それに近いかも。これは、同情でいってるわけじゃない。永野君は、結局、殺されたようなもんじゃないかと思う。




僕もこの学校は、つくづくいやになってきている。永野君の影響かもしれない。自分でもおかしい。笑ってしまう」




「内田君は、どんな生徒だったのでしょう」




「ああ。永野君にばかり話が集中しましたね。内田も、なぜ女の子を殺したなんていったのか…。




でも、わかるような気がします、調べられたでしょう、陰湿ないじめの標的だった子ですよ、内田は。精神が何か悪影響を受けていたんだ」




「内田君は永野先生のクラスの生徒だったのですか」




・・・・・つづく







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