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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
65/116

65 教師の自殺

光聖学園高校は、JR根岸線の山手駅から車で10分ほどのところにあった。




根岸の港湾地区を見下ろす小高い丘の上にそびえる、中高一貫教育の学校で、ヨコハマでも有数の進学校だった。




建物はこぎれいな5階だてで、外壁は落着いた砂色だった。野球場とサッカーグラウンドとにはナイター設備があった。




受付で校舎内の案内板を見ると、温水プールやPC教室も完備されているらしかった。受付で、来訪の意を告げた。




しばらくそこで待たされ、やがて背の高い、グレーのスリーピースを着た若い男が現われた。縁が太く黒い眼鏡をかけて、少しきつい目つきをして、髪はきれいに頭になでつけられていた。




若い男はいった。「芳田です。はじめまして」




「玖村です。お忙しいところを、恐縮です」




私は永野教師の自殺を報じた記事をネットや図書館で調べた。自殺に関して談話を述べていたのは、芳田という同僚だった。




学園に電話したところ、まったく意外なことだと私は思ったが、私は、この芳田とのアポをとりつけることに成功した。授業の終了後に、学校で面会するということだった。




「こちらへどうぞ」




芳田は私を案内して、廊下を歩き、5メートルほど行ってドアを開け、私を招きいれた。




その部屋は、校舎の中の教会だった。正面つきあたりに、簡素だが、必要なものは一応揃えた感じの祭壇があり、ステンドグラスがあった。




「まあ、ここでいいでしょ。今、クラブ活動やなんかで、部屋らしい部屋はふさがってるし。職員室の応接は、ちょっと人目についてよくないです」




芳田はそういって、チャペルの固定された椅子に腰掛けた。




「ええ、結構です」私はいい、芳田の隣の椅子にかけた。




「それで、永野さんの話ですよね」




「ええ」




「永野さんから電話があったなんてねえ…」芳田は話しはじめた「自殺だったんですよ。毒をあおった。ご存じですよね」




「ええ、青酸カリですね」




「真面目な方だった。でも、ゆきづまってた。気の毒で気の毒で仕方ない。




電話相談をやってたことは知ってましたが、そんな風に、悩める子どもを救ってたなんて、知りませんでしたよ。




つくづく、いい人だったのに、彼の名を騙る奴がいた。それも少女を殺したのは自分だなんていった…。こういうことでしたね」




「そうです」




「何てことだろう」芳田はしばらく口を閉じた。




「…それで、永野さんの周辺を、今、洗っているところです」




「…そうですね。彼は自殺でした。遺書もあった。短い文章でしたが、連綿と、彼の心情がつづられていた。しかし、文面はひどく抽象的で、死ななければならない、という結論だけが性急に書かれてたんです」




「具体的に、何に苦悩されてたんでしょう」






・・・・・・つづく





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